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聖教国サケルラクリマⅡ

 やっと坂道の頂上に辿り着いた勇輝たちは、門番の騎士にアメリアから渡されていた手紙を預ける。


 数分ほど門の前で待っていると、確認が取れたようで中に入るよう促された。入ってすぐに見上げるほどの高い塔に目を奪われてしまう。



「こっちに来た時から高いとは思っていたけど……近くで見ると、より高く感じるな」


「えっと、今からこの塔を登るんだよね?」



 ファンメル王国の城よりも高いのではないかと思う程の迫力に、勇輝と桜は顔を引き攣らせる。流石に坂道の後に、この塔を登るのは疲労の蓄積がすごいことになるだろう。それこそ身体強化で楽をしようと思うくらいには、ここから先の苦労が余裕で推測できた。



「はい。お二人には枢機卿たちがいる星見の祭壇に来ていただきます」


「えっ、今の数分で行って来たんですか?」


「まさか。魔法で連絡を取っただけです。流石に慣れているとはいえ、我々も何度も上り下りするのは遠慮願いたいものです」



 門番が苦笑しながら塔の入り口に立つと、すぐに黒い鎧の女騎士がやって来た。聖女護衛部隊の黒騎士だ。以前、一緒に行動したことがある二人ではなかったが、黒騎士の方は勇輝たちのことを知っているのか、笑顔で出迎えてくれる。



「この度はファンメル王国から、わざわざお越しいただきありがとうございます。枢機卿と聖女アルトがいる祭壇までご案内しますね」



 勇輝と桜は軽く挨拶を交わして、黒騎士の後をついていく。塔という名の神殿の中では、神官や騎士が男女問わず行き交っていた。心なしか、ファンメル王国の城の中で見かける文官や騎士たちよりも幾分か忙しそうに見える。



「因みに、勇者候補のマックスさんたちはどこに?」


「マックス様たちは、周辺の様子を見たいと討伐依頼を受けて草原の方へ向かったと聞いています。北の森は聖剣が安置されていることもあって魔物が出現しないので、あまり心配はいらないのですがね」



 いくつも階段を上りながら、息切れすることなく黒騎士は答える。


 マックスたちがこの国を訪れたのは、年が明けてすぐのことだったらしい。万が一、魔王が復活したのに聖剣が抜けないという事態が発生することは避けたいというアルトの考えは、マックスも無視できなかったのだとか。


 では何故、まだ聖剣が抜かれていないかというと、マックスが勇者を拒否していることについて枢機卿たちで話し合う必要があるからだ。勇者を拒否する者が聖剣を抜き放ったらどうなるか。諦めて勇者として魔王と戦うかもしれないし、そのままどこかに行方をくらますかもしれない。


 マックスが善良な人間だと知っている勇輝たちではあるが、枢機卿たちはそれを知らない。仮に知っていたとしても、世界を守るという重責の前にして、軽々しく聖剣に頷くことができる状態にはないことだけは確かだ。



「……抜けなかった場合は、新しく勇者を探し直すのかな?」


「今までに勇者候補が二人以上、同時に現れたという記録は残っていません。正確にはイレギュラーな事態が起こって、勇者代理が立てられたことが一度だけあるようですが、その際にも正式な勇者は一名だったはずです」


「そこまで正確な記録が残っているのに、魔王のことは全然わからないんですね」



 桜の疑問に黒騎士は立ち止まると、辺りを見回した。ちょうど、人気のない通路を進んでいたので、勇輝たち以外には誰もいない。



「それは私たちも思ったことがあります。あまり大きな声では言えませんが、魔王の復活に手助けをするような狂信者に情報が渡らぬよう秘匿されているのでは、と言われています」



 桜の疑問に黒騎士は声を潜めて告げる。


 曰く、先程の話題に出て来た勇者代理を枢機卿が暗殺しようと画策した事件があったという。


 御伽噺では到底、語ることのできない事件に勇輝は思わず体が強張るのを感じた。

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