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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
魔王ならざる巨人と聖剣

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不穏な呼び出しは突然にⅥ

「ご歓談中失礼します。そちらのお二人を案内するよう命を受けておりますので――」



 戻って来た騎士が、申し訳なさそうに勇輝たちと伯爵の間に立つ。すると、伯爵は名残惜しそうに杖を撫でて、桜へと杖を差し出した。



「ふむ、少しばかり杖の仕様について話をしたかったのだが、陛下の邪魔をするわけにはいかんな。暇を見つけて、残りの木材で作った杖をロジャーから見せてもらうことにしよう。では、二人とも大変だとは思うが、頑張ってくれ」


「ありがとうございます。ぜひ、またお会いした時に杖の話をさせてください。あ、もちろん、お時間があればですが……」



 宮廷魔術師という地位にある人物に暇な時間があるとは思えない。


 桜は言ってしまってから気付いたようで、口に手を当てて言葉を付け加えた。しかし、伯爵は気を悪くした様子はなく、むしろ孫のお願いを聞いたかのように朗らかな笑顔で頷いた。



「構わんよ。事務仕事ばかりするようになった老体に、魔法の話をふってくれる若者がいるだけでありがたいことだ。警戒心が強すぎるのも考えものだな」



 統合魔法という彼の家系にしか伝わっていない相伝魔法。その魔法によって王国の硬貨の価値は確実に保たれている他、日々、彼の力で新種の素材の生成や研究が進んでいる。


 それが誰かに漏れて悪用されようものならば、大事件だ。それ故に伯爵に近付く者は、それ相応の警戒をされていたのだろう。


 そのことを考えると、今から国王の下に行って、転移魔法についての情報を得ようとすることも同様に警戒されることが予想できる。


 逆に勇輝たちが短期間で伯爵に信用されたのは、今までの功績があるからというのもある。どこまでその功績を積み上げれば、転移魔法に手が届くのか。勇輝は内心、歯がゆい気持ちでいっぱいだった。



「では、私も仕事に戻るとしよう。若者が頑張っているのだから、負けてはおれんな」



 そう告げた伯爵は去りながら手を軽く振って、先に城内へと入っていった。それを見送った後、騎士は勇輝たちを先導し始める。


 騎士が案内した場所は謁見の間ではなく、聖教国サケルラクリマの聖女アルトの護衛依頼の作戦会議で使った部屋だった。中に入ると、そこには第二皇女のアメリアと近衛騎士がいた。



「お久しぶりですね。日ノ本国では、いろいろとお世話になりました」


「い、いえ、こちらこそ――」



 まさか、手に入れたい情報の持ち主である本人がいるとは思ってもみなかった。


 挨拶を交わしながら、勧められるがままに席に着く。横を見れば桜も想定外だったようで、苦笑いを浮かべている。


 ――ここで世間話をしつつ探りを入れるか。


 そんな考えが過ぎるが、冷静な思考がすぐに否定する。皇女として、転移魔法の使い手として、その内容を他人に話すことの危険性は十二分に理解しているはず。そんな相手に世間話のついでで情報が手に入るとは思えない。


 本当に手に入れたいのならば、堂々と信用を勝ち取ってから。先程まで一緒に話していた伯爵のことを思い出しながら、勇輝は話を切り出した。



「その、今回は何も詳しい話を伺っていないのですが、どんな話かご存知ですか?」


「えぇ、後ほどお父様――国王陛下から詳細を話すことになりますが、概要くらいは先にお伝えしておいた方が良いですね。今回の件は聖女アルトに関することです」



 聖女という言葉に、勇輝と桜は身を強張らせる。聖女という言葉が出るということは、それに関連した事件である可能性が高い。その中でも最も危険なものは、当然、魔王であろう。しかし、魔王が復活したとするならば、もう少し大騒ぎになっていてもおかしくはない。



「聖教国に勇者候補であるマックスさんが赴いて、聖剣を抜くことになったのです。その際に、あなたの魔眼で聖剣やその他諸々の品を見て確認していただきたいというのが、今回の依頼の目的になります」



 てっきり護衛依頼や討伐依頼だと思っていた勇輝は、アメリアから告げられた内容に言葉を失った。

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