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明日への不安Ⅱ

 幸い、寮に着くまでに誰かに襲われるということはなく、無事に部屋の中にまで避難できた。


 当然という言葉を使うべきかはわからないが、全員が集まったのは桜の部屋だった。



「ふぅ、何とかなったな。勇輝、体調は大丈夫か?」


「あぁ、何とかな。あと少し解除が遅れていたら、前みたく動けなくなってたと思う」



 心配するフェイにそう答えてはいるが、頭痛や眩暈が少しばかり襲って来ていた。こめかみを中指の関節でマッサージしながら顔をしかめる。


 魔眼も慣れてきているとはいえ、かなり酷使した。あまり使わない方が良いというアドバイスを受けてはいたが、使わなければ誰かが死んでいただろう。それを考えれば、多少の痛みくらいは我慢できるというものだ。



「勇輝さん。ベッドで横になる?」


「いや、椅子に座っていれば落ち着くと思う。念の為、ポーションは飲んでおくけどさ……」



 椅子に座ると同時に、体から力が抜ける。まるで長距離走を走り終えた疲労度に、思わず足を投げ出してしまう。


 震える手でポーチからポーションを取り出して飲むのだが、いつもは苦く感じるそれも全然気にならずに飲み干してしまう。



「勇輝、無茶しすぎ。忘れがちだけど、まだ魔法が使えるようになって、半年も経っていない。急成長はしてるけど、このまま続けて行ったら、必ずどこかで反動が来る」


「……鍛えたら鍛えた分だけ、強くはならないか?」


「根も張らずに早く伸びる木は折れやすい。何事も、基礎が大切。もちろん、休むことも」



 ここ二週間は依頼もせずに過ごす時間もあった。そのことを考えれば、今まででかなり休んでいる部類に入る。


 そこまで考えて、元の世界にいた時は、一週間で一日以上は必ず休む時間があったことに気付く。ほぼ毎日、何かしらの依頼や事件で奔走していたことを考えると、気が休まる時が無かったと捉えることもできなくはない。



(もしかして、その忙しさに慣れ過ぎたか?)



 アイリスに己の異常な生活に気付かされ、呆然とすることしかできない。なんだかんだで年末もシルベスター伯爵領にいたことを考えると、相当なワーカーホリックの部類に入るだろう。



「それはそれとして、桜の魔法。アレ、どうやったの?」


「え? アレって岩の槍のこと?」


「うん。ほぼ同時に二発。しかも、威力はどちらもキマイラを貫通する強度。興味ある」



 魔法が好きなアイリスらしい質問だが、桜は困った表情で暖炉に火をつける。



「その、咄嗟にキマイラを止めるには、こうするしかないって思ったら、その通りに発動しちゃったから、どうやったと言われても困るかな……」



 まっすぐに走って飛び掛かったキマイラの左右斜めから前から岩の槍は出現し、前脚の付け根近くの胴と胴の中央近くに突き刺さっていた。


 前者は貫通して背中中央から姿を現し、後者は後ろ脚の近くの尻から突き出ていた。


 桜が言うには、真正面からだと避けられる気がしたので、左右両方から出ることで、キマイラが躊躇してくれればいいと思ったのだとか。



「それ、どちらかというと、無詠唱魔法に近いんじゃないか? 詠唱が切っ掛けで岩の槍自体は発動しようとしていたんだろうけど、それを咄嗟に上書きして発動してるみたいだし」


「マリー。その場合だと、普通の無詠唱よりも、高度なことしてる」


「え、そうなのか?」


「詠唱は自分への魔力の扱い方を、具体的に認識させる暗示。それと異なる出力の仕方をするのは、かなり大変なはず」



 アイリスは桜へと視線を戻すと、その手に握られた大きなままの杖を凝視する。



「桜が、複数の魔法を操るのが得意、というだけじゃ説明がつかない。多分、その杖にも秘密がありそう」


「杖に秘密が――って言われても、新種の樹木で作った杖だから、誰もわからないんじゃないかな?」



 桜は杖の柄を撫でながら、首を傾げた。

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