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キマイラを操る者Ⅴ

 殺到するガーゴイルだが、ギャビンへと殺到するもののその手は尽くが空を切る。


 ガーゴイルも流石におかしいと気付いたようで、通り過ぎた後で辺りを見回し始めた。



「幻覚魔法を自分に施して逃げてる! 鍛錬場の扉から出て行った!」



 唯一、魔眼をもつ勇輝だけがその姿を認識できている。だが、それではギャビンを捕まえるには至らない。



「『地に降り立つ雫を以て、その意を示せ。地上を満たす、濁流の洪水よ』」



 ヴァネッサが呪文を唱えると、鍛錬場の向こう側に信じられないほどの水が生まれ、川のように流れていく。そして、すぐにガーゴイルへと呼びかけた。



「正門に向かって走っています。今なら、水を跳ね飛ばす足跡を追えるはずです!」


「ワカッタ、スグニ追ウ」



 ガーゴイルたちが翼を広げて一気に空へと舞い上がる。


 ギャビン自身の脅威は去ったが、ここにはまだキマイラが残っている。そのキマイラは岩の槍を食べ終えて、今度はまた桜へと視線を向けていた。



「もしかして、桜の杖が原因か?」


「わ、私の杖?」


「あいつ、今まで合成された魔物を食ってたんだよな? それで、桜が使ってる杖も方向性は違うけど、複数の樹木を合成してできている。あいつ、もしかして、桜を狙ってるんじゃなくて、杖を食べようとしてるんじゃないか?」



 警戒して唸るキマイラに人差し指を突きつけながらガンドを放つ準備をする。抉れた腹、破れた翼、消し飛んだ尾が再生を始めている。


 勇輝は今の状態で動き続けるのは数分が限界。反動が来る前にキマイラを殺さなければならない。その為には、少しばかり無理をする必要がある。



「やれる、か?」



 先程までは見えなかったが、キマイラの放つ光の強弱と言えばいいのか、色の濃淡と言えばいいのかはわからないが、明らかに違う部分が見え始めていた。


 四肢の顔に一つ、首の根元に一つ。胴に一つ、尾に一つ。計四つの光の球体が認識できる。今までの経験上、そういった部分は弱点であったり、急所であったりすることが多かった。



「それぞれが再生する前にすべて消し飛ばす。少しでも足止めがあれば――」



 勇輝は肩越しに振り返ると桜たちに助けを求めた。



「俺があいつの弱点を潰す。その為には、さっきみたいに岩の槍であれを釘付けにする必要がある」


「わかった。岩の槍をもう一度、作ればいいよね?」


「他のみんなはあれの動きを阻害してほしい。マリーは俺が動けなくなった時の為に、一撃のでかいやつ――炎の柱が出て来る魔法とかを準備していてくれるか?」



 魔力を全開にした状態での素早さには自信があるが、何が起こるかわからない。わずかでも勝率を上げる為には全員が協力する必要がある。



「任せて。勇輝がやらなくても、私だけで窒息死させるくらいの気持ちで、やる」


「か、火球を浮かべて、当たったら爆発する罠を仕掛けるのならイケるかも……」


「はっ、そうこなくっちゃな。火力はあたしのアイデンティティだ。勇輝に負けてられないな」



 勇輝は彼女たちの返事を聞いて、意識を前に向ける。どんな魔法が飛んで来るかは考えない。


 彼女たちの能力なら誤射することはないだろうし、今の自分ならば視界にさえ入っていれば避けきる自信があった。


 仮に自分が失敗しても、後ろにはフェイがいる。きっとカバーしてくれると信じて、息を吸い込んだ。



「さて、どうやって倒してやろうか」



 勇輝がゆっくりとガンドの構えのまま前へ進み出る。対して、その姿を認めたキマイラは歩みを止めた。


 姿勢を低くし、いつでも前に飛び掛かれる形で、牙を剥き出しにする。



「そうだ。お前の相手は俺だ。俺の後ろに手を出したいなら――」



 ガンドを一発、キマイラの顔面に放ちながら、先手必勝と言わんばかりに勇輝は加速した。


 ガンドが当たれば怯んだ隙に追撃。躱したならば、その瞬間に追撃。ただひたすら攻撃あるのみと防御のことは一切考えずに飛び込んでいく。



「――俺を倒してから行け!」

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