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空からの刺客Ⅵ

 幾重にも放たれた魔法をものともせず、キマイラは上半身を捩じり、結界を抜けようともがいていた。


 口からは炎を吐き、それに飲み込まれた火球が次々に誘爆していく。幸いにも炎は地面にまでは届いていないようで、死傷者は出ていないようだったが、それも時間の問題だろう。


 それを表すかのように勇輝の魔眼にはキマイラの結界に少しずつ罅が入っているのが見えた。結界側からキマイラにダメージが入っていないわけではないのだが、キマイラの周りには薄く黄色の光が存在していて、攻撃の効果が半減しているように思われる。


 そして、遂に結界の一部が砕け、キマイラが翼を羽ばたかせて飛翔を始めた。



「空を飛ぶ敵相手だと狙いがつけにくいけど、ガンドで撃ち落とすしかないか。もう結界も壊れてるみたいだし、今更、穴の一つや二つはしょうがないよな」



 キマイラがこちらに気付いていない間に奇襲で仕留める。


 右手の人差し指を向けて照準を合わせたところで、勇輝はゾッとした。理由は単純。キマイラがこちらに向かって真っすぐに飛んできていたからだ。



「おいおい、あたしらの方に向かって来るぞ!?」


「迎撃、する? それとも、避難?」


「あたしが逃げるなんて選択肢を選ぶとでも?」



 背後でマリーたちが詠唱をする中、勇輝はハッと我に返りガンドを放った。すると、キマイラはそれがわかっていたかのように体をわずかに倒してガンドを避ける。


 二発、三発と放つ中で、勇輝は魔眼に映った視界に妙なものがあることに気が付いた。



(視界が少し歪んで見えるけど、キマイラを中心に細かく揺れてる。まさかとは思うけど、あの顔で蝙蝠みたいに超音波とか使ってるんじゃないよな?)



 ガンドはほぼ不可視の魔力の弾丸。それを目視で避けるのは、この距離では不可能と言っていい。だが、視覚以外の方法で周囲を把握する力を持っていれば、ガンドに気付くこともできるだろう。


 蝙蝠の羽からの推測だったが、それはあながち間違ってはいないようで、追撃のガンドも綺麗に躱されてしまう。



「だったら、音速を超えるような一撃なら防げないだろ……」



 四度目の正直とばかりに照準を定め、ガンドに注ぐ魔力を増大させる。イメージするのは拳銃ではなく、ライフル。しかも長距離を狙撃するスナイパーライフルだ。


 果たして、立ったまま撃てるのかという疑問は頭の隅に投げやり、速度を上げて来たキマイラの顔面ド真ん中を狙う。


 息を止め、体を固め、魔力の流れだけを加速させる。次の瞬間、音速を越えたガンドがキマイラに向かって撃ち出された。


 音の速さは一秒間に約三百四十メートル。それを超える速度ならば、超音波と言えども反応はできない。



「ちっ、掠めただけか」



 しかし、速度を出すことに集中しすぎたせいか。ガンドが狙いよりも上に逸れた。額の上掠め、背中の羽の一部を消し飛ばすのに留まる。それで止まるキマイラではなく、さらに速度を上げて突っ込んで来た。


 鍛錬場の見学席を越え、ついにキマイラの攻撃射程圏内に入ってしまう。その場で突如、速度を緩めて滞空したキマイラ。その口の端からは火の粉が舞っていた。


 キマイラの口から吐き出される炎。



「火属性魔法は、あたしの得意分野だ。力比べと行こうじゃないか!」



 それをマリーの放った火球が引き裂き、押し返していく。遠くで見えた火球はキマイラの炎で誘爆していたが、マリーの火球は形状を保ったままだった。



「お口は、閉じてて、ね」



 アイリスが杖を突き出すと、彼女にしては珍しく石礫魔法が放たれた。地面と平行に放たれた石礫は、アイリスが下から上に杖を振った動作にシンクロし、急激に上昇を開始、アッパーのようにキマイラの下顎に直撃する。



「と、とりあえず、当たってください!」



 呻いて顔面にマリーの魔法が炸裂したところを、フランのマシンガンのように放たれる火球が襲い掛かった。手足、翼、胴など一切の区別なく、爆炎に包まれていく。

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