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空からの刺客Ⅰ

 フェイの経験から来るアドバイスを聞きながら、十数分ほど風属性魔法と格闘していると、やっとのことで十秒くらいは維持できるようになった。



「うん。まぁ、そこまでできれば、後はこういう荒業もできるかな。指を立ててみて」


「こうか?」


「そう、それでさっきのように魔法を使って」



 フェイに言われるがまま呪文を唱え、渦巻く風の球を作り出す。すると、フェイが両手を掴みかかろうとするかのように構えた。



「おい、まさか触るつもりじゃないだろうな? 流石に手が血だらけに――」


「まさか、君じゃああるまいし……。そんなことするつもりはないよ。こうするのさ」



 フェイの両手から緑の光が注ぎ込まれる。魔力制御は他人の魔力が残っていると操りにくいはずなのだが、勇輝の制御が甘いせいか、風の渦巻く速さがフェイによって加速されていく。


 中途半端に支配しているせいか、フィードバックされる感覚に戸惑いを隠せない。遊園地のコーヒーカップを自分で回していたつもりが、勝手に機械操作に変更された気分だ。



「君の場合、風を集めようという意識だけで、収束させようとしてないから勝手に風が逃げちゃっている感じかな? ガンドのように集められないのかい?」


「ガンドと同じ気分でやって、とんでもない被害を出したら困るだろ」


「やる時はやる。止める時には止める。そのメリハリがあれば問題ない。剣術だって中途半端にやろうとすると悪い癖がつくのと一緒さ。失敗しても良いから思い切りやらないと。何かあったら、僕も止めるし、あそこにいは風属性魔法が得意なヴァネッサ先生だっている。それにガンドの制御ができているんだから、基礎力はあるはずだろ?」



 言われてみればその通りではある。ただ、それを認めると自分がビビっていただけだということを認めることになるので、それはそれで釈然としない。


 勇輝は勝手にフェイに負けた気分になりながらも、まずはガンドを準備し、風属性魔法を重ね掛けする。


 青の光に緑が混じる。明るい翡翠のような色へと変化したそれを人差し指の上で維持すると、不思議なほどに安定していた。



「何だ。できてるじゃないか」


「じゃあ、この感じでやれば水や土もいけそうか――いや、土はまた何か違うイメージっぽいな。こんな渦巻いてそうじゃないし」



 会話する余裕も生まれ、ほっと一息つく。問題はこれを放ったらどんな攻撃になるのかという、興味が湧いてしまったことくらいだろう。


 ヴァネッサがいるとしても、彼女に申し出たのは風の魔力制御の練習で攻撃魔法を撃つことではない。すぐに自制して、一度、魔力の供給を止めて魔法を霧散させる。


 後はこれと似たようなことを足の裏にするだけだ。



「そういえば、足の裏に魔力を集めること自体はやってたことあるよな……」



 桜の実家がある村の子供たちが自然と習得していた身体強化の応用を思い出す。滑りやすかったり安定していなかったりする地面にまで薄く魔力を通すことで、安定して走ることができる技術。空中に用意する足場というのも、もしかすると、同じ力の使い方なのかもしれない。



「えっと、いつもやってる感じだと――」



 思いきり前に踏み込むイメージで体を倒しながら、足に魔力を集中させる。日ノ本国で学んだようにそこから魔力を軽く押し出すようにして――



「あ、それは――!」



 フェイが声を掛けた瞬間、勇輝の視界がブレた。気付けば立っていた位置より五メートルほど斜め上に跳び上がっている。


 勢いがつき過ぎて体が回転し、地面と平行になっていることに気付いた勇輝は、頬を引き攣らせながらも顎を引いて空中で回転。そのまま、着地に成功する。



「し、死ぬかと思った」



 胸を押さえて、早鐘を打つ心臓が落ち着くのを待つ。



「君という奴は、呆れるべきか、褒めるべきかわからないな。まさか、立つよりも先にジャンプする方を覚えるなんて」


「ははは、多分、これなら何度でもやれるけど、本筋からは外れてるよな?」


「そうだね。まずは水の上とかわかりやすい物の上に浮く練習から進めた方がよさそうだ」



 そう言いながらフェイは勇輝の背中を叩く。口では誤魔化しながらも、勇輝の空中歩行ならぬ空中跳躍を賞賛する様に。

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