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飛行訓練Ⅶ

 フェイを真似して魔力を足の裏に集中させてみるが、見る見るうちに真夏のアイスのように霧散してしまう。


 やはり、一朝一夕で見につくものではないらしい。それにフェイは風の魔法で力場を作ると言っていた。未だに詠唱込みで風属性の初級汎用魔法もまともに扱えない勇輝には、少し早い技術だったのかもしれない。



「確かに、君の場合は初級魔法を使って、その場で維持できるようになってからかもしれないね。そもそも箒に乗る授業は、本来、二学年になってからなんだから」



 一学年で基礎基本を学んで、四属性の初級汎用魔法を学ぶと共に、魔力の制御方法を習得する。それをせずに、いきなり挑戦すること自体がそもそも無謀だろう。


 ぐうの音も出ない正論に勇輝は肩を落として、箒を隅の方に置きに行く。桜たちが練習をする姿を眺めながら、風の魔力制御――あるいは初級汎用魔法の成功に専念することにした。



「あぁ、まだ習得していなかったのですか。それは確認不足でした。てっきり、彼女たちと同じレベルまで来ているのかと……」



 当然、教えてくれていたヴァネッサに練習の内容を下げてみることを伝えると、すぐに理解を示してくれた。予想通り、風属性の魔法に慣れていない者は飛行訓練の前に何度も復習として練習するらしい。



「『逆巻き、切り裂け。汝、何者にも映らぬ一振りの刃なり』」



 かつて火球で大爆発を起こした前科がある。大人しくごく少量の魔力で、魔眼に映る色がフェイと同じになったままになるよう維持をすることにした。


 火球やガンドでは魔力を注ぎ込み続ける限りその場に存在し続けるのに、風属性になった瞬間、蝋燭の火を掻き消すようにして消えてしまう。風の魔法を使おうとしているのに、左手で右手の人差し指を隠す形で、もう一度、詠唱する。


「急に指を隠してどうしたんだい?」


「周りの余分な魔力――マナだっけ? それが変に干渉しないように、何となくやってるんだよ」


「火を灯す魔法で、周囲の風に掻き消されないようにやるのは見たことあるけど、風属性魔法では……ねぇ」



 無駄だ、とは言わないが、明らかに何かを言いにくそうな表情をしている。


 勇輝としては、試行錯誤しながらやるのも学習の内だと思っているので、まずは何でもやってみる精神だ。今まで、剣術に集中してばかりだったので、ある意味で気分転換にもなる。霧散するまでの時間が一秒伸びたかどうかも怪しい中、二度、三度と挑戦回数を増やしていった。


 魔力が霧散するたびに、勇輝は桜たちへと視線を移し、その練習風景を観察する。


 休憩を早々に切り上げた彼女たちは、楔を地面に打った縄で箒や杖を固定し、その上に跨って浮く訓練に移行している。鐙代わりの縄が難しいようで、箒が浮く瞬間にぐるりと回転しそうになって、ヴァネッサに助け起こされていた。



(あれ、一歩間違えると、頭から落ちて死ぬんじゃないか?)



 第二段階の訓練で、既に命の危険がある内容になっていたのを見て、自分だったら怖がらずに参加できていないだろうと冷や汗をかく。脳内に浮かぶのは箒バージョンのロデオだ。暴れ牛ならぬ、暴れ箒に跨って振り回された挙句、地面に叩きつけられる。そのまま暴れていた箒の柄が腹に刺さるところまで具体的に想像できてしまう。



「ほら、集中切らしてるぞ。魔眼で見ると何かの参考になるかもしれないし、僕も付き合ってやるから、頑張れ」


「うわ、いつの間に?」



 気付けばフェイの指の上にはピンポン玉くらいの緑の球が渦巻いていた。渦巻き方も縦横斜めと常に向きが変わっていて、乱気流というものが見えるのならば、このような感じなのだろうと思ってしまった。



「因みにコツは?」


「そうだねぇ。マリーが火球の操作が得意なように、僕はこれが得意だから、アドバイスをしたくてもできないというか……」



 フェイは空を見上げて、唸ってしまった。

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