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飛行訓練Ⅵ

 マリーたちが杖の展開された翼を人差し指で突く中、桜は杖の柄を撫で続けていた。



「どうかしたのか?」


「今から、これに跨って飛べると思うと、少し緊張しちゃって」


「まぁ、あんな話を聞かされてたら緊張もするよな……」



 幸い、桜は自分の杖でも基礎訓練と同じコントロールは出来るようで、翼を触られながらも動かすことができていた。ヴァネッサは近くに人がいる状態で動かさないようにと注意をしながらも、合格を出してくれていたので、問題なくマリーたちと同じ段階に進めそうだ。


 勇輝の場合は、少し危険なので基礎訓練が必要そうではある。



「あ、ここにいたのか」


「おっ、フェイも来たか」



 聞き慣れた声に振り返ると、フェイが鍛錬場内に入ってくるところだった。王都の騎士団の寮で寝泊まりしているので、マリーが知らせても合流に時間がかかってしまったようだ。


 フェイは近付いて来ると勇輝の様子を見るなり、肩を竦めた。



「その感じだと、箒が暴れて体中にぶつけていたって感じかい?」


「大当たりだよ。こっちは結構真剣にやってるんだけどな」


「君の場合、あえて次の訓練を先に習得した方が役に立ちそうだけどね」


「次の訓練?」



 勇輝はフェイの視線を追うと、ヴァネッサの持っている道具が目に入った。


 長い紐が握られており、その両端には輪っかが一つずつついている。特に何の変哲もない原始的な道具だったので、どのように使うのか想像がつかなかった。



「あれはね。箒で飛ぶ時に足場を作り出すイメージを補助する道具なんだ。アレができるようにならないと、上昇時に柄が喰いこんで激痛が走る」



 フェイが勇輝の足を両手で下に引っ張る動作をする。それでどうなるかが想像できた勇輝は、思わず内股になってしまう。


 どうやらあの道具は、乗馬における足を置く(あぶみ)と呼ばれる場所と同じ役目があるようだ。慣れてきたらそれを魔法で展開できるようにしていくらしい。



「……えっ? つまり、それって無詠唱で風の力場を作る魔法が使えなきゃいけないってこと?」


「そういうことになるね。多くの人が諦めてしまうのは箒のコントロールができないことと、同時に無詠唱で風の魔法が使えないからというのが多いらしいよ」



 箒のコントロールに集中すると柄が喰い込み、柄が喰い込んだり力場の生成に集中したりすると箒が暴走する。どちらも魔力の制御が必須なことを考えると、相当高度な技術を要求されていることが分かる。



「俺としては風で足場が形成できる方がすごいと思うんだけどな」



 空気を圧縮したとして人の重さを支えられるような物ができるとは思えない。恐らくそれが魔法たる理由なのだろうが、物理的に考えてしまう勇輝からすると首を傾げたくなってしまう。



「君のガンドだって、魔力という形はない物だけど反動があるだろう? それを常に一定の強さで出していれば浮くことはできる。まぁ、実際は空気を固定化している方がイメージ的には近いんだけど……まぁ、実際に見たりやったりした方がわかるかな」



 フェイが噛み砕いて説明してくれるが、どうにも勇輝にはイメージができない。そんな彼の前でフェイは階段があるかのように空中を上り始めた。


 唖然として見ていた勇輝だったが、すぐにフェイの足元に手を差し出してみる。そこに風が吹き出している様子はなく、本当に空中に何か塊があって踏んでいるようにしか見えなかった。


 魔眼で見ると、確かに足の下には緑色の光が輝いており、その上にフェイが乗っている。



「まぁ、これが君と戦う時に用意していた秘策の一つなんだけどね。ただ、空中に行ったところでガンドが襲って来るから、不利になるのはこっちなんだけど」


「フェイ、お前凄いんだな。その気になれば箒なしで飛べるんじゃないか?」


「うーん。出来なくはないだろうけど、かなり魔力を消費するかな。それをさせないための道具が杖や箒なんだから」


「そ、それもそうか」



 騎士団に所属しているフェイからすれば、継戦能力の方が重視される傾向にある。それを考えると、言っていることは間違っていない。それはそれとして、何も使わずに空を飛ぶというのは、ロマンがあると思う勇輝だった。

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