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飛行訓練Ⅳ

 ヴァネッサによる講義の後、両手で輪を作って、その中で箒を浮かばせる練習をすることになった。


 「全体を均一に上昇させる」、「柄の先を上げる」、「穂を上げる」の三つを順番に繰り返し、どのように魔力を流すのかを体に覚え込ませるのだとか。



「私の師匠は、これを左右入れ替えて何度もやることが大切だと言っていました。慣れてきたら片手の人差し指だけを触れてやってみるとより効果的です。万が一、箒から落ちそうになった時に、これが出来るだけで生存率が上がります」



 そう告げたヴァネッサは実際に人差し指で箒の柄に触れながら、前後左右上下に動かすばかりか、回転までしてみせる。まるでバトントワリングをしているような美しさだが、彼女が指先を動かす気配は一切ない。純粋に魔力の流し方のみで箒を操っていた。



「床を掃く時、便利そう」


「そうでもないですよ。ただ左右に埃を退けるだけなら良いですが、掃除の時のように一方に集めると一度上げる動作を入れなければいけません。その点、やはり複数の関節で連続動作できる人の体の方が細かい動作は優れていると言わざるを得ません。逆に言えば、それだけの動きができるようになれば、魔力制御は相当なレベルにあると言っていいでしょう」



 アイリスの呟きにヴァネッサは頷く。


 自分の体でない物を、思った通りに動かすというのは想像以上に難しい。唯一の利点は、全体を目で見ることで細かな動きの違和感や違いに気付けること。その為、ある意味では自分の体を思った通りに動かすということ自体の方が突き詰めていくと、そちらの方が難しいのだとか。



「――しかし、驚きましたね。こんなにも早く箒の位置を安定させることができるとは思いませんでした。普段から魔力制御の鍛錬をしているようですね。一人を除いて」



 感心したと言わんばかりにヴァネッサは拍手するが、アイリス以外は既に疲れ切った顔をしている。


 ヴァネッサから要求された三つの動作。それをひたすら繰り返しただけなのだが、少しでも魔力の流し方をミスすると、生きた魚のように箒が飛び跳ねる。


 そして、それを見て慌てて制御しようとして、さらに悪化する。最悪の場合、暴れた箒に殴られるという始末だ。特に勇輝の場合は、その状況に陥るのが多かった。



「あなたの場合は魔力の流し込みが強すぎますね。まぁ、例のガンド使いとは聞いていたので覚悟していましたが、逆に言うとそこまで酷く無くて安心した方が本音ですけども」


「えっと、褒められてます?」


「どちらかと言えば、ですね。瞬間的に城壁を破壊するレベルの魔力を収束させて放つ。箒の操作とは基本的に真逆ですから。役に立つのは急加速の時くらいでしょう。正直、箒が猛スピードですっぽ抜けてどこかに飛んで行くことも考えていました」



 なるほど、と勇輝は己の周囲に描かれた魔法陣を見て頷く。


 桜たちと違い、勇輝だけは箒が魔法陣の外に出ようとした瞬間に、その場に浮遊して留まるという命令に置き換わる結界が用意されていた。それは万が一の急上昇で、どこまでも昇り続けてしまわないように学園の周囲に用意された結界と同種の物だった。


 魔力回復をするよりも先に体力用のポーションを飲む羽目になるとは、勇輝も思っていなかった。箒をぶつけた箇所を擦りながらため息をついた。


 心なしか頬を撫でていく冷たい風が、自分を嘲笑っているようにも感じる。



「さて、では少し休憩を挟んだ後、実際に箒で浮かぶ練習をしてみましょう。ただし、ミス・言之葉。あなたは自分の杖で今の動きができるかを再チェックです。問題ないようだったら、次の練習からは、その杖でやっていきましょう」


「わ、わかりました」



 ヴァネッサの指示に笑顔で頷く桜。その前向きな姿勢に、指導中は厳しい表情だったヴァネッサも笑みを浮かべた。

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