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新しい杖Ⅵ

 嬉しそうにする桜に勇輝が近付くと、マリーたちへ杖を見せながら彼女は振り返った。



「これ、どうやったら元の大きさに戻るかな?」


「魔力は今、籠めてないんだよな? だったら、魔力を通すと大きくなるんじゃないか?」



 何となくの予想を告げると、桜はなるほど、と言わんばかりに目を見開いた。



「じゃあ、実際に魔力を籠めてみるね。いきなりだと何が起こるかわからないから、ちょっとずつだけど」



 待ちきれないと言った様子で桜は魔力を籠め始めるが、杖には変化が起こらない。


 恐る恐ると言った様子で杖を何度か上下に揺するが、変化も無ければ何か魔法が飛び出るということもない。



「もしかして、これが本来の姿、とか?」


「あぁ、スタッフ型の力をこの形で使えるように凝縮した、的な? そんな都合のいいこと――」



 マリーが小さいままの杖を覗き込んでいると、下の方から桜を呼ぶ声が響く。


 みな、城壁の下を覗き込むとそこにはロジャーが立っていた。



「おう、やはり外におったか。杖は小さくなったか?」


「はい、なりました!」



 桜が片手で杖を振って見せると、ロジャーは満足そうに腕を組んで笑う。


 ただ、問題は、この小さくなった杖をどう戻すかだ。術式を考えたロジャーであれば、当然、その方法は知っているはず。


 その答えは問うまでもなく、ロジャーの口から語られる。



「それはワンド型でもあり、スタッフ型でもあり、飛行魔法の箒代わりにもできる優れ物だ。我ながらに最高の出来のようで何よりだ。それを元に戻す時や、小さくする時には呪文が必要になる。魔力を流しながら唱えてみると良い。呪文は――」



 ロジャーの唱えた呪文を聞いて、桜は杖を落とさないように構える。



「『逆しまに、時を跨ぎし、我が杖よ。汝のあるべき姿に戻れ!』」



 次の瞬間、桜の足元にロジャーの工房で作った円と十二芒星が光となって浮かび上がる。


 銀色に輝く魔法陣の光を浴び、桜の杖が震えたかと思うと、一気にその大きさを取り戻した。



「も、戻った?」


「うむ、問題はなかったようだな。小さくする時の呪文は『逆しまに、時を戻りし、我が杖よ。汝のあるべき姿に還れ』だ。忘れんようにな」


「あ、ありがとうございます!」



 ロジャーはこれで用事は済んだとばかりに手を挙げて戻ろうとする。そんな彼の背中にマリーは問いかけた。



「ちょっと! 今、さらっと聞き流したけど、これ、箒代わりに空を飛べるのか!?」


「あぁ、杖一本あれば事足りる、などとかつてはいう者もおったが、実際は使い分ける者が多い。そこで、儂が本当に全部一本の杖で出来るようにしてみただけの話だ。誰もがやったことがないことに挑戦するのが、儂の信条だからな」



 スタッフ型と箒の両立は、既にアラバスター商会のような大手では取り扱っている場所も出てきている。しかし、ワンド型とスタッフ型をわざわざ両方使えるようにしようとは、普通は考えないだろう。


 尤も、そう言ったことを常日頃から考えて、実際に作ってみようとする探求心があるからこそ、魔術師ギルドのトップツーの座に就いたのだろう。勇輝は改めて、ロジャーの凄さを実感し、今後は彼のことを怪しい発明家とは考えないようにしようと固く誓った。



「何か変だと思ったら、儂の所に持ってきておくれ。それでは、お主ら。今年一年、そこの嬢ちゃんみたいに笑顔で過ごせるよう頑張んな!」



 ロジャーは桜の杖が無事に元に戻ったことが、よほど嬉しかったのか。大声で笑いながら魔術師ギルドの方へと歩いていく。


 その姿を見送った後、桜は勇輝に呟いた。



「今度、改めて、お礼を言いに行かないと」


「そうだな。何か好きな食べ物がないかとか、ルーカス先生なら魔術師ギルドの長だし、聞いてみようか」



 返しきれない恩を何とかして少しでも返さなければいけない。


 他のメンバーの知恵も借りながら寮へと戻る。勇輝たちがこの集まりを解散したのは、それから約一時間後のことだった。

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