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新しい杖Ⅳ

 外に出て城壁へと至る階段を上る。


 既に火球を空へと撃ち上げる為に出てきている生徒が何十人もおり、城壁の上は昼間のメインストリートのように賑やかだった。



「はー、噂には聞いていたけど、こんなに人が集まるんだな……」


「今年は少な目、いつもならこの数倍」


「何だよ、アイリス。前にも見たことあるのか。もしかして、毎年か?」


「うん、これで……五度目?」



 アイリスが首を傾げる。


 相変わらず彼女の生い立ちは不明だ。飛び級入学をした天才少女だが、その才能を見出した経緯もわからなければ、彼女の家族関係もわからない。


 マリーと関係があることから、どこかしらの貴族の出であるはずなのだが、どの領地かも勇輝たちは知らない。


 そして、最も近くにいるはずのマリーですら、わかることは魔法学園で出会った時以降のことだけだという。


 勇輝もそうだったが、桜もマリーも流石に何か過去にあったらマズいということで、アイリスに聞くことができていない。



「アイリスの過去は本当に謎だよな」


「それを言ったら、私――いえ、私の家の過去もかなり謎ですけどね。吸血鬼の真祖になるなんて、どういう家系なんですか……」


「どこかの吸血鬼の王族とか?」


「吸血鬼の国とか聞いたこと――あ、でも、吸血鬼化の兆候が出た人は、どこかに送られるって地下に封印される前にお父さんが言っていたような」



 基本、吸血鬼は人の血を吸うイメージがある。仮にその吸血鬼の国なり集落なりを知っていたとして、近付いて確かめようとする輩は、ただの自殺志願者にしか思えない。


 現在のファンメル王国では吸血鬼の人権はあるらしいが、人の認識はそう簡単には変化しない部分もあるだろう。



「みんな、いろいろと抱えてるものがあるんだな」


「生きていれば、誰だって悩みの一つや二つ出てくるものだよ。逆に、そういうものがないのは妖精くらいなものじゃないかな?」


「あー、確かに。幼児みたいにいつも遊んべて楽し―、って感じだったからな」



 雑談しながら歩いていると先頭を歩いていた桜とマリーが足を止めた。メインストリートから離れることになったが、六人が並んでも問題ない広さがある。



「そういえば、勇輝さんは魔法を撃つの?」


「いや、俺はやめておくよ。新年早々、ガーゴイルに抱えられて学園長の元に行くのは嫌だからな。桜は日を跨いだら撃っても良い、のか?」



 ロジャー曰く、日を跨ぐまでに魔力を籠め続けろ、という指示だった。その言葉通りに従うなら、跨いだ瞬間からは何をしても良いはずだ。


 勇輝はその時、はっとして、桜から一歩退く。



「もしかして、この新年のイベントの為に火球が数百、数千飛び出る魔法を掛けられているとか、じゃないよな」


「うーわ、確かにあの人ならやりそうだな。新年を迎えた瞬間に、一斉に魔法が発動とか? そう言えば『概念系と時空系』の合わせ技とか言ってたな。もしかして、時間差で発動する遅延魔法か? あたしたち全員学園長室送り!?」



 マリーも勇輝同様に後ずさると、桜が頬を膨らませる。


「ちょっと、ロジャーさんに失礼でしょ。それが本当だったら、私が外に出てなかった場合、部屋の中が大火事になるでしょ!」


「そ、そうだよな。流石に、そんな無茶――しないよな?」



 研究者気質なところがあるが、吸血鬼だったフランの為に偏見なく助ける手段を教えてくれたこともあった。その点においては信用できるが、その先で出会ったのが老いたドラゴンだったことを思い出すと、万が一、ということがあり得るので怖い。



(まぁ、その時はロジャーさんが悪かったってことで誤魔化すか……)



 苦笑いを浮かべながら勇輝は桜の隣に並ぶ。どうやら、桜は火球を撃ち上げるつもりはないようで、他のメンバーの火球を撃ち上げる様子を見る方に回るらしい。

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