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料理開始Ⅵ

 フランが表情を強張らせる中、二人の間にアイリスが割って入った。



「マリー、料理に集中、する」


(アイリスの奴。食べるのが楽しみ過ぎて、いつもは一緒にふざけるマリーに対峙してるな。こんな光景、なかなか見る機会ないぞ)



 止めに入るべきか、呆れて放っておくべきか悩んでいた勇輝だったが、思わぬ展開に成り行きを見守る。尤も、ここは厨房なので騒ぎすぎたり、暴れるようなら即座に仲裁に入るつもりではいた。



「わかったよ。それで、サラダを作ったら、魔道具の中に仕舞っておけばいいよな?」



 テーブルの上に置かれた皿に手を掛けたマリーは、アイリスから視線を逸らし、冷蔵庫の役目を果たす魔道具の箱の方へと向かう。



「うん。下の方は凍っちゃうから、上から二段目に入れておいてね」


「あいよー」



 両手に皿を持って歩いていくマリー。そのすぐ後ろを呆れた様子でフェイが追いかける。勇輝は不思議に思ってフェイを目で追った。



「マリー、両手が塞がってたら扉を開けられないだろう?」


「わ、わりぃ、それ開けてくれるか?」


「言われなくても。まだいくつもあるから、こういう時はトレーに乗せていく方が安全だ。まぁ、こうやって協力しながらやるのも楽しいものだけどね」



 最も簡単なサラダはすぐに完成。肝心の味付けに必要なドレッシングは、角煮ができる直前に作るということでフェイたちの班は早々にやることが無くなってしまう。


 そこで桜が取り出したのは豚肉の切れ端。そこまで多くないが、捨てるには勿体ない量だ。それをフライパンに入れて、ソフィに焼くように指示を出す。



「サラダにカリカリのお肉がトッピングがされているのもいいでしょ? その代わり、ドレッシングにかからないように注意は必要だけどね」


「桜、サラダに肉を入れるとか、私の好みを把握しすぎ……」



 アイリスが恍惚の表情で、フライパンへと引寄せられていく。それを勇輝は引き止めながら、ソフィに構わず続けるようにと微笑んだ。


 確かに煮るよりも焼く方が肉料理という感じがする。肉の焼ける匂いが厨房の充満し、途端に勇輝はお腹が鳴り始めてしまう。


 まだ晩飯にありつけるまでには二、三時間ほどかかるはずなのに、気の早い胃の動きに勇輝は自分もアイリスのことを言えないと考える。



「桜。角煮はどれくらい煮込む?」


「そこに赤色の砂時計があるでしょ? それを二回ひっくり返すまで煮たら、一度火を止めるの」


「……なるほどね」



 桜の示した鍋の傍には、色付きの砂時計が複数個置かれていた。赤い色は一回で十分程度を計ることができるものらしい。


 いつの間にか置いていたところを見るに、かなり慣れた手つきで用意をしていたようだ。



「桜、かなり料理慣れしてる?」


「実家にいた時には、ぴょんちゃんとかと料理することもあったし、巫女見習いの時は当番制で作ってたからかな。でも、そこまで大した腕じゃないよ」



 桜の歳でここまでスムーズに――しかも料理を複数個作る指示を他人に出しながら、自分自身も料理をするという視野の広さに驚嘆せざるを得ない。


 それはマリーたちも同じだったようで、尊敬の眼差しが桜へと向けられる。



「そういえば、桜さんは式神という使い魔を呼び出す魔法が使えるんでしたね。もしかすると、そのおかげで複数の同時作業が得意に?」


「うーん。それはどうかな……」



 ソフィが尋ねると、桜は一瞬、天井を見上げた後に首を傾げた。


 どうも本人も知らず知らずのうちに身についた能力のようで、その原因はよくわかっていないらしい。しかし、何が原因かは不明だが、そのスキルがあること自体は間違いない。勇輝を始め、厨房にいる面々は、桜の指示に従って作業を再開する。


 その中でもアイリス以上に真剣な表情を浮かべていたのはフランだった。

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