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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第29巻 比翼連理の杖

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年越し準備Ⅳ

 食事を終えた後、翌日の調理に使いそうな食材を買って調理場の保管庫に放り込んだ勇輝と桜は、廊下でマリーとアイリスに鉢合わせた。



「おっ、桜じゃん。さっきは驚いたぜ。急に年越しパーティーを開くなんて聞いたからさ」



 真っ赤な短い髪を揺らしながら左右に揺れるマリー。その動きに合わせて、大きな二つの膨らみが揺れるので、思わず勇輝は視線を逸らす。



「良い考えでしょ? 和の国だと年越し蕎麦って言って、みんなで蕎麦を食べることが多いかな」


「蕎麦?」



 大食いのアイリスが目を輝かせて桜とマリーの間に割り込む。


 水色の髪がふわりと舞い上がり、彼女がどれだけ気持ちが弾んでいるかを表しているようだ。



「そう。蕎麦。こっちで言うと……何が近いのかな?」


「麺類ってことしか一致しないけど、スパゲッティか? 実際は素材がそもそも違うから、触感も味も違うし、ソースじゃないからなあ……」



 おまけに蕎麦にもいろいろな食べ方がある。誤解を招かずに説明する自信が勇輝にもなかった。



「こっちだと家庭によって違うな。海が近ければ海鮮料理だし、家畜を飼ってる地域なら鶏肉やチーズをふんだんに使った料理になる。あとはひたすらマメを食べたり?」


「年ごとに変えていくことも、ある。貴族の一部は、精霊の休息日から、日替わりで夕食が、そういう豪華なのにも、なる」



 やはり、というべきか。国も違えば食文化も異なる。


 そんな中、桜が作ろうとしているのは、年越しとはあまり関係のない料理だった。



「私は豚の角煮とご飯を作ろうと思ってるの。メインディッシュは一品だけだけど、多分、満足してもらえると思う」


「時間をかけて作る――待ち時間が多い料理だけど、みんなで話しながらやれば苦にならないだろうってね」



 料理に凝る人は何時間もかけて煮ると聞いたことがあるし、実際に勇輝もストーブの上に鍋を置いて作っているのを見たことがある。ゆっくりと作った分だけ味が染み込み、肉のうまみが増すので、白米が進んで仕方がなかったのは懐かしい思い出だ。まさか、異世界――しかも、ファンメル王国――の地で食べられるとは思ってもいなかった。



「豚肉は良いけど、米って売ってたか? 学食で何度か見たことはあるけど、普通の店でも見かけないから、この年末にあるとは思えないんだけど」


「この前、王族専用の船でこっちに私たちも海を渡って来たでしょう? その時に、和の国の食べ物もかなり輸入したみたいなの」


「……なるほどな。それが今、民間の間で出回り始めたってところか。それで? 明日のいつくらいに集まる?」


「五時くらいからゆっくり作って、八時くらいには食べ始めたいかな……」



 桜の提案にマリーはぎょっとした表情で目を見開いた。



「さ、三時間も……?」


「煮るって言うのは、それくらいかかってもおかしくない料理なの。あと、マリーのところの料理人の人だって、凄い人数の料理を同時並行で何時間も作ってるんだからね」


「お、おう、そうかもしれない……」



 桜の勢いに押されてマリーは首を何度か縦に振る。


 そんな様子を見ながら、勇輝は自然と口から疑問を漏らしていた。



「みんな、料理ってどれくらいしたことがあるんだ?」



 勇輝は一人暮らしの経験があるので、最低限の料理はできる。しかし、誰もがある程度のおいしさを感じられる料理かと問われれば怪しい。自分だけが「生きていける」「自己満足の味つけ」しかしたことがないからだ。


 当然、面倒な出汁をとることなどせず、野菜や豆腐に味噌を入れただけの味噌汁を始め、かなりの手抜き――よく言えば時短――料理をしていた記憶がある。その為、桜の勢いにたじたじのマリーのことは決して笑えない立場だ。



「あたしか? まぁ、何度か料理はしたことがあるけど、両手で足りるくらいだ」


「食べる専門、なのだー」



 マリーは照れくさそうに頬を掻きながら応える傍ら、アイリスは堂々と宣言する。

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