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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第29巻 比翼連理の杖

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年越し準備Ⅱ

 街に出てみると精霊の休息日の時と異なり、ほとんど人が出歩いていなかった。特にいつもは剣や槍などを携えた冒険者が、不思議と言っていいほど見当たらない。



「今年も今日と明日で終わりだもんね。みんな、今頃は家の中でゆっくりしてるんだろうな」


「寮の生徒は俺たちみたいに外に行くか、学食で何とかするしかないのか……その時だけは、寒い外に出ないといけないのも辛いな」



 勇輝は白い息を吐き出しながら、空を見上げた。幸いにも今日は雲がなく、澄み渡っている。


 ちょうど、勇輝が吐き出した息のように薄い白い雲が、あっという間に風に流されていくのが見えた。



「一応、寮の中に自炊できるよう、調理場があるけど、使っている人はあまりいないかな。清掃は毎日入っているみたいだから、凄い汚れているってわけではないみたいだけど」



 桜は勇輝と同じように空を見上げた後、しばし考えこむ。


 そうして、数十メートル歩いたところで、組んでいた腕を軽く揺すって、勇輝に問いかけた。



「……私の料理、食べたい?」


「何言ってるんだよ。疲れてる桜に俺が作ってやりたいところだ。まぁ、そのスキルがないから、無理なんだけどさ……」



 昨夜の桜は疲れで眠るなどという生易しいものではなく、実際は気絶に近いものだと勇輝は確信していた。そこまで疲労がたまっている彼女に、料理を作らせるなど考えもしなかった。



「そうじゃなくて、私の料理が食べたいかどうかだけを聞いてるの」


「そりゃあ、食べたくないって言ったら嘘になるけど」



 まさか、桜は本当に料理をするつもりなのではないか、と心配そうに見つめる。


 対して、上機嫌に笑った桜は、メインストリート沿いのある一点を指差した。



「じゃあ、お昼ご飯を食べたら、あそこに寄って行かないと。年越し蕎麦は無理だけど、一緒に温かいものを食べるくらいはできそうだし」



 流石に桜も昨日の今日で、料理をしようとは思っていないらしい。安堵した勇輝は、それならば、と桜に提案してみる。



「それなら、『桜の料理』じゃなくて、『俺たちの料理』だな。桜ばかりに任せておくのは気が引ける……けど、邪魔だったら、追い出してくれ」



 言っては見たものの、自分の料理スキルに自信が無かったので、どんどん語気が尻すぼみになっていく。


 その様子に桜はキョトンとした表情を見せると、一際強く腕に抱き着いた。二の腕に感じる柔らかさに勇輝の心臓が飛びはねる。



「もう、そんなこと気にしないで部屋で待っててくれていいのに。でも、ちょっと、それはそれで楽しそうかも。――そうだ!」



 何かを思いついたようで桜は目を大きく開ける。黒い瞳に太陽の光が反射して、これでもかという程、煌めいていた。



「もし、みんなが良いって言うなら、マリーたちも呼んでパーティーしない?」


「みんな、家族と一緒に過ごすことができないからな。良い考えじゃないか? それなら、素材を買う前に確認をしないと」



 そう考えて、勇輝は袖に魔力を流す。


 手の平に出したのは精霊石。かつて、水精霊になってしまった少女・ソフィが作り出したものの一つだ。今では、複数個存在し、持っている者同士での遠距離連絡手段になっている。



「あ、待って。私が聞いてみる」



 桜は勇輝の持つ精霊石に触れると、思念を送り始めた。しばらくすると、唸っていた桜の表情が柔らかくなる。



(お、これは良い返事が貰えたらしいな。後は、誰の部屋に集まるか、だけど……)



 十中八九、桜の部屋になるだろうと勇輝は予想していた。何せ、事あるごとに集まるのは桜の部屋以外に今までなかったからだ。



「マリーとアイリスだけじゃなく、みんな来れそうだって。騎士団にいたフェイさんも来るみたい」


「へー、それは意外だな。年末年始まで警備に駆り出されてそうで心配だったけど、何とかそこは許してもらえたか」



 本人としてはマリーの警護ができないもどかしさと、トップクラスの騎士たちと鍛錬できる嬉しさの板挟みになっていそうだと勇輝は思っていた。久しぶりに会うので、その辺りも含めて、フェイとは話したいという興味が湧いて来る。

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