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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第29巻 比翼連理の杖

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年越し準備Ⅰ

 冬のベッドには魔力が宿る。


 どんなに十分な睡眠をとっていても、そこから抜け出すまでには時間がかかる。本来ならば、授業や依頼のために仕方なく起き上がるのだが、魔法学園は年末年始の短期間。完全に休学状態となっていた。


 その為、意識があっても瞼を閉じたまま、勇輝と桜はお互いの身を寄せ合い、穏やかな表情で体温を共有する。


 ただ、惰眠を貪るにも限界というものはあった。朝を告げる鐘の音が響いてから、何度目かの鐘で勇輝たちは体を起こした。



「おはよう、桜。しっかり寝れた?」


「うん。いつもはボーっとするけど、今日はスッキリ。でも、この寒さだけはちょっと慣れないかも」



 ある程度の対策はされているらしいが、それでも真冬の寒さの影響がないわけではない。肌寒さを感じながらも、二人は着替えを終える。


 まったく予定を立てていなかったので、着替えた後はどうしようかと二人で唸ってしまう。



「とりあえず、朝食兼昼食は食べないとな。何か食べたい物とかある?」


「うーん、最近は味の濃い物を食べてたから、あっさりした食事がいいかな。でも、昨日、クレアさんたちと別れる時に聞いたけど、この時期になると店も開いているのが少ないから……」



 年末年始になるとメインストリートの店も閉まり始める。ただ、そうなると一部の宿の客が困る為、飲食店のみは互いに日をずらして開店しているという。



「スパゲッティみたいなやつなら、あっさりしたのもありそうだし、探しながら行ってみる? それか、この時期でも学食は開いてくれてるみたいだから、そっちの方もあるけど」


「もうお昼だから、結構、寮にいる人が行ってるかも。それなら、街に出るのもいいかも。ただ、出費は大きくなるよ?」


「その辺りは心配しなくてもいいよ。俺、基本的にお金を使うのは食事くらいしかないからさ」



 半年前までは、その日をどう暮らして行こうかと依頼ばかりしていた勇輝。


 今では、ギルドに預けてある金額がどれほど膨らんでいるのかわからないくらいだ。少なくとも、日本円にして数百万あることだけは確実。場合によっては、それ以上もあり得る。



「あはは……、だって、あれだけの功績があったら、ね」



 流石の桜も苦笑いを隠し切れない。


 特に日ノ本国では、国を挙げて討伐するべき封印されていた魔物を複数体、無力化することに成功している。しかも、その後に起こった二次災害も含めて、だ。ファンメル王国に舞い戻ってからギルドカードの更新で、ランクが上がっていたことを考えると、それなりの報酬が振り込まれていてもおかしくはない。



(今度、預金がどれくらいあるかを確かめておかないとな……)



 もしも、大量の金額が振り込まれていたら、そんなことより復興の財源に使えと勇輝ならば思ってしまうだろう。



『おいおい、貰える物は貰っておけよ。冒険者業だって本来は安定したもんじゃない。若い内に稼げるだけ稼いで置かないといけないんだ。プロのスポーツ選手と同じだぜ?』



 心刀が勇輝に思念で忠告する。


 その言葉もある意味では正しい。後衛の魔法使いならまだしも、前衛の剣士に近い役割の勇輝ではよほど身体強化を鍛えない限り、衰えが来る。



(何言ってるんだ。そんなことになる前に、さっさと平和な元の世界に戻る方法を見つけるんだよ)


『さいですか……。まぁ、俺に出来ることはないから、今日くらいは俺もゆっくり休ませてもらうぜ』


(……ありがとな)



 いつもなら夢の中で修行三昧の勇輝だったが、今日に限っては特に夢の中で襲われることはなかった。心刀が気を使ってくれた結果に礼を言い、勇輝は桜の手を取る。



「それじゃあ、ご飯を食べに行こうか。魔力を使った後は、お腹が減ってるだろうし」


「うん。今日はアイリス並みに食べられ――ないかな。あれは、ちょっと多すぎるかも」



 同時に腰を上げた二人はお腹の虫を鳴らしながら、街へと繰り出した。

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