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製作開始Ⅰ

 翌日の夕方、伯爵夫人に礼を言って伯爵領を出た勇輝たちは王都へと到着していた。



「……何も起きなかった、だと!?」



 心刀との会話から、何か事件が起きるのではないかと危惧していた勇輝だったが、盗賊の「と」の字も無ければ、魔物の「ま」の字も見かけなかったことにショックを受けていた。



「ま、まぁまぁ、勇輝さん。何もないことは良いことだと思うよ。むしろ、今までがいろいろとおかしかっただけというか」


「そうね。あの狼の群れも、あんなふうに襲って来るなんてことは聞いたことが無いもの。あたしのところの領地で起こった氾濫ならともかく、ね」



 クレアは馬車から降りて、目の前の建物を見上げる。


 数日ぶりに見た冒険者ギルド。既に精霊の休息日で飾られるランタンは無くなっており、年始の為の大掃除と共に撤去されたようだ。



「ほら、さっさとロジャーの爺さんに渡して来な。あたしは依頼の完了を伝えてくるからさ」


「ありがとうございます! じゃあ、勇輝さんと行ってきますね!」


「はいはい。喜び過ぎて階段で躓かないように――って、言うのが遅かったかぁ」



 勇輝の腕をとって桜は駆け足で中へと向かい始めたが、その途中で自らの足に躓いて転倒しそうになった。幸いにも、勇輝が抱きかかえたおかげで事なきを得たが、中から出て来た冒険者の一団に囃し立てられ、二人とも顔を赤くしている。


 勇輝は慌てて桜を抱き起すと、咳払いして桜が転ばぬよう階段を昇り始める。



「でも、ここにいなかったら、魔術師ギルドかな? そもそも、あの人って副ギルド長だか副会長だかの立場だし」


「私たちが戻って来るのを期待してるなら、多分、ここにいるんじゃない? ほら、前に勇輝さんがコートを脱がされた時も、ここで待ち伏せ――」



 ギルドの扉を潜ると、温かい光が出迎える。しかし、すぐにその光を遮るように勇輝の目の前に大きな影が躍り出た。



「待っていたぞ!」


「うおっ、ロジャーさん!? まさか、ずっとここで待ってたんですか!?」



 想定外のロジャーの出現に、思わず勇輝の手が心刀へと伸びかけた。もしも桜と手を握っていなければ、抜刀するところまでいっていただろう。



「当然だ。シルベスターの奴からも連絡を受けていたからな」


「え、俺たちが出発したことが、もう伝わってたんですか?」


「あぁ、もちろんだ。あっちの方では面倒なことが起きていたこともあって、その連絡もあやつの妻が早朝に送ってくれたんだ。何の連絡かは――想像つくだろう?」



 すぐにそれが新種の魔物であることに、勇輝と桜は思い当たり、顔を頷かせる。それを見たロジャーは満足そうに笑みを浮かべると踵を返した。


 冒険者たちが何事かと奇異の視線を浴びせるのを気にせず、片手をついて来いとばかりに振る。



「冒険者ギルドの特別室を借りてある。そこで例のブツを見せてもらうとしよう」



 赤茶の扉を開けたロジャーは、勇輝を――正確には、コートの袖辺りを――凝視していた。



「えぇ、でも、かなりの量ですが、部屋の中に入りきりますかね?」


「ふっ、王都のギルドを舐めない方が良いぞ。ほれ、これだけの広さがある」



 ロジャーは勇輝たちに中に入るように手を中へ向けた。訝しみながらも勇輝と桜が扉を潜ると、シルベスター伯爵の城で夕食を食べた時のような広い部屋が続いていた。



「中にあるテーブルやイスは一度撤去してもらった。ここで枝を見てランク分けし、いくつかはここに納めることになっているからな。冒険者ギルドとはいえ、先立つものが無くてはいかん。ギルド員もそれをわかっているおかげで、素早く動いてくれて助かったわ」



 豪快に笑いながら、ロジャーはポケットから筒状の物体を取り出した。



「ほれ、まずは細い枝からだ。だんだんと大きくしていってくれればいい。さっさと作業に移りたくて仕方ないんだ。早うせい!」



 まるでおもちゃを買ってもらえる子供のように、瞳を輝かせながらも厳しい口調で勇輝に捲し立てる。

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