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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第29巻 比翼連理の杖

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運搬Ⅲ

 頬を引き攣らせながら、クレアたちとは反対の方向に歩き出す勇輝たち。魔物の気配は魔眼では感じ取れなかったが、外縁部から見ているだけでも気付かなかった魔物が逃げていく可能性もあるだろう。



「とりあえず、枝が切り落とされ終わったら数を数えてもらって、俺が運搬すればいい。しまい方を間違えて、破らなければいいけど……」


「あれ? でも、勇輝さんって、コートはロジャーさんから試作品として貰ってたし、ほつれとか破れても修復する機能があるんだよね?」


「それはそうなんだけどさ。ロジャーさんが言ってたんだよ。『破れたらしまった物が、いきなりポンッとはじき出されてくるかもしれないなぁ。はっはっはっ』ってさ」



 それを聞いた桜は目を何度か瞬かせて、コートの手首あたりを見た。



「じゃあ、もしかすると、勇輝さんの手が怪我をするってこと?」


「それで済めばいいけど、もし破れた所からとか、破れてもいない所から――それこそ、コートの内側とかだったら、多分、大変なことになるかも」



 ロジャーは実際にコートを切りつけてみたらしいのだが、しまった物が出てくることはなかったと言っていた。ただ、可能性がほんのわずかでも存在する以上、その危険性は持ち主に伝えておく義務があると真剣な表情で言っていたことを勇輝は覚えている。そのことも踏まえて、桜に伝えると微妙な表情へと変わって行く。恐らくは、自分の尊敬するロジャーの言葉を信じたい一方で、勇輝のことが心配で仕方がないという感じだ。



「じゃあ、中に入れるのは安全そうな物だけにしない。今回は仕方ないけど、一個ずつの物の大きさは小さなものにするとか。そうすれば、コートの隙間からどんどん落ちてくると思うから」


「そうだな。まぁ、あの太い枝が出て来たとしても、多分、その前にコートが千切れ飛ぶと思うから、打撲とか骨折で済むと思うけど」


「それでも、怪我は怪我だし、大怪我したら命にもかかわるかもでしょ?」



 頬を膨らませる桜。


 勇輝は自分の身を案じてくれることに喜ぶが、こればかりはどうしようもない。



「次にロジャーさんに会った時に、緊急で放出する場所をあらかじめ作っておいてもらうことを頼んでみるよ」



 いつ事故が起こるかわからないなら、その方向性を予め用意しておくことで着用者を守るというのは理に適っているはずだ。或いは、自らコートに魔力を流して、その場所を手動で作るか。


 勇輝は持っていた煙玉を袖に近付けて、魔力をその辺りへと流した。すると、煙玉の重さが手の中から消える。次の瞬間には煙玉は影も形も無くなっていた。



(部分的に魔力を袖に流せば収納と引き出し。全体に流せば魔力による物質強度の底上げと魔法抵抗力が上がる障壁の代替にもなる。便利だけど、何かの拍子に使い分けが出来なかったら、困ったことになりそうだな)



 中に収納した物体は魔力を流した瞬間に、手へと大体何があるかを感覚で伝えてくれる。目で見えて居なくてもゲームのインベントリを開いているような状態だ。少なくとも、取り出し間違いが起こることはないので、敵の攻撃から身を守ろうとする時にだけ気を付けなければならないだろう。



(魔法攻撃は黄金結界もあるし、コートで全身を守るなんてことになる場面には遭遇したくないな)



 勇輝の脳裏には昨夜のオルトロスが放とうとしていた火球が過ぎる。着弾後に広がる炎のように範囲攻撃をされたら、躱しても被害が出かねない。


 今までは回避一辺倒の戦い方だったが、そればかりではどうにもならない相手がいることを再確認できた。その意味では、昨夜の戦いは有意義であったと言えるだろう。



「絶対に約束だからね。じゃあ、クレアさんたちと同じように見張るけど、流石に昨日の今日で魔物が大量に襲って来るはず……ないよね」



 桜が不安そうに周囲を見渡す。


 桜の杖の素材となる樹木とそれ以外の樹木との間には数十メートルほど距離がある。恐らく、何かの拍子に異なる樹木が混ざらないようにとの配慮なのだろうが、そのおかげで余裕をもって見張ることが出来そうだった。

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