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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第29巻 比翼連理の杖

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選定と剪定Ⅶ

 勇輝は枝の重みで揺れる足場の上でもふらつくことなく、足下を見下ろしていた。



「……お聞きしたいのですが、この後、太い枝から伸びている小枝はどうするんですか?」


「あ、あぁ、えっと、それも全部切り落として小分けにするつもりだ。それは明日になる予定だったが、これなら、すぐに――」


「それ、俺がやってしまってもいいですか? こういうところ、全部、ですよね?」



 勇輝は心刀で騎士が説明したであろう部分に切っ先を向ける。


 誰もがその姿を見て、動きを止めた。恐らく、全員がこう思っただろう。



 ――さっきよりも細い枝なら、いくらでもできるのでは、と。



「そ、そうだ。き、君が切った太い枝から出ている小枝の根元部分――実際は斧でやるから、十数センチほど上を狙うから、そこまで切る場所は気にしなくてもいい」


「わかりました。じゃあ、感覚を覚えている内に、さっさとやりますね」



 次の瞬間、何も振り被ることなく腕を伸ばした勇輝。その延長線上にあった心刀は、まるで草でも刈り取るかのように小枝――とは言っても、人間の手首程の太さ――を切断してしまった。足場の向こう側へと落ちていくそれを見て、下で見ていた騎士たちが慌て始める。



「ま、待て待て! 一回、降ろしてからにしろ! 傷がついたら大変なことになる。多分つかないが、それでもだ!」


「そうですか。すいません、気が回らず」



 勇輝は下にいた騎士へと謝罪すると、心刀を納めた。しかし、足下の枝からは眼を離さず、その場所に留まり続ける。



「ゆ、勇輝? 今から枝を降ろすんだろ? そこから退いた方が」


「今、眼を離したら切れなくなりそうなんだ。できれば、ずっと枝を見させて欲しい」


「そ、そんな無茶な……」



 クレアが戸惑っていると、周囲の騎士たちは笑顔で彼女の前に進み出る。



「いや、ここは彼の言葉に従った方が最終的には楽になる。それならば、お安い御用というものだ。みんな、行こう」



 騎士たちはまるで今から酒場にでも出かけるような気軽さで枝へと群がって行く。


 そして、斧を足場において枝に手を掛けた。



「太い方から降ろすぞ。せーのっ!」



 掛け声に合わせて、騎士たちが枝を持ち上げて岩の槍の上へと枝を移動させる。いくら人数がいるとはいえ、そんな簡単に動くものかと思うだろうが、実際は相当な軽さであった。何しろ、騎士たちが踏ん張った瞬間に勢いあまって浮いてしまうくらいだ。


 硬さから勝手に重い物だと決めつけていたが、勇輝は切った手応えでその違和感に気付いていた。



『へぇ、本当に切れるとはな』


(あぁ、もし、これがどんな魔物にも使えるのなら、かなり強い魔眼だ。でも――)



 切ってはならないものまで切ってしまう可能性もある。


 何となく、勇輝はその恐ろしさが自分の奥底から湧き上がって来るのを感じていた。


 自分が魔眼を用いて、本来は切れないものを切ったことが本当に良かったのか。地面に落ちた枝を見つめながら考える。



「よーし、無事に降ろせたな。おーい、もうやってもらって大丈夫だー」



 下からの合図が出たので、勇輝は身体強化を施したまま跳び下りる。かつては恐怖を感じていた高さだが、それも今は不思議と感じることはない。ただただ、勇輝の意識は枝を切ることのみに注がれていた。


 距離が離れてしまい、再び、緑の光の濃淡が暴れ出している。それでも、一度、重なった瞬間を見た影響か。数秒で魔眼の焦点は合い、光の場所が一致する。


 勇輝は歩きながら心刀を片手で枝に這わせる。撫でるだけで水を掻き分けるように切れていく。時折、心刀が引っ掛かり勇輝が歩みを止めるが、眼を細めて数秒と経たず、元の動きへと戻る。


 一通り端まで切り終えると、枝を回転させ勇輝が戻りながら同じ行動を繰り返す。チェーンソウよりも遥かに早く切り落とされ、細くなっていく枝に騎士たちの中には感嘆の声を上げる者もいた。

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