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選定と剪定Ⅳ

「ねぇ、あの刀使いが前に岩を切ったことがあるらしいんですよ。ちょっと、試しに枝が切れるか試してもいいですか?」


「それは本当か? そう言えば、昨夜は巨大なボルフを相手取っていたと聞いていますが、もしや足を切断したというのも彼が!?」



 どうやら昨夜の活躍を騎士もどこからか聞いていたらしい。尤も、オルトロスの登場は昨夜の騎士たちにもかなりの衝撃を与えたはずだ。それを相手に大立ち回りを決めれば、話題になるのは避けられないだろう。


 恥ずかしさに顔が照れるのを感じていると、クレアがニヤリと笑うのが見えた。その瞬間、勇輝の中で何か危ないと信号を発するが、行動に移す前にクレアの両手が肩に置かれた。



「まずは何でもやってみる。それが人生で大切だと思うのよねー。ってことで、ほらほら、さっさと上に行く!」


「ちょ、ちょっと、クレア!? だから、いきなり俺みたいなのが行ったところで迷惑になるだけだって!」


「関係ないって。桜ちゃんも見ていることだし、いいところ見せてやりなって」



 無理矢理、体の向きを変えさせられ背中を押される。向かう先は想像するまでもなく、足場へと辿り着くための梯子。


 もうここまで来たらやるしかないと、勇輝も覚悟を決める。


 クレアと話をしていた騎士が、上にいた作業中の騎士たちに声を掛ける。道を譲るようにという指示なのだろうが、そのせいで勇輝は自分に向けられる視線が正直気になって仕方がない。


 片や「冒険者如きが」という見下した視線。片や「昨夜のあいつか」という驚きの視線。どちらかというと前者の方が多いような気がした。



『――――――――』


「……はぁっ!?」



 軋む音を響かせながら梯子を上る。頭の中にかすかに心刀の声に似た金属音が響いたような気がしたが、自分にではなくクレアに向けられた思念だったようで、何を言っているかはさっぱりだった。


 下から聞こえたクレアの声に心配して覗き込むと、彼女は怪訝な顔をしながら勇輝の後をついてきた。



「え、何でクレアまで?」


「あぁ? 自分の刀に話を聞かされてなかったのか? あたしも来るようにって言われたんだけど、何か作戦でもあるんじゃないの?」



 本当に何もわかっていないようで、勇輝は心刀へと問いかけたい気持ちになる。しかし、上では騎士たちが勇輝を待ってくれていたので、まずは上ってしまうことを優先した。その間にも何度か金属音が響くが勇輝には、その意味を理解することはできない。


 さっさとこの状況から解放されたいと心刀を抜き放つ。両手の握りを確かめて、深呼吸をしていると、今度は勇輝の脳内に意味のある言葉で心刀が話しかけて来た。



『まぁ、待て。そう焦るなって。岩を切ったって時のことを思い出しながらやれよ。その時はどうやったんだ?』


(どうって、魔眼を開いて様子を見ながら刀を押し当てたんだよ。そのまま、一気に切ろうと思って力をちょっと籠めたら、そのままズブリ、さ)



 当時の戸惑いを思い出しながら、勇輝は再現する様に心刀を枝へと押し当てる。切るべき対象の高さも違えば、自身の姿勢も違う。それでも、可能な限り再現しながら心刀へと説明を続けた。



『同じ黒系なんだ。よく見てたら羊羹に見えてくるだろう?』


(見えるわけがあるかっ! こっちは魔眼で見る色が全然違うんだぞ)



 周囲の騎士たちの訝しむような声が気になり集中するどころではない。変な汗が背中を伝う感覚に、勇輝は自然と息が荒くなる。



『まぁまぁ、落ち着けって。とりあえず何だ。ちょっと当てて前に体重を傾けてみろよ』


(わかったよ。やりゃ良いんだろう?)



 渋々と言った様子で勇輝は心刀を木の枝へと触れさせる。手の平に返って来る感触からして、かなり硬そうな印象を受ける。見た目とは違い、金属へ押し当てているような気分になった。


 何とかして集中しようと深呼吸をしていると、また心刀の思念が意味不明なものへと変わる。いい加減に少し黙っててほしいと思った瞬間、勇輝の両肩が後ろから軽く押された。

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