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選定と剪定Ⅰ

 翌日、昨日の案内をしてくれた騎士たちと共に、再び素材となる樹木の下へと向かった。


 その際に、纏めていた隊長が笑顔でクレアへと話しかける。



「いやー、昨日は助かりました。まさか、あんな大物が出てくるなんて」


「私も驚きましたが、彼らがいてくれたおかげで助かりました。あの姿、御伽噺のオルトロスにそっくりでしたからね。この後に三つ首のケルベロスが出てこないか心配になります」



 オルトロスの体は騎士や冒険者、ギルドの総出で解体や運び込みをされている。話を聞くと、ボルフたちと何が違うのかを解剖して確かめるほか、その毛皮や肉などを利用するらしい。


 もちろん、新種の生物となれば毒がないかどうかといった危険性を調査する必要があるが、そこは新種の植物を量産しているシルベスター領。その点に関する対策は、既に準備済みらしい。



「ねぇ、勇輝さん。クレアさんたちが言ってた御伽噺で思い出したんだけど、ケルベロスとオルトロスって言葉に聞き覚えある?」


「うん? ケルベロスなら地獄の番犬で有名だろ。……そう言えば、図書館の禁書庫に入る時に読んだ本にもケルベロスが書いてあったな」



 かつて仲間を救う知識を得る為に、図書館の禁書庫に立ち入る必要があった。しかし、そこに立ち入ろうとすると二匹の番犬「ベロ」と「トロ」が立ち塞がる。


 司書から渡された本の中にケルベロスに食べ物を与えて、その隙に通り抜けるという方法が書かれていた。そのおかげで、禁書庫にも入り、必要な知識を得ることもできた。



「うん。それで司書さんが飼っていた二匹の犬だけど、ベロちゃんとトロちゃんって名前だったでしょ?」


「そうだったな。結構、ガタイが良くて――すごい威圧感があったのを覚えてるよ」



 魔眼で見たベロは天井にまで届くような青白い光の塊で、それ自体が犬の姿をしていた。忘れたくても忘れられるはずがない。恐らく、今、その姿を見たとしてもそこまで恐ろしいとは思わないだろうが、相手にしたくないと思うくらいにはトラウマ並みに心へと刻み込まれている。



「それでね。何でそんな名前にしたのかって思ってたんだけど、もしかして、御伽噺から付けたんじゃないかな? ケル『ベロ』スのベロとオル『トロ』スのトロで」


「……そんなバカな」



 勇輝は笑い飛ばしたくなるが、ベロの威圧感を覚えている脳と心がそれを許さない。名は体を表すと言うが、禁書庫の見張りをしていることを考えると、本当に強い存在の可能性がある。



「でも、もう禁書庫に入る必要はないから、私たちが会うのは可愛い二匹の犬だね。そうだ、杖ができるまでは実践とかできないし、図書館にまた行ってみない? この時期は絶対に人が少ないと思うし」


「あぁ、それに関しては賛成だ。俺もガンドや火球の魔法だけでなく、他の魔法も使えるようになりたいからな。特に水属性は、火球の魔法でやらかした時に使えそうだし」



 昨夜の消火作業で護衛以外に何もできなかったことを悔やんでいた勇輝は、ナイスアイデアとばかりに桜の提案に喰いつく。


 いつ復活するかもしれない魔王やその配下。それに対抗するためには一つでも対抗手段を持っている方がいい。それが例え自分が魔王を直接倒すつもりがなくても、他の敵を倒すことに繋がれば、魔王を倒すと言われる勇者の後押しにもなるはずだ。



(マックスさんが勇者だって聖女に言われていたけど、あの話もどうなったんだろうな)



 魔王を倒す存在の勇者。それは既にサケルラクリマの聖女に寄って見つけ出されているが、当の本人は勇者になるのを拒否しているという状態だった。それ以降、どのような進展があったかは不明のままだ。



「さて、着きましたね。幸い、創り出された樹木には被害がなかったようです。後はこの木の枝を切り落とすだけですが、ここからが大変ですよ……」



 騎士の言葉に勇輝と桜は、目的の樹木を見上げる。青々とした葉は生命力に満ち溢れていて、枝の一本一本が太く、力強さを感じさせる。


 身体強化を施した上での打撃をものともしない幹だったのだから、それを感じるのも不思議なことではない。

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