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双頭の狼Ⅶ

 重い音をたて、赤黒い血液が地面へとまき散らされる。


 強力な顎による噛みつきのリスクを減らすことに成功したが、その分、オルトロスの怒りが上昇するだろう。事実、オルトロスは勇輝以外には目もくれず、何とかして襲い掛かろうと姿勢を低くして隙を窺っていた。



「悪いな。こっちの魔法は連射できるんだよ!」



 残り五発。一撃で下顎を吹き飛ばす威力のガンドならば、数発当てるだけで機動力を大幅に削ぐことができるだろうし、上手く行けば倒し切れる。


 勇輝は牽制で――威力は据え置きだが――ガンドを放ち、オルトロスの動向を注視する。左右に避けるか、上に避けるか。それとも、体で受け止めて突進してくるか。


 警戒している中、勇輝の魔眼が捉えたのは――



「マジかっ!?」



 下顎を失った頭部を盾に突進するオルトロスの姿だった。


 驚愕の声を上げた瞬間、その頭部が弾け飛ぶ。しかし、もう一方の頭部が生き残っているので、当然ながらオルトロスの体は止まるどころか一気に加速する。



「クレア! あいつの右側の足を頼む! 俺は左に行く!」


「くっ、簡単に言ってくれるね。言ったからには自分がしくじるんじゃないよ!」



 クレアが隣に並ぶのを風圧で感じる。既にオルトロスとの距離は三十メートルを切っており、一秒と経たずに飛び掛かって来る未来が勇輝には見えていた。


 勇輝たちとの間にいたボルフは巻き込まれまいと離れていく。


 あまりにも集中しているせいか、勇輝は周囲で炸裂している魔法の音がどんどん遠退いていくのを感じ取った。



「まだだっ!」



 オルトロスに向けて、ガンドを連続で放つ。


 先程と同じように顔と胸、腹へと向かう軌道で放たれた四つの弾丸。それらは勇輝の想定した通りに空気を引き裂き――



「なっ!?」



 空中で身を捩ったオルトロスが、間一髪でそれを回避する。真っ黒い毛が千切れ飛び、皮膚を裂くが、行動を阻害するほどの損傷には至らない。


 前に一歩踏み出し、駆けようとしていたクレアが勇輝と共に目を見開いてオルトロスを追う。


 体背負う選手のように体を捻り、勇輝たちの後方へと着地しようとしていた。



「――魔力制御(マジックバレル)最大解放(フルオープン)



 このまま着地すれば、ガンドの使えない勇輝では安全圏で戦うことは不可能。それならば、オルトロスが次の行動へと移る前に攻撃を加えて、有利な状況を作り出すのが得策だ。

 狙うは石礫が貫通した左前脚。


 人間が本能から危険と判断してロックしている魔力の流れを強制的に開放し、身体強化を限界まで解き放った勇輝がオルトロスの着地するであろう場所目掛けて疾駆する。左手に握った心刀を両手に握り直し、チビ桜へと問いかける。



「桜、あいつへ魔法を撃ち込めるか?」


『準備はしてるけど、さっきみたいな威力は無理!』


「大丈夫だ。気を逸らすだけでも助か――っ!?」



 言い終わらぬ内に勇輝の魔眼に嫌な色が映った。宙返りのような状態になっていたオルトロスの顔が見え始めていた。その口にはボルフたちと同じような紅蓮の光。


 すぐに火球が襲ってくると、勇輝の魔眼は告げていた。


 狙いは勇輝。ボルフたちの数倍の体格であることを考えると、その火球の威力も同じかそれ以上。着弾地点を中心に十数メートルが炎に包まれるだろう。



「クレアは――何とかなるな」




 一瞬だけ肩越しに振り返った勇輝は安堵する。既に勇輝とクレアの距離はかなり離れていた。仮に火球が勇輝の今いる場所を襲っても、身体強化を施しているクレアならば風で後ずさりする程度で済むはずだ。



「させるかっ!」



 そんな中、クレアの大声が勇輝の背中に届く。高速化した思考の中では、ゆっくりと聞こえた。何事かと思っていると、頭上を銀色の光が飛んでいく。



 ――ガッ!?



 火球を吐き出そうとしたオルトロスの口から、戸惑いと苦悶の声が漏れ出た。

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