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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第29巻 比翼連理の杖

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双頭の狼Ⅳ

 下段からの斬り上げて片方の頭部を斬り飛ばし、蹴って距離を開ける。


 突っ込んで来た別のボルフを振り下ろし、地面すれすれで横に薙ぐ。片方の顔が縦に、もう片方の顔が横へと両断される。



「遅いな」



 振り返りざまに装填したガンドを放つと、蹴り飛ばした個体が空中で爆散。さらに、その後を追って来た二匹も火球を放とうとしていたが、それよりも早く連続で撃ち貫いていく。



「これ以上は……前に出ると囲まれて危険だな」



 まだ、騎士たちの射線には入っていないが、それでも十分に危険な距離だ。それに気を使いながら、魔物を十数匹まとめて戦うなんてことはできない。


 勇輝は一度足を止めて、近付いてきているボルフの様子を窺った。


 騎士たちに向かわずに、勇輝を視界にとらえて迫ってきているのは十匹弱。距離的には余裕があるが、引きながらガンドで対応しても問題は無いだろう。その一方で、勇輝たちへ向かう個体が出始めたことで、騎士たちはそのボルフを正確に狙うことが可能になっていた。何条もの青い水流がボルフへと殺到し、その横腹に直撃していく。



「うわ、絶対あれ痛いやつじゃん」



 追い付いて来たクレアが、隣に並ぶなり渋い顔をした。それもそうだろう。水の槍が着弾した瞬間、水圧から解放された水が、ボルフの胴体を大きく歪めて、散って行くのが見えたからだ。恐らく、見た目は無事でも内臓は酷いことになっているのが想像できる。



「これはアレだね。あたしたちが囮になって引寄せて、退却しながら迎撃。それを倒し終わったら、また接近して引寄せる特殊なヒットアンドアウェイだ」


「なるほど、わかった。じゃあ、ここは無理せずに下がりながら――っ!?」



 勇輝が林の方に違和感を感じ取ると同時に、桜から思念での連絡が届く。


 上空からの最初の報告とは違い、かなり焦っているのが伝わって来る。



『勇輝さん!? 林の方の奥から、大きな影が走ってきてる! それもすごい速さで!』



 視界の端に捕らえた魔眼の見せる極彩色の世界。林の緑に燃え盛る赤が肉眼よりも鮮やかに映し出される。そんな世界の緑の光の奥に、ボルフが放つ赤と似たような光がチラついていた。しかし、その位置は勇輝の頭くらいの高さを墓場で青白い人魂が彷徨うように上下に動き、だんだんと近付いてきているように見える。



「――マズイ、アレは!」



 即座に勇輝は人差し指へと収束させる魔力の量を一気に増やす。


 油断していたと言えば、それまでだろう。ただ、言い訳をするなら、「こんな敵を誰が想像できたか」だろう。


 林の中から勢いよく躍り出た存在に勇輝は、即座に人差し指を向ける。



「喰らえ!」



 土煙を上げて急停止したソレの頭部を掠めて、ガンドは空へと消えて行く。


 炎の光に照らし出された姿に勇輝はもちろん、騎士たちからもどよめきが上がった。



「デ、デカい。デカすぎるっ!」



 騎士たちの中の誰かが声を漏らす。一人だったかもしれないし、もっと大勢だったかもしれない。ただ、それは騎士たち全員が動揺するほどのものだったことを表すには十分な言葉だった。



「ボルフの上位種。いや、変異種ってところか。ただでさえ、双頭の新種だって言うのに」



 大型犬の大きさが通常のボルフなら、新たに出現したのは、その数倍の大きさのボルフだった。頭部の位置は勇輝の背を上回り、狼と言うには明らかに大きすぎる体格を誇っている。



(ちっ、デカい癖に速い。おまけにガンドを躱した? それともただの偶然か?)



 勇輝は顔をしかめつつも、残弾の装填と一発一発のガンドの威力を高める為に、さらに大量の魔力を右手に集める。


 骨や筋肉、血管が軋むような感覚に襲われるが、今まで使ってきたおかげか、ギリギリ痛みを感じない程度。



『ほう、なかなか骨のある奴が来たじゃないか。アレなら相手にとって不足ないな』


(寝言は寝て言え。あの巨体、一歩間違えたら即死だぞ?)



 心刀の念話に勇輝はため息をつきたくなる。


 一対一ならば倒す自信はあるが、それは周囲のボルフが邪魔をしないことが前提だ。仮に巨大なボルフを倒せても、その後に袋叩きに遭う未来が勇輝には見えた。

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