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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第29巻 比翼連理の杖

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伯爵邸・宿泊Ⅲ

 勇輝はどうしたものかと悩んでいると、部屋をノックする音が鳴り響いた。


 即座にメリッサが対応すると、彼女は振り向いて笑みを浮かべる。



「さて、皆様。噂をすれば、ですよ。夕食の準備ができたようです」


「うーん。クレアの心配しすぎで済むのが一番なんだけど……なんか、背中がぞわぞわするんだよな……」



 勇輝は肩甲骨を動かして違和感を取り除こうとするが、生温かい何かが背中を這い上って首までくるような感覚が残る。思わず、首の後ろへと手を当てるが、そこには鳥肌が立った自分の皮膚の感触だけだった。


 そんな言動を不思議に思ったのか、桜は何度か瞬きしながら勇輝の背中に手を当てて擦る。



「もしかして、虫の知らせとかかな? ほら、勇輝さんのひいお婆様は未来視ができるでしょう。だから、同じ血が流れてる勇輝さんも、似たような能力があったり……?」


「悪いけど、そういうのは今まで生きてきて、両手で数えるくらいしかないよ」


「……それ、多い方だと思うよ? あ、あとは勘違いの可能性もあるけど、勇輝さんの場合は違う気がするなぁ」



 桜は百面相しながら唸る。そんな彼女の肩をクレアが叩いた。



「ほらほら、桜。こんなところで悩むよりすることがあるでしょ? 用意が出来ているのに人を待たせるなんて、マナー以前の問題だよ」


「そ、そうですね。じゃあ、クレアさんが先に」



 道を譲ると、クレアは苦笑いしながら部屋の外へと向かう。


 このメンバーではクレアの格が一番上。彼女自身が、そう話をしていたのにも拘らず、そのことに本人が違和感を抱いているようだ。クレアも勇輝たちと年齢はさほど離れていない。それでも貴族の子女として、やるべきことをやらねばならない。その点で言えば、十代というまだ大人になりきれていない世代で比べると勇輝のいた世界よりも遥かに厳しいと言えるだろう。



「さて、お相手はどう出てくるか。正直、あたしもわからないから、結構緊張するね」


「ライナーガンマ公爵の城では、そんな風には見えなかったけど……もしかして、それより緊張してる?」


「まあね。何せ、あの時は公爵も結構追い詰められている感があったから、こっちにも素直に情報が下りて来たところが多い。でも、こっちはシルベスター伯爵が依頼内容を予め公表しなかったように謎が多い。正直、情報が少なすぎて、事前に対策を立てることもできないぶっつけ本番ってところ」


「……帰ったら、ケーキとかいろいろ奢らせてください」


「ん、期待してる」



 今更ながら、とんでもないことに巻き込んでしまったと気付いた勇輝は、せめて、自分ができるお礼を告げる。だが、既にクレアは伯爵夫人との会話について思案しているようで、どこか上の空だった。


 声を掛けない方が良いかもしれないと、勇輝はクレアの数歩後ろを桜と共に歩いていく。



「クレアさんも、大変だよね。巻き込んだ私が言うのも何だけど……」


「あぁ、でも、それを何とか出来るだけの実力があるのが、クレアの凄いところだよ。俺だけだったら、多分、一発で屋敷から摘まみ出される自信がある」



 貴族の常識など、勇輝は目にするどころか耳にする必要もない生活をしてきた。あくまで、一般庶民の間で通じる礼儀をそれなりにわかっているくらいだ。

 一人で話をしたら、ボロが出て、礼を失するどころの騒ぎではないだろう。


 廊下を照らす魔法石の灯りを目で追いながら、勇輝は大きくため息をついた。もしも、クレアが警戒していた通り、伯爵夫人が猫を被っていたら、どのような結末が待っているのか。想像すらつかず、頬が引き攣りそうになる。



「とりあえず、俺は、俺の出来る限りのことをする――いや、しない方が良いのか?」


「あはは、確かに何かするよりもしない方が安全かもね。口は災いの元って言うから気を付けないと」



 そう言った桜は、片手で自分の口を押えた。


 そうこうしていると、クレアの肩越しに、一際目立つ荘厳な装飾が施された木の扉が見えて来る。思わず握りしめた手が汗ばみ始めていた。

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