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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第29巻 比翼連理の杖

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伯爵邸・宿泊Ⅱ

 クレアへと勇輝と桜が注目すると、彼女は勢いよく立ち上がる。



「さて、そろそろ陽も暮れて来た。二人とも、緊張する準備は大丈夫?」



 いったい何のことだ、と勇輝は桜へと視線を移す。桜も勇輝同様、何かを理解していないようで首を傾げた。



「クレア様、どうせすぐわかることなのですから、はっきりと伝えてあげた方が良いですよ。大丈夫だとは思いますが、何かあったら一大事なので」


「まぁ、それもそうだね。でも、あたしがそういう時にどういう行動をとるかはメリッサが一番よくわかってるんじゃない?」



 目の前で繰り広げられる主従の会話について行けず、勇輝たちが呆然としていると、クレアが見たことがある意地悪な笑みで振り返った。



「これから夕食が始まると思うけど、本物の貴族の屋敷でのテーブルマナーは頭の中に入ってる?」


「うっ!?」


 勇輝は血の気が一気に引く感覚に襲われた。


 貴族の家で食事をした記憶で一番印象にあるのは、ローレンス辺境伯の別邸と領地の城。ローレンス辺境伯夫妻は、勇輝たちに対して寛大な対応で――――娘であるマリーやクレア両名も含む――マナーは二の次にしてくれていた。おかげで、勇輝も友人の家で食事をするような感覚で過ごすような感覚だった。しかし、今回は違う。相手は伯爵位を持つ宮廷魔術師の婦人。そんじょそこらの貴族とはわけが違う。



「あ、でもライナーガンマ公爵と食事をしたこともあったから、それに比べれば大丈夫ですよね? こういうのもなんですけど、ポピーさんは公爵よりも優しい雰囲気ですし、さっきの会話も非常に穏やかに進みましたから」


「まぁ、それを言ったらそれまでなんだけどね。でも、桜。マナーをできるだけ守ろうとしてできないのと、最初から守る気がないのは違うからね。そこのところ、わかってる?」


「そ、それは……」



 言葉に詰まる桜。クレアはさらに追い打ちをかけるようにして言葉を紡ぐ。



「相手は、父さんのような成り上がりでもなければ、母さんのような魔法一辺倒の変わり者でもない。正真正銘、貴族の令嬢として育てられた貴婦人だよ。二人がどんな心情で臨んでいるかなんて、秒で看破するだろうね」



 クレアはしばらく勇輝と桜を交互に見る。その顔は先程までの悪戯をするような笑みを潜め、これから戦場に赴くかのような雰囲気を纏っていた。


 風が窓を叩く音だけが部屋の中に響き渡り、何とも言えない緊張感を作り出す。



「――と、いうわけで、馬車の中でメリッサ直伝のマナー講座で簡単に予習をさせておいたわけなんだけど……どう?」


「自身は無いけど、それなりにはイケると思う」



 この領地に来るまでの間、何も雑談ばかりしていたわけではない。伯爵夫人とお茶会になる過程で、会話をしていたのは基本的にクレアだった。騎士の爵位を持っている勇輝ではあるが、それでも実質的なくらいはクレアの方が上。その為、基本的には勇輝と桜は伯爵夫人との会話に最低限の参加で、クレアに任せきりの状況になるしかなかった。


 そして、重要なのは相手から話しかけられない限りは、基本的に話しかけてはいけないことだった。それを知った時の桜と勇輝は、今までの会話の中で、何度かやってしまったと顔を蒼褪めさせた。



「一応、訂正させていただきますが、ビクトリア様はブリジット公爵家の出です。確かに魔法ばかりを研究して、他の貴族の方よりもいろいろと疎い部分はありますが、十分に貴族としての在り方は熟知されていますよ」



 メリッサがジト目でクレアを見る。



「それと、あくまで私がお教えしたのは、そのようなマナーもあった、ということです。今では、それをきっちり守っている人は少ないので、お二人もあまり肩肘張らない方がよろしいですよ?」



 メイドまでお茶会に同席させる方ですから、とメリッサは付け加える。


 普段から、自分のお茶会にメイドをお供させていたと話すくらいフランクな人柄だ。それをメリッサにも提案するのだから、彼女の言う通り、そこまで心配しなくても良いのかもしれない。むしろ、お茶会を経ても警戒を続けるクレアが、ある意味では異常と言えるかもしれない。

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