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伯爵邸・宿泊Ⅰ

 伯爵家の城へと戻った桜は、唸っていた。


 最後に調べた樹木の適正は、案内した騎士をして、「最優にして最適」と言わしめるものだった。



「その分、ここでの滞在が長引くから、ポピーさんたちのお邪魔にもなっちゃうし……」


「うーん。そこはあんまり気にしなくてもいいかもよ? だって、結果を伝えた時、自分のことのように喜んでいたから。それに、元々ここには二日は滞在する予定だったんだから」



 シルベスター伯爵の計らいで、勇輝たちは伯爵家の客室に通されていた。



「そうだな。三日でも四日でも止まっていったらいいとは言われたけど……流石に他人様の家で年末年始を過ごすのはマズいよな」



 桜が杖を失ってから、すぐに――まるで待っていたとでも言わんばかりに話がトントン拍子で進んだ結果が、今の状況だ。正直、ここに来るのも最初は申し訳なさでいっぱいだったのだが、シルベスター伯爵に圧をかけられては首を横に振るわけにはいかない。



「あたしみたいな貴族としてなら、お言葉に甘えるのは下の下なんだろうけどさ。良くも悪くもこっちは、辺境伯の娘。そこら辺を気にしないのが強みってね」


「クレア様。一応、ビクトリア様からは、そういうことも学ばせておくようにと言付かっておりますが?」


「じゃあ、それに従って、あたしらはお暇する? 勇輝と桜を放って」


「……今回ばかりは例外です」



 メリッサが一瞬だけ批難がましい視線を向けるが、飄々としたクレアの反論に小さく息を吐いた。



「では、別の問題に目を向けるとしましょう。先程の騎士の方が言っていたように、必要な部分を伐採するのに最低でも明後日までは時間がかかるとのこと。当然、他の騎士も伐採中の護衛として動くとのことですが――」



 依頼としてきている以上、クレアはその活動に従事することになる。それは自然と勇輝と桜も参加する方向へと話は動いていた。



「俺は最前線で騎士と一緒に刀を振ればいい。クレアも同じだろ?」


「あぁ、そうだよ。ただ、馬車には他の武器も積んであるから、そっちに切り替えるのも手だね」



 クレアは剣を持ってきていたが、それ以外にも槍や弓も用意していた。どんな依頼内容か知らされていなかったので、その対策としてはクレアからしてみれば当然らしい。



「メリッサはどうする?」


「そうですね。一応、後ろの方で控えさせていただきます。あまり人目に晒すような技でもありませんので」



 暗器使いというだけで、いろいろと勘繰られそうになる部分もあるだろう。もちろん、その為にメイド服の上からベルトを着けて、二本の短剣を装備しているが、それでも奇異の目で見られていた。



「まぁ、バレたらバレたで噂が流れ、クレア様を始めとするローレンス家に手を出そうとする輩は減ることになるでしょうね」


「ないない。あたしの父さんがアレな時点で、もう敵味方の区別はハッキリしてるんだから」



 クレアが肩を竦める。


 勇輝と桜は、改めてローレンス辺境伯が親だと大変そうだと納得せざるを得なかった。何とか笑みを浮かべるが空笑いにしかならない。



「それで、桜はどうする? 一応、和の国の魔法は使えるって聞いたけど」



 和の国の魔法。即ち日ノ本国における陰陽師の式神や巫女の結界術などを習得している桜は、杖が無くても一緒に参加することはできる。しかし、ファンメル王国で杖も武器もないとなると、それはそれで心配されるというもの。その為、桜が参加をしていなくても咎められることはない。



「私も一緒に行きます。伐採をしている人の周囲に結界を張っておけば、より安全に活動できると思いますから。わざわざお願いして自分の杖の素材を得ようとしているのに、自分だけ安全なところにいるのは……ちょっと」


「そりゃそうか。自分の杖の素材だものね。いいんじゃない? それで桜も納得できて、ここの騎士も安全に活動できるんだから」



 クレアは話はまとまったと言わんばかりに手を叩いた。

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