表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第29巻 比翼連理の杖

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2247/2390

樹木選定Ⅷ

 まっすぐに天に伸びる樹木。相当な年数をかけて育ったように見える大樹だった。見上げた高さから大きく枝を広げ、巨大な日傘のようになっている。そんな木々が間隔をかなり開けて、二十数本植わっていた。



「これが、もしかして、さっき言っていた?」


「はい。私たちの勘からすると、これが最適かと」



 桜の呟きに騎士が自慢気に頷く。


 樹木に見とれていた桜は、何かに気付いたのか、急に目を何度も瞬かせる。



「さ、さっき、エボニーって言ってましたよね? もしかして、家具とかの素材で有名な……?」


「はい。希少性の高い樹木の一つです。硬く、腐りにくく、虫にも喰われにくい。長年使うのに適している特徴を持っています。ただ――」



 騎士が言い辛そうに口を噤む。


 その理由はクレアもわかっていたようで、すぐに口を開いた。



「重いのが難点、ですね? おまけにもう一つの樹木がローズウッドと聞きましたが、それもかなり重い部類に入ります。まぁ、短い杖なら問題は無さそうですけど」



 エボニーの別名は黒檀。同じ体積の水と同等か、それよりも重い。


 ただ、桜が今まで使っていた杖と同じ形態で作れば、そこまで重くはならないだろう。加えて、握る部分に重心が来れば、魔法を使う時もそこまで気にはならないはずだ。



「いえ、問題なのはそこではなく、加工の難しさなのです。ひたすらに硬く、かといってしなりもある。伐採するにも折るにも時間がかかって仕方ありません」



 重さよりも硬さが問題だと騎士は告げる。


 騎士がさらに樹木へと近付き、金属の手甲で叩く。すると、思っていたよりも重い音が響いた。



「このように見た目はただの木のように見えるのですが――――」



 騎士が灰色や褐色の混じった樹皮を軽く撫でる。土や苔がパラパラと落ちるのだが、唐突に騎士の拳がそこへ打ち込まれた。


 あまりにも突然の出来事に、勇輝たちは肩を跳ね上げてしまう。しかし、樹木の方はびくともせず、再び重厚な音が響いただけであった。



「と、かなり身体強化を使った上で拳を叩きこんでも樹皮が剥がれるかどうかというレベルです」


「えっと、じゃあ、これと相性がいいってなると……切るのにどれくらい時間がかかりますか?」



 桜は勇輝の背中から顔を覗かせて騎士に問う。


 騎士は天を見上げて、しばし考えこんだ後、きっぱりと言い切った。



「おそらく、実働時間で丸一日は必要かと」


「ま、丸一日っ!?」



 桜が目を丸くして、樹木を見上げる。


 夜に作業をするわけにはいかないので、どんなに早く作業をしても二日。さらに、休憩などのことも考えると三、四日はかかる可能性がある。



「あとは乾燥させて、いろいろとするだけでも加工するまでに数日。完成品が届く頃までのことを考えると、最短で二週間。長ければ二ヶ月とかもあり得ます」


「そうなると、冬休み明けの授業に間に合わない、かも?」



 肩も視線も落ち、大きなため息をつく桜。


 どう励ましたものかと勇輝がクレアへと視線を送るが、彼女は肩を竦めるだけだった。



「生木から杖を作るって、結構時間がかかるもんだからね。魔法で早めるにしても、一気に乾燥させれば木がダメになることもあるから、そこは素人のあたしにもできることはないよ」



 お手上げだと言わんばかりに首を横に振る。


 専門知識に関しては専門家が一番よくわかっている。そして、ここにいる騎士は、杖に関する知識の専門家でもある。杖が作られるまでの工程を熟知していないはずがない。



「ただ、我が主であるシルベスター伯爵より伺っているのは、魔術師ギルドのロジャー氏が簡単に作って見せると豪語していた、と」


「……期待していいのか、悪いのか。いや、今は考えるのはやめておくか。問題は桜が相性がいいか、だよな」



 勇輝は嫌な想像が膨らみそうになったが、寸前でそれを別の思考で上書きした。


 そんな勇輝の目の前で、騎士が魔法で葉を切り落とす。流石に硬いとはいえ、葉と枝の繋ぐ場所は魔法で十分切れるらしく、数枚の葉が舞い落ちて来た。その中から、比較的、欠けがない大きな葉を騎士は桜へと手渡す。



「じゃあ、やってみますね」


「三度目の正直とも言うし、これが当たりかもな」


「あはは、それは喜んでいいのかな?」



 勇輝の言葉に苦笑いを浮かべながら、桜が魔力を葉へと通す。すると、その葉が徐々にピンと張り、淡く白い輝きを放ち始めた。

【読者の皆様へのお願い】

・この作品が少しでも面白いと思った。

・続きが気になる!

・気に入った

 以上のような感想をもっていただけたら、

 後書きの下側にある〔☆☆☆☆☆〕を押して、評価をしていただけると作者が喜びます。

 また、ブックマークの登録をしていただけると、次回からは既読部分に自動的に栞が挿入されて読み進めやすくなります。

 今後とも、本作品をよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ