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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第29巻 比翼連理の杖

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樹木選定Ⅳ

 街の外壁を出て南へ数百メートル。街道から外れた場所ではあるものの、外壁から見える場所にある林の前に辿り着いた。



「こんな近いところに新種の魔物が?」


「えぇ、ここから先の林の中から唐突に姿を現すので、非常に危険です。いつ敵が襲って来てもいいように注意してください」



 騎士の忠告を聞いて、勇輝は心刀の鯉口をきり、クレアは剣を引き抜いた。


 杖こそないものの、桜はお札を数枚取り出しており、結界を張る準備は万端のようだ。その横では何も持っていないメリッサが佇んでいるが、彼女は暗器の使い手だ。どこからともなくナイフなどを取り出して対応できるので、桜の護衛にちょうどよいというクレアの判断である。



「それで、ここにあるのはどんな木なんですか?」



 かなり間隔のある木々の間を進みながら、桜が問いかける。すると、騎士は前を見たまま答えた。



「先程までの木は、二つの異なる木を合わせて作ったものでしたが、我々が目指しているのは『三つ』の木を合わせた物になります」


「さっきよりも一つ多いですね。その分だけ貴重なのでは? 何せ、『二つの物を一つにする』のが、シルベスター伯爵の受け継いだ魔法だと噂されていますから」



 クレアは木々の向こう側までを目で細めて警戒をする。その傍らで騎士へと語り掛けた。


 前提条件を上回る結果で生まれた新種の樹木。その価値は間違いなく、他よりも上に違いない。しかし、騎士は首を左右に振った。



「その内の二本の木はエボニーとローズウッド。最初はこの二本で作られた新種だったのですが、ある時に誤って別の木を加えてしまったのです。本来ならば、三本目は特殊な方法を取らない限り合わさることがありません。しかし――」



 どういう訳か、それができてしまった。


 三本目に加えられたのは桐の木。種族も異なるのに、という疑問が伯爵たちの間で生まれたものの、未だにその解決は出来ていないという。その為、研究の為にそのまま残しているらしいのだが、騎士はその樹木こそ桜と相性がいいのではないかと提案した。



「エボニーの特徴は先程の杉と同じく、魔力の通りがいいことで有名です。同じ魔力の通りやすさでもタイプが違うと言われるので、こちらならば合う可能性があります。また、ローズウッドも同様の特徴を持ちます。加えて、この二つは運がいいと特殊な魔法が使えるようになると言われていますね」


「特殊な魔法、ですか?」



 勇輝が興味深げに周囲の木々を見渡す。魔眼には緑色の光を放っているだけにしか見えない。あえていうならば、少しばかりその光量が多く見えるかどうかと言ったところだろう。



「我々もそれを見たことはほとんどありません。聞くところによると、火球の魔法を放ったつもりなのに、その爆発の威力がいつもより大きかったとか。場合によっては、そもそも発動する魔法が意図しないものになったとか。真偽のほどは定かではありませんが、木目などが偶然、魔法陣のような働きをするのではないかと推測されています。この種にはそれが多いのかと」



 綺麗な円を描くだけで結界にできる。それを考えれば、自然にできた木目が何かしらの魔法作用を生む模様になるということも不思議ではない。尤も、土壇場になって発動しようとした魔法が不発に終わったり、別の物に変化したりした場合、命に関わる。あらかじめ、そうなることがわかっているのならば、避けたい気持ちも生まれてくる。



「最初の二つで杖を作ると少し重いのが難点なのですが、そこに軽い桐の木が加わったことで、それも解消されています。加えて、日ノ本国では神に納める舞を踊る際に、その木でお面を作るとか。光属性の魔法や日ノ本国の術式にも親和性があるかもしれません」


「そこら辺は桜にもメリットが合いそうだよな。まぁ、杖を使う日ノ本国の術があるのかは知らないけど」



 勇輝の言葉に桜は戸惑いながらも顔を頷かせる。



「実際に使ってみた感じかな。神道系なのか仏教系なのか。それとも陰陽道系か。良くも悪くも日ノ本国の術式は種類が多いから、すぐには把握できないかも。ただ、あの騎士さんが言っていたのは神楽のことだと思うから、きっと神道系。多分、私の結界術とか陰陽術に応用は出来そう」



 期待半分、不安半分と言った様子で、桜は林の奥を見据えた。

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