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樹木選定Ⅱ

 桜自身が纏う光は赤と白が入り混じっている為、全体的に彼女の名前と同じ桜のような淡いピンク色に見える。


 それが指先から葉へと流れると、揺れていた葉が動かなくなる。まるで金属のように固まったそれは、仄かに放っていた緑の光を増大させていた。



「……桜。どんな感じ?」



 クレアが問いかけると、桜は眉を顰めて振り返った。



「確かに魔力の通りは良いと思う。でも、何ていうか……抵抗を感じるかな。押し返されるような……」


「ふむ、それはあまり良くありませんね。基本的に、杖に使う場合は通り抜けていくような感覚が良いとされておりますので」



 騎士は小さくため息をつくと、辺りを見回した。



「前に使っていた杖の素材をお聞きしても?」


「はい。杉の杖を使っていました」


「あぁ、杉ですか。オーソドックスですね。魔力が通りやすく、癖がない。木材自体も長寿で、持続系の魔法にも相性がいい。初めて買う杖としては最適でしょう」



 杉はまっすぐに早く育つため、その分、杖にした際もその名残で魔力が通りやすくなっている。騎士の言う通り、誰にでも使いやすい反面、どうしても個人に合わせた物と考えると難しいものがある。いわゆる量産品の類には限界があるということだ。


 その点を鑑みると、やはり、桜の実力は初心者という枠を大きく外れていることになる。



「では、他の木の組み合わせを考えて見ましょうか。日ノ本国でもよく見る木の組み合わせだと……杉と檜か」



 騎士が振り返った方向には、一際大きな木が見えた。最低でも二十メートルはありそうな針葉樹が数十本。青々とした葉が生い茂り、風に揺れている。



「さっき言っていた杉が混じっていますけど、良いんですか?」


「問題ありません。何せ、杉の木の特徴に檜の特徴を併せ持った形になります。檜は杉と同じく持続系の魔法に強いです。火の柱を出現させ続けたり、岩の槍を維持し続けることに向いていると言われていますね」


「じゃあ、岩の槍とか石礫に魔力を籠め続けるのが得意な桜には、ちょうどいいってことか。説明ありがとうございます」


「いえ、これを機に、我が領地の素材に興味を持っていただける人が増えれば幸いです。ぜひ、日ノ本国に興味がある方がいたら紹介をお願いします。何分、興味を持っていただけているのは一部の錬金術師の方のみなので」



 騎士が苦笑しながら、歩き始める。そんな彼にメリッサが声を掛けた。


 シルベスター伯爵は、そこまで金に困っているはずではないので、領地の樹木が売れなくても問題は無いだろう、と。


 メリッサの問いかけに、騎士は軽く首を振った。



「お嬢さん。金というものは幾らあっても困りはしません。それは私腹を肥やすという意味ではなく、領民をより豊かにするには、という意味でです。これらの樹木の管理は領民を徴収して行っています。そして、我らが主は、この樹木が売れた分の金額をそのまま徴収した領民に分配するようにしているのです」


「なるほど、それは苦労されているのですね」



 買い手がいなければ、ただの赤字。その赤字は伯爵が補っているのだろうが、それではいつまでたっても領民の手には最低限の給料しか入らない。


 材木だけの出荷であれば、最先端の素材であってもコピーして増やすことは不可能。よって、多少は国外であっても売れた方が領民の為にはなる。恐らく、騎士たちが売り出すということを前提に話をしているということは、伯爵も承知だろう。もっと言えば、国王まで話が通ている可能性が高い。



「さて、ここだと流石に取りに行くのは大変ですね。ここは少し魔法を――」



 そう告げると、騎士は剣を真上に掲げて風の魔法を詠唱し始めた。


 魔力を纏った風が枝を切り裂き、数秒遅れて枝の先が落ちて来る。それを剣を仕舞ってから悠々と片手で掴んだ騎士は、それを桜に差し出した。

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