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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第29巻 比翼連理の杖

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素材を求めてⅤ

 窓の外の風景は、どこまでも緑の続く山や平原だったが、次第に見たことも無い花を咲かせる木が見え始める。



「……冬に花って咲くっけ?」


「椿とか一部の花は冬でも咲くよ。でも、あんな花は見たことがないかも。この国特有の花ですか?」



 桜は首を傾げながらメリッサへと問いかけると、彼女は目を細めた後、首を横に振った。



「いえ、見たことないですね。もしかすると、あれがシルベスター伯爵の育てている新種の樹木かもしれません」



 流れゆく景色の中で、赤や白、黄などの色とりどりの花が咲き乱れている。


 勇輝に品種改良の知識は少ないが、それでも一つの新種の植物を想った通りに生み出すことは不可能だ。作り出したとしても違いがそれほどなかったり、種として弱かったりなど様々な問題が出て来る。それを花という存在だけで、こうも見せつけられるとは思っていなかった。



「シルベスター伯爵は、代々トーマス家で受け継いでいる魔法を使うことで、品種改良を行うことを思いついたらしい。それを始めたのが、『ここ数年のこと』なんだから、すごいって言葉じゃあ言い表せないよ。『金』と『緑』の二つの色彩称号を得たのも伊達じゃない」



 クレアは通り過ぎていく樹木を見ながら、それらに尊敬の籠った眼差しを送る。



「色彩称号?」


「うん、国王様が魔法や技術を極めたり、類を見ない功績やそれに匹敵することを成したと思われる者に送る称号のこと。例えば、あたしの母親の場合は『紅』が贈られているけど、言わなくても理由は想像がつくだろ?」



 勇輝も桜も即座に頷く。


 ローレンス伯爵夫人のビクトリアは、火属性魔法を得意とする。その威力は一国の軍の部隊を一瞬で焼き尽くすことができるほど。そのあまりにも苛烈な火の魔法の数々に紅の称号が贈られるのは当然と言える。



「金は硬貨の偽造防止などの技術で、緑は新種の植物を生み出し続けた功績に対するものだとか。ちなみに、どちらも同じ魔法の応用らしい」


「やっぱり、二つの色彩称号っていうのは珍しいんですか?」


「そうだね。過去に二つの色彩称号の保有者は、片手で数える程度だったはず。後は母さんみたいに、『赤』から『紅』に変わったという珍しいパターンもある。赤よりも濃いから、上位の色彩称号って言われるようになったとか」



 現役の宮廷魔術師の中に、数人は色彩称号を持つ者がいるという。


 国の組織の上位に君臨するだけあって、その実力に偽りなしということなのだろう。改めて、宮廷魔術師になる者が恐ろしいと感じる勇輝。その横で、桜も感嘆の声を漏らしていた。



「でも、この木たちって、街中にあるわけでもないのに、よく盗まれないな」


「勇輝様。確か、先日の騒ぎで金貨を溶かして対応したと言ってましたね? それを伯爵がすぐに気付いて確認しに来たと思いますが、それはこれらの樹木も一緒です。何かあれば、すぐに伯爵は気付きますし、樹木の周りには恐らくですが、盗賊対策に魔法がいくつも仕掛けられているでしょう。後、私たちには見えない場所で目を光らせている者もいるはずです」


「どこの暗殺者ですか……」



 メリッサ自身が暗器使いだ。もしかすると暗殺者とまではいかなくても、彼女のようにメイドの姿で戦える者もいるのかもしれない。或いは、本当に暗殺者がどこからか見張っているのかもしれない。そして、そのような者を雇っているとなると、待ち構えている伯爵夫人もビクトリアのような傑物の可能性が高い。


 ますます、クレアとメリッサにおんぶにだっこ――全て一任するしかできない。



「えっと、到着したら、いろいろとお願いします」


「うむ、勇輝よ。任されたから、返ったらケーキをあたしたちに奢るように」


「ははーっ!」


 クレアのわざとらしい演技に勇輝も付き合って頭を下げる。満足気に頷くクレアの横で、メリッサが冷ややかな視線を投げかけていた。

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