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素材を求めてⅢ

 杖が折れたのは数日前。購入した店でも相性のいい杖が見つからず、途方に暮れていた桜だった。杖に関しては門外漢な勇輝は掛ける言葉が見つからず、桜に付き添っていた。


 そんな時、冒険者ギルドに呼び出されていた勇輝は、桜と共にギルドを訪れる。そこで待っていたのは、桜が尊敬している錬金術師ロジャーだった。彼の目的は勇輝の着ていた試作型コートの改良だったのだが、それが遂に完成したという。



「――何? 杖の専門店でも相性が合わなかったと?」


「はい。残念ながら杖が軋んで、すぐにダメになるだろうって……。お店の人も何時間も粘ってくれたんですけど、どの素材もダメだったんです」



 藁にもすがる思いで相談した桜にロジャーは腕組みをして、大きく唸った。


 そんなロジャーの姿に勇輝も桜も、彼ならば何か解決策を思い浮かぶのではないかという期待の眼差しを向けた。何せ魔術師ギルドの副会長にして発明家――ただし、役に立つ物ばかりとは限らない――である。当然、錬金術において大切な素材という観点においては、右に出る者はそうそういないだろう。



「そういえば、シルベスターの奴がお主のことを面白い奴だと話していたな。あの領地には珍しい木がたくさん生産されている。わざわざ他の国から取り寄せた木もあれば、品種改良――いや、そんな生易しい物じゃない。あれは魔改造というべきか。いずれにしても多種多様な木がある。それを確かめて、良いのがあれば譲ってもらうのはどうだろうか?」


「……それ、色々とハードルが高過ぎやしませんか?」



 勇輝はロジャーの提案に突っ込む。


 シルベスター伯爵は、現宮廷魔術師の一人で貨幣に関する役目を負う調査官でもある。偽造した貨幣や硬貨を傷つける行為を摘発するのが主な役目であり、勇輝が王都を守る為にやむなく金貨を溶かしたことを察知して現れた。幸い、罪に問われることはなく、逆に気に入られてしまったことに勇輝は今でも夢なのではないかと思っているくらいだ。



「連絡くらいならいくらでも取れる。過去に何度か研究のサンプルとして、もらったこともあるからな。まぁ、アレだ。そこらの杖よりは高くなるが、それだけの価値はあると思うぞ」


「ち、因みに、どれくらいになりますか?」


「シルベスターの言い値と加工料を考えると――場合によっては大金貨が必要になるかもしれんな」


「だ、大金貨!?」



 大金貨一枚の価値は、日本円にして百万円ほどする。あまりにも大きな値段に目を丸くする桜の横で、同じように驚きそうになった勇輝だが、頭の中に金属質な声が響き渡った。



『おい、俺も実質は同じくらいの値段だからな? 何を驚いてるんだよ』

(そ、そうか。悪い、何か金銭感覚が麻痺してて、変なところで驚いちゃうんだよな)



 勇輝の持つ心刀は、日ノ本国で作られたある意味で妖刀の類だ。意志を持つ刀にして、持ち主を鍛える為に幻覚を見せたり、固有の魔法に似た現象を引き起こしたりできる。そんな心刀も勇輝が運良く稼ぐことができた金で購入したものだった。



「さ、流石に大金貨は払うのが難しいかと……」


「そこで一つ提案があるんじゃが、どうかな?」



 ロジャーが満面の笑みで桜へと微笑む。それを見た瞬間、勇輝は唐突に嫌な予感がした。それはもう頭どころではなく全身のあらゆる所から、謎の警報が鳴り響いていた。



「私と知り合いの杖職人で、それを加工させてもらいたい。杖の素材の代金は私たちが持つし、加工料も最低限の物で構わない。金貨一枚程度はどうだろうか?」


「そ、それくらいなら、臨時で入った依頼の収入で払えそうですけど……本当に良いんですか?」



 桜は戸惑いながらも、かなり乗り気な様子だ。ロジャーがフランを助ける為に力を貸してくれたり、勇輝のコートの制作者であったりすることから何とか信頼できるが、それが無ければ真っ先に詐欺を疑うだろう。


 正確には、それを踏まえた上でも勇輝は何か裏があるのではないかと冷ややかな視線をロジャーに向けていた。

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