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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第28巻 愚者の斧と見掛け倒しの斧

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後処理Ⅵ

 伯爵の釈明に納得した勇輝は、少し間を開けて問いかける。


「では、確認ですが、硬貨を傷つけた罪は誰にもないということでよいのですか?」

「あぁ、宮廷魔術師にして貨幣保安担当の私が、やむなくした行為故に無実であると認めよう。陛下も確実に認めてくださるだろう」


 伯爵の宣言に、やっと勇輝は肩に入った力が抜ける。自分が無実だと信じていたとしても、やった行為自体は違法。正直、どのように判断が下るかは賭けに近いところがあった。十中八九、ファンメル三世ならば無実であると言ってくれると信じていたとはいえ、目の前の伯爵に否と言い張られたらどうなるかわからない。

 勇輝は大きく息を吐いて、目の前の机に突っ伏した。


「ははは、虚勢を張るとは少しばかり違うだろうが、良い胆力だ。死線を何度か潜った者にしかない目をしていたぞ。君の名は何という?」

「日ノ本国の出身で、名を勇輝と言います」

「覚えておこう。何かあったら、場合によっては力になってやってもいい」


 伯爵の言葉に勇輝は耳を疑った。

 いくら上から三番目の爵位とはいえ、宮廷魔術師の地位にいる人物だ。国に認められたトップクラスの魔術師自ら繋がりを持とうとしてくるとは思ってもみなかった。唖然とした表情で見ていると、伯爵は口の端を持ち上げる。


「何。ちょっとした興味本位だ。さっきも言ったように君からは嫌な感覚がしない。私の魔法は普段、偽硬貨を見つけ出すことに使っているのだが、触れた存在の『何か』を感じ取ることができる。その点において、君は――面白そうだと思ったのでな」

「それは……エドワードさん的な意味で?」


 興味があるものを研究せずにはいられなさそうな宮廷錬金術師エドワード・モルガン。彼は真祖の吸血鬼として魔力不足に陥っていたフランを研究、もとい治療しようとしていたことがあった。世間一般での評価は、いわゆるマッドサイエンティストなもので、黒い噂が絶えない。


「あぁ、アレはアレで真面目に研究をしている男だ。その点、私と彼は同じと言えるだろう。違うのは見た目とやり方が特殊過ぎて、周囲が彼の理解をしづらいのは否定しないがね。魔法学園のモットーを知っているかね? 『探求心こそが人を育てる』だ。皆、魔法使いという生き物は不思議に思ったことがあるなら調べたいと思う研究者だからな。それが己の専攻に少しでも触れたのならば、当然の反応だろう?」

「宮廷魔術師に登り詰めるだけあって、研究熱心ですね」

「そんなことはない。家伝の魔法が無ければ、私なんぞ、地方の領地経営で手いっぱいだっただろうよ。私よりも優れた者はたくさんいた」


 自嘲気味に笑った伯爵は、そのまま元来た扉へと戻って行く。ちょうど入れ替わりにメルクの登録を調べに行った冒険者ギルドの職員が入って来た。


「い、今のシルベスター伯爵では? まさか、硬貨損壊の件を調べに?」

「そのことについては、既に問題ないと判断されたよ。それより、メルクと名乗る男の登録は?」

「一応、登録はされていました。偽造した形跡もありません。ただ――――」

「ただ?」


 言い淀む姿に魔術師ギルドの職員が訝しむ。それもそうだろう。正規の手順で登録されていて、偽造もされていないのならば何も問題は無い。いったいどこに不安要素があるというのか。


「その、依頼の受諾履歴が一切ないんです。登録してから今日まで、数年間で一度も」


 それはおかしい、と勇輝は訝しむ。

 ギルドに登録するのは依頼を受ける為だ。それなのに、数年間を何もせずにいたのは疑問が残る。


「魔術師ギルドへの論文査定の依頼は?」

「そちらもです。そもそも依頼を申し込んだのも、今回が初めてのようで……」

「おかしいな。彼らの話を聞く限り成人している容姿だったと聞く。何も依頼を受けず、申請もせずなどということは少しばかりおかしいぞ」


 双方の職員たちが唸り声を上げる中、勇輝の隣で寝ていた桜が小さく呻いた後、目を開いた。

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