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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第28巻 愚者の斧と見掛け倒しの斧

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後処理Ⅰ

 生きた銀は動力源となる起点を撃ち抜かれ、完全に沈黙。その場で浮遊したままオブジェのように固まっていた。

 その横を重力に引かれて勇輝の体が落下していく。


「危ないっ!」


 桜が叫ぶと同時に、その横にソフィの手が差し出される。同時に水路から水が吹き上がり、勇輝の体を受け止めた。

 気泡で白くなった水の球が、すぐにメインストリートへと運び込まれる。即座にソフィの魔力が抜かれて水の球が形を失うと、勇輝が咽ながら上半身を起こした。


「お前、もしかして最大解放したのかよ。前にそれで痛い目見たんだからやめとけって。というか、あたしの声聞こえてるか?」

「――――あぁ、何とかな。体を鍛えたり、身体強化に慣れたりしたおかげで、そこまで酷いことにはならない。まぁ、それでも数秒程度には時間が引き延ばされるけどな」

「いや、それは十分にアウトな部類だろ。でも、こうして会話ができるってことは、副作用は続いてないっぽいな?」

「そんなに長い時間戦ってないし、魔力消費も多くない。自分で立ち上がれる程度にはなってる」


 そう告げた勇輝は立ち上がる。だが、まだ感覚が完全に戻っていないせいで、水路の柵へとよろめいた。


「勇輝さん。無茶しないで!」


 そんな勇輝の体を桜が抱きかかえる。


「だ、大丈夫だって。ほら、こうして――」


 桜に無事をアピールしようとして、勇輝は一瞬視界が歪んだ。乱視のように二重三重に桜の輪郭が分かれ、重なる。そして、再び意識が遠のく感覚に襲われた。

 すぐに勇輝は魔眼を閉じると、そこにはいつも通りの――怒ってはいるが――桜が見えた。睡魔に襲われたような感覚も消え、体のふらつきも治まっている。


「勇輝さん? やっぱり大丈夫じゃないんじゃ……」

「い、いや、そんなことはないぞ。体も動くし、声も聞こえて返事ができる。何も問題はない、はず!」


 勇輝は右手を動かしてアピールするが、疑いの籠った桜の視線は注がれたままだ。どうしたものかと悩ませているところに、ソフィの声が響く。


「いけません! 水銀が落ちてきます!」

「なっ!?」


 天を仰ぎ見ると生きた銀としての機能を失った水銀が、徐々に高度を落とし始めていた。

 そればかりではない。勇輝を斬ろうと繰り出した長い剣状の部分はたわみ、いつ折れてもおかしくない状態だ。


「おい、アレって、元々はあんたの物だろ!? こう……パパッと回収できないのかよ!?」

「生きた銀の操作は魔法に頼りきりでしたからね。もう一度、魔法を撃ち込んで起点を作ってもいいですが、再びその支配権が私から奪い取られる可能性が――――」


 マリーの怒りの籠った要請に、メルクは淡々と意見を述べる。そうしている間にも水銀は高度を落とし、水銀が水路やメインストリートへとぶちまけられそうになっていた。

 大量の水銀が水路に流れ込めば、街の外の畑や自然に悪影響を及ぼす。何としてでもここで一滴残らず回収をしなければいけない。しかし、回収しようにもそれを行う術が勇輝には思い浮かばなかった。


(ガンドで全部――――いや、消し飛ばすなんて弾数も、威力調整も無理だ。仮にできたとして、原子ごと消滅させているわけじゃない)


 さきほどの一撃は、あくまで液体状の中に潜んでいた起点となる結晶部分の結合をバラバラにしただけ。勇輝がガンドをいくら放とうとも、水銀という物質を消すことはできない。


「私が、何とかする!」


 その時、桜が自身の杖を水銀へと向ける。直後、崩れかけていた水銀がわずかに震えた。


「もしかして、魔力で無理矢理水銀を操ろうとしてる、のか?」

「そんな。岩の数倍は重い水銀を魔力操作で動かすなんて無茶です。重いだけでなく、液体でもあるんですよ? それに溜め込んでいた魔力は健在。桜さんでも精々、落ちてくる時間を数秒遅らせるのが限界です!」


 ソフィの悲痛な叫びが響く。今は早くその場を離れろと、その目が訴えていた。

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