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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第28巻 愚者の斧と見掛け倒しの斧

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完全破壊Ⅷ

 金色の光が集まっていない一点。それが停止命令を受け付けていない生きた銀を動かす中枢部分。その大きさは小指の先ほどしかなく、ちょうど球体の中心に位置していた。

 魔眼に映った銀の一閃。勇輝の首を薙ぐ軌道で煌めくそれは、一秒後に現実となる。


「やられるかよ!」


 スライディングしながらその軌道の下に潜り込み、ガンドを放つ。

 風切り音を伴って生きた銀の一撃が真上を通り過ぎるのと、ガンドが着弾するのはほぼ同時だった。しかし、勇輝はその結果を見て舌打ちする。


「攻撃の最中でも、しっかりと避けるか。やっぱり、あの手で行くしかないな」


 もしかしたら、攻撃動作中は防御や回避行動が遅れるかと期待したのだが、勇輝のガンドは当たる寸前で生きた銀が自ら飛び散って回避した。どういう仕組みかは不明だが、生きた銀はガンドが他の魔法とは違うことを理解しているらしい。


『もたもたしてると、次の攻撃が来るぞ! さっさと行け!』


 心刀が急かすが、勇輝は自慢の身体強化で屋上から生きた銀へと接近を――しなかった。

 屋上の縁を足の裏で踏んで急停止すると、方向転換して走り出す。


「まだだ。今の俺じゃあ、タイミングが完全に測れない。()()()()と体が動くギリギリの境を狙わないとっ!」


 隣の建物に飛び移ったと同時に、再び銀色の斬撃が勇輝の背後から迫る。太ももの辺りを狙ったそれを、勇輝は体を捻りながら飛んで躱す。


「近過ぎたらタイミングを外してアウト。遠すぎても迎撃されてアウト。そのちょうどいい位置から、奇襲の一手を放つ必要がある」


 振り返って、勇輝はガンドを放つ。ちょうど勇輝に奮おうとしていたであろう三度目の銀の刃が根元から吹き飛んだ。銀の巨大な剣が空中から落ち、途中で動きを止めたかと思うと球体に吸い寄せられていく。

 そこにガンドを放っても、この距離では拡散して避けられてしまう。そんな中、勇輝は自身の視界が歪むのを感じ取った。


「――来た!」


 勇輝は絶好のチャンスの到来に、思わず唾を飲み込む。

 魔力制御・最大解放の副作用。それは身体強化によって強化され過ぎてしまい、周囲の流れる時間が遅く感じること。一秒が十秒にも感じられるような感覚に、体を動かすことすら上手くできなくなってしまう。しかし、勇輝が待ち望んでいたのは、この瞬間だった。


「行けっ!」


 まだ体が思うように動く内に、心刀を生きた銀に向かって投げつける。ゆっくりと回転しながら飛んでいく心刀。その軌道は生きた銀に近付きはするものの、数メートル横を通り過ぎようとしていた。その証拠に生きた銀はまったく反応をせず、勇輝へとさらに斬撃を放とうと体を変形させていく。

 勇輝は迫りくるであろう斬撃の方向へと右手の人差し指を向ける。


「今、だっ!」

『はいよっ!』


 勇輝の絞り出した声に心刀が応えた瞬間――


「――っ!」


 勇輝の体は空中に投げ出されていた。否、()()()()()()()()()()

 勇輝の心刀の能力は、鞘の中に刀が転移して戻るものだが、それとは似て非なるものがある。それが心刀がある場所に鞘が転移するというもの。そして、転移するのは鞘だけでなく、それに触れている者も含まれる。

 勇輝の右手の指先が指し示すのは、生きた銀の伸ばした剣状の体ではない。ずっと勇輝が魔眼で観察し続けていた金色の光が見えない「ただ一点」のみ。


 ――ゴッ!


 速度を優先。躱す暇など与えない超々近距離からの接射。いかに素早く飛び散って躱す生きた銀といえども、この二つの条件で放たれるガンドを前に抵抗をする素振りすらなく、撃ち抜かれる。

 いくら魔力を控えめにしたとはいえ、わずかな魔力で魔法学園の結界を破壊し、全力で撃てば魔法を無効化するミスリルすら穿つガンドだ。勇輝が狙った一点とその周囲十数センチを丸ごと貫通し、下方の水路で水飛沫を上げる。


「よし、これで――――」


 大丈夫、と思った矢先に意識が遠のく。

 さらに時間の流れが遅くなると思っていた勇輝だったが、初めての症状に心臓が大きく跳ねた。

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