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完全破壊Ⅴ

 冒険者ギルドの中では職員たちが右往左往しているが、この事態に対応できる人員がいなかったのだろう。どこかに連絡を取ろうとしている様子はあるが、自ら杖を持って表に出ようとする者はいなかった。

 奥の方でドアを叩いて中にいる誰かを呼んでいる場面も目撃したが、中から人が出てくる様子はない。

 勇輝は他に協力を得られそうな人はいないと見て、併設されている店へと走り込むと錬金術師用の耐熱皿を購入する。カウンターで自身の預けてあった金貨を数枚引き出し、弓を使っていた冒険者とその仲間を路地まで誘導することにした。


「とりあえず、俺の合図で行きましょう」

「いつでも大丈夫だ。ダメだったら、こいつが火球程度は防いでくれる」


 弓使いが親指で背後の仲間を指差す。勇輝はそれを見て一瞬戸惑うが、止めても勝手に動き出すと考え、外の様子を窺った。

 ちょうど、フランの魔法が炸裂し、生きた銀の火球が爆発を起こしたところだった。即座に勇輝は合図を送って外に出る。メインストリートにそのまま出ず、出入口脇の手すりを跳び越えてショートカット。五秒もかからずに路地へと辿り着く。

 後ろを振り返れば、数歩遅れて三人の冒険者がなだれ込んで来た。


「あの嬢ちゃん、何者だ? さっきから、初級の魔法とはいえ、ずっと撃ち続けてるじゃないか」

「そういうのが得意な子なんです。あの子がいなかったら、この辺りが火の海になっていたかもしれませんね」

「そりゃ、ありがたい。それで? 作戦に必要な金とやらは?」


 メルクの方に案内しながら勇輝は彼に耐熱皿と引き出した金貨を手渡した。メルクは表情一つ変えずに金貨を受け取るが、そこで驚愕の声を上げたのが弓使いの男だった。


「おいおいおい、まさか金貨を溶かして使う気か? 止めとけよ。お前が一人で大金を払う必要はねえ。それに金貨に手を加えるのは法律で禁止されてる。最悪、死刑だぞ?」

「ですけど、ここで金貨数枚を無駄にすることで多くの人の命と街を救えるのなら安くないですか? それに国王様は、そんなに狭量じゃないはずです」

「確かにそうだが、硬貨関係は専門の宮廷魔術師の管轄だ。国王様といえども口出しできない領分ってもんがある。それでも自分の命を危険に晒してやるっていうのか?」


 本気で勇輝の心配をする弓使いだが、勇輝の振り返った顔を見るなり苦虫を噛み潰した表情になる。

 おもむろに腰につけたポーチを漁ると金貨を一枚取り出して、メルクの手の中にあった勇輝の金貨一枚と交換した。


「異国の若い奴にそこまで言われたら、こっちもこれくらいの覚悟はしないとな。これで同じ船に乗った者同士だ。――ヘマするなよ?」

「覚悟はできたみたいだね。今から金貨を溶かすから、それを鏃につけて当てるだけだ」


 メルクは耐熱皿を杖から火を出して過熱し、その中に金貨を一枚放り込む。その火力はすさまじく、火の色は黄色味がかっており、離れていても火傷をするのではないかというほどの熱気を感じた。


「おいおい、あんたも何者だ? 耐熱皿に魔力で強化して、その上から高温の炎で加熱するなんて……」

「へぇ、私がやってることがわかるのかい?」

「親父が錬金術を得意としててな。炎の色で温度が大体わかる。その色だと普通は皿が割れちまうからな」

「よく観察をしている。だけど、今はそんな暇はない。一分、一秒でも早く金貨を溶かしてアレに撃ち込まなければいけないんだから」


 既に術式は練り込んだ、とメルクは告げた上で金貨をさらに投入していく。三枚を超えたところでやっと鏃が浸かるくらいの深さにまで溶けた金が溜まった。

 そんな耐熱皿のすぐ横に水の球が浮く。


「君、その鏃をここに浸けたら、ゆっくりと引き上げてくれ。そうしたら、彼女の水球で冷やして固めれば大丈夫だ。後はその弓の腕にかかっている」


 既に話を付けていたのか。そこにはソフィが杖を構えて待っていた。

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