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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第5巻 暗黒の淵にて、明星を待つ

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ウンディーネ救出作戦Ⅷ

 作戦を聞いた五人の中で真っ先に声を上げたのはマリーだった。


「へー面白そうじゃん。それに()()()()()()()()()()()()()()()、っていうのも良いね」

「僕にできることは、いや待て、ユーキ。これを使えばもっとうまくいくんじゃないか」


 渋い顔で呟いていたフェイは何かに目をつけると、自分の革袋から再び何かを取り出してユーキへと見せる。それを見たユーキもフェイの考えていることを理解し、すぐに頷いた。


「じゃあ、それを俺とフェイでやろう。偶然だけど、やることのない二人が前衛にちょうど揃ってるからな」

「何か、君に役立たずと言われているようで腹が立つけど……いや、事実だからしょうがないな」

「おいおい、そこまで言ってないだろう。でも力負けするのは明らかだし、()()()()()()()()()があればいいけど……」


 そう言って勇輝は周囲を見回すが、床にも壁にも使えそうなものは見当たらない。


「それならあたしができるぜ。最後の一発の前に、中級魔法の一つや二つなんて楽勝さ」

「まぁ、マリーが言うならいいかな。最近は()()()()()()()()みたいだし」

「そうか。じゃあ、それが無理だったときは気合で頑張るってことで。最悪、ガンドも一発くらいなら撃てそうだしな」


 何故かユーキを目の敵にするフェイを不思議に思いながらも、残ったサクラとアイリスへ視線を向ける。

 サクラの方は頭の中でイメージをしているのか、目を瞑ったまま何かを呟いている。対して、アイリスの方はいつも通りの表情で緊張した様子が見られない。


「二人とも行けそうか?」

「多分……大丈夫だと思う」

「うん。いける、よ」


 その返事と同時にゴーレムの再生が終わりを告げる。地響きのような音を立ててゴーレムが振り向くと、最初と同じような布陣でユーキたちは待ち構えていた。ゴーレムは既に最初の攻防で脅威とみなしているのか、今度は歩きではなく最初から走り始める。


「僕の声に合わせろよ。でないとペシャンコにされるからな」

「わかったよ。そちこそ、タイミング見誤るなよ」


 前衛の二人は武器を持たずに互いに近い方の手に()()()を持つと一気に走り出す。その瞬間に、背後から三者三様の詠唱が響き渡る。


「『集いて、薙ぎ払え。汝、何者も寄せ付けぬ一条の奔流なり』」


 まず最初に完成したのは呪文の短いアイリスだった。水の初級汎用呪文の言葉通り、一条の奔流がゴーレムめがけて飛んでいくが、下半身を濡らすだけで砕くどころか押し返すこともできず、ほとんど時間稼ぎにはならなかった。

 しかし、アイリスの表情には余裕がある。その顔のままユーキとフェイが走っていく姿を見つめた。

 その一方でゴーレムはただひたすら腕を振って前へと進んでいく。向かってくるユーキとフェイは眼中になく、その目標は自身の体打ち砕いた少女たちの方へと向けられていた。その脅威度は間違っていないが、今回ばかりはその優先順位が仇となる。


「三、二、一……右っ!!」


 ゴーレムの足元を見て、小さくカウントダウンをしていたフェイが大きな声で掛け声を上げる。ユーキは言われた通りに身体強化の許す限りの速さで、今まさに地面へと降りようとしているゴーレムの左足へと飛び込んだ。


「『地に眠る鼓動を以て、その意を示せ。すべてを穿つ、()()の墓標よ』」


 その瞬間、今度はマリーの地の中級汎用アレンジ呪文が完成する。本来ならば巨大な岩の槍が突き出すが、一メートル強の岩の槍が二本、ゴーレムの左足の両脇へと出現する。巨大な槍ならば二本も一度に作るほどの魔力を回すことはできなかったが、呪文をアレンジし規模を小さくすることで可能とした妙技だ。

 そのまま、ユーキとフェイはそこに駆け寄ると大きく腕を回し、その槍の穂先へと輪を作った()()()を投げ入れる。遅れてふわりと浮き上がったロープがゴーレムの足首へと吸い込まれていった。


「ナイス。タイミン、グ!」


 アイリスが向け続けていた杖を一気に引き下ろすとゴーレムへと纏わりついていた水が一気に右足の裏へと集中する。更に一瞬でその水が凍り付いた。空中に浮いていた右足が地面に着くと同時に、わずかにその足がずるりと不安定な挙動を見せる。

 対してマリーはゴーレムの左足が一度後方へ浮き上がった瞬間に、杖を斜め上へと跳ね上げる。ロープのかかった二本の槍は供給された魔力に従い急成長を果たし、その足を追いかけてさらに距離を伸ばす。

 ゴーレムは左足を引っ掛けられ、右足を水で滑らせて前のめりにバランスを崩す。そこにサクラの十八番の魔法が炸裂する。イメージと魔力を練り上げるために閉じていた目が開かれ、素早く杖が下から上に振り上げられる。


「『地に眠る鼓動を以て、その意を示せ。すべてを()()、巨石の墓標よ』」


 地面が鳴動し、その巨大な槍が倒れるゴーレムの胸めがけて突き出されようとするとき、もう一つ詠唱が重なった。


「『地に眠る鼓動を以て、その意を示せ。すべてを貫く、巨石の墓標よ』」


 同種の魔法をマリーが杖を()()()詠唱する。そのまま、その杖は刀に着いた血でも落とすかのように()()()()()()()()()()()


 ゴーレムがゆっくりと両手を上げて倒れ行く。そのやや後ろの天井を引き裂いて、もう一本の岩の槍が姿を現した。ロープをかけて離脱したユーキとフェイはそのまま後ろへと走り抜け、その様子を見守る。


「いっけえええええ!」


 自分の役目を終えて、何もすることがなくなってしまったユーキはその応援の叫び声を上げて、後押しをする。言葉というのは不思議なもので、たったその声一つで魔法を使う者の心を奮わせることができる。

 挟み撃ちになる格好でゴーレムは、巨大な質量攻撃を前後から受ける。叩く落とすといった衝撃に対する防御面だけで言うならば、むしろダイヤモンドすら凌ぐサファイアとはいえ、一点集中型で力を突きこまれれば耐えることは難しい。そのまま、胸に吸い込まれた一撃の直後に、追撃の一撃が背面から襲い掛かる。

 前後から挟まれ逃げ場のなくなった力に押しつぶされ、ゴーレムの胴が粉々に砕け散った。そのまま胸部の核へと槍は突き進み、そのまま穿つ。肩から上が地面へと落ちたゴーレムは、その魔法を繰り出した少女たちへと腕を伸ばす。しかし、その手が届くことはなく、僅かに指先を痙攣させた後に斃れ伏した。

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