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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第28巻 愚者の斧と見掛け倒しの斧

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完全回収Ⅰ

 水銀。原子番号八十番で、地球の地殻を構成する成分の一つである天然の金属元素。そして、水との比重は十三・六で銀すらも上回る。何より、稀有なのは常温、常圧において唯一、液体の形態をとる金属ということだろう。

 だが、それ以上に水銀を語る上で避けて通れないのは、その毒性だ。日本の義務教育においても四大公害病として語り継がれる、高度経済成長期の負の側面と言っても過言ではない被害をもたらした。

 工場から垂れ流された排水の中にあったメチル水銀を魚が取り込み、濃縮されたそれを人が食べた。その結果として、多くの人が神経系に異常をきたし、中には死んでしまう人も出てしまった。


(もしも、あの水銀がこの街――いや、この王都周辺のありとあらゆる場所にばらまかれていたら、いずれどこかで悲劇をもたらす可能性がある……!)


 この街で、あるいはどこかの港町で、そんな悲劇を引き起こすわけにはいかない。

 ただ倒すだけではいけない。可能な限り、水銀を集めて捉えることが必要になる。そして、それがどれだけ難しいことかを勇輝は理解していた。


(水銀の温度を凝固点まで下げて固体にする方法なんてない。アイリスたちは水を氷にすることはできるけど、恐らくはマイナス数度が限界だ。それにあの斧を構成する水銀以外があるかどうかもわからないし、散らばった水銀が全て集まってるかもわからない。わからないことばかりで、頭が痛くなってきた)


 一カ所に集まった水銀が斧の形になる。さきほどまで襲ってきていたので、再び、攻撃して来るだろうと予想していた勇輝だったが、斧は浮いたまま動かない。

 少しずつ後ろに下がり、路地裏にいるマリーたちへと声を掛けた。


「なぁ、あの動く金属。もしかして、水銀じゃないか?」

「水銀? 液体で人の体が切れるわけないって」

「水の魔法で勢いよく当てれば人間の体を貫通することだってあるって聞いたぞ。水なんかよりもよっぽど重いんだ。ない話ではないだろ?」


 疑念の言葉がマリーの口から漏れるが、勇輝の反論に返って来る言葉がなかった。


「アレが水銀だと仮定すると、色々とマズいことになる。何か、魔法関係の知識で水銀を集める方法とかないか? あそこに集まっている以外にも残っていないようにしたい!」

「そんなのわかんないって。錬金術系の授業をするのは来年からだ。この中でわかるのなんて、アイリスくらいじゃないのか?」


 視界の端にアイリスを捉える勇輝だったが、ちょうどマリーの問いかけに対して無言で首を横に振った。

 流石の飛び級天才少女であっても、知らないことはあるようだ。そんな彼女の口から紡がれたのは、氷の中に閉じ込める準備が整いつつあるということだった。


「多分、あの大きさなら包み込める。後は、それに衝撃を与えずに固定するだけ」

「くっ、ひとまずは目の前に見える奴だけでも何とかするしかないか」


 勇輝は視線を斧へと戻す。すると、斧は少しずつ高度を下げ始めていた。しかも、数秒前まで勇輝を狙っていたはずなのに、その行く先には誰もいない。


「ど、どこに向かってるの?」


 全員の想いを代弁するかのように、桜が疑問の声を上げる。

 そうしている間にも斧は高度をさらに落とし、メインストリートに挟まれた水路へと下りていく。


「まさか、ここから逃げるつもりじゃないだろうな!?」


 それならばガンドを撃ち、怒りの矛先を自分自身へ向けさせてしまおうと勇輝が構える。しかし、そんな勇輝をソフィが呼び止めた。


「待ってください。むしろ、あの動きは好都合です」

「好都合? このまま水路に逃げられたら――――」

「一から水を生成するより、元々あるものを使う方が楽です。それが魔力を含んでいるのならば、なおさら、ね」


 直後、水路から大量の水が間欠泉のように吹き上がる。その中に飲み込まれる斧だったが、見る見るうちに水は氷へと変化していき、あっという間に斧を中へと閉じ込めてしまった。

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