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解放された者Ⅵ

 ただ、斧を何度も破壊すると言っても、見ている人があまりにも多すぎる。ここでわざわざ自分から出て行って破壊しようとするのはかなりの注目を浴びるだろう。

 実際、周囲の人々は斧が浮いていることに驚きはしているものの、襲い掛かって来ていない以上、興味が恐怖に勝っていると言っていい。


「俺、すごい嫌な予感がするんだけど、言っていいか?」

「おう、聞いてやるぜ。なんか良い案でも浮かんだのか?」


 勇輝の問いにマリーが満面の笑みで頷く。

 嫌な予感だと前置きしたにも拘わらず、良い案と言い換えたマリーを肩越しに見て――勇輝は目を逸らした。


「何だよ。早く言えよ。気になるだろ」

「俺、ガンドであいつを吹っ飛ばしてるだろ? つまり、俺を追ってここに来たんじゃないか? ――復讐しに」


 勇輝の言葉に、女性陣全員の視線が勇輝と斧を行ったり来たりし始める。


「えっと、もしかしてだけど、勇輝さん。まさか、今回も?」

「あぁ、命懸けの鬼ごっこの開始かもしれない。参加者は俺だけになるけどな」


 引き攣った笑みを浮かべていると、周囲の人々がどよめいた。

 すぐに勇輝は視線を斧へと向けると、ゆっくりと斧が移動し始めていた。幸か不幸か、その方向には勇輝たちがいる。

 斧自体は小さいというのに、何故か勇輝は巨人が群衆の中から己を見つけ出そうとしているように感じた。


「と、とりあえず、ギルドの中に身を隠した方がいいんじゃないのかな?」

「そうですね。まずは見つからないことを優先した方がいいでしょう。ゆっくりと人混みに紛れて戻れば大丈夫なはずです」


 勇輝は桜とソフィの提案に従い、斧から目を話さずにギルドの建物へと避難する。

 魔物相手には、嫌な記憶しかない為、すぐに逃げる羽目になるのだろうと身体強化を施していた勇輝だったが、意外にも斧には見つからずに入ることができた。

 背中や脇に汗を感じたのは、どう考えても緊張から来るものだろう。勇輝は息を吐き出しながら、入り口近くの壁に背を預ける。


「本当に、変な魔物と会う機会が多いな。まさか、アレ――魔王の件と関係があったりしないよな?」


 周りに誰もいないことを確認して、勇輝は呟く。

 魔王に関連する魔物自体と遭遇したのは、毒の大蛇・バジリスクくらいのものだが、ダンジョンの成り立ちに壮大な何かを感じ取った後のせいで、想像が膨らんでしまった。


「あったとしたら、危険、かも。魔物を中に入れない結界が、作動していないことになる」

「そうか。城壁の上空には、魔物や人が許可なく飛び越えられないように魔法が掛けられてるんだった。――って、ちょっと待てよ。魔王案件じゃなかったとしても、魔物が入り放題なのはヤバくないか?」


 魔王に関係あろうとなかろうと、街の中の安全が保障されていないことになる。それは国の首都としては致命的だ。もしも、そんなことが王都に住む国民にバレれば大変なことになる。


「この短い期間に二度も魔物が王都内に侵入していたとなったら、他国がその方法を使って中に潜り込む可能性もあります」

「二度じゃなくて、三度だな。俺が来た時にはグールが侵入をしただろ? 半年間で、三回……も……」


 そこまで言葉を発して、勇輝はある事実に気が付いてしまった。


「なぁ、グールが魔法学園に侵入したのは、噴水からだったよな?」

「う、うん。そこから出て来たのをマリーとアイリスが見ていたはず……」


 桜がマリーとアイリスに視線を向けると、二人は黙って頷いた。


「水路って、外の堀とか川に繋がってるよな? そうでないと、あの量の水を流す場所がないから」

「そうですね。その点は水精霊だった頃の私が保証します。田畑や森の近くの川だけでなく、地下の見えない所を通って、海まで続いているはずです」


 勇輝は片手で顔を覆うと、そのまま天を見上げた。嫌な想像が現実になってしまったかもしれないと絶望が胸中を侵食していく。

 数秒ほど深呼吸した後、不安そうに見守っている桜たちに勇輝は意を決して、自分の推測を伝えることにした。


「――あの隠し階層のダンジョン、ここと繋がってるんじゃないのか?」

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