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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第5巻 暗黒の淵にて、明星を待つ

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ウンディーネ救出作戦Ⅵ

 魔法学園ダンジョン・第五階層。

 その正体は土塊の人形(ゴーレム)であり、その対処法はゴーレムを構成する核を破壊すること。手順としては周りの土を剥がして核を露出。そこに攻撃を加えるという方法だ。以前にも再生する規格外のゴーレムと戦ったことも有り、ユーキたちは余裕をもってボス部屋の扉を叩くこととなる。

 一抹の不安から、ボス部屋を攻略してから一度ダンジョンの外へ帰還するということを考えていたユーキたちだった。

 しかし、目の前に立ちふさがったゴーレムがその思考を彼方へと吹き飛ばした。


「おい、なんだあいつ。前回の時はあんな奴じゃなかったよな」

「色、材質、大きさ、どれも違う、っぽい」


 アイリスの言う通り、目の前に佇んでいたのは青色の輝きを纏った巨体。その強度たるや土など比べるまでもない。遠目でもわかるその躯体は鉱石でできていた。


「サファイアのゴーレム……!?」


 その硬さは最高峰の堅さを誇るダイヤモンドの足元にまで迫る。加えて、そこに魔力による強度の上昇もあった。普通の方法ではユーキやフェイの武器では傷一つ付けられないだろう。


「魔法耐性も高そうな感じだな。やれるか?」

「相手は待ってくれなさそうだけどねっ!」


 マリーが呟くと同時にゴーレムの瞳にも光が宿り、ゆっくりと歩み始める。それを見たサクラが呪文を唱え、火球を放つ。同時に八つが着弾するが煙が晴れると何事もなかったかのようにゴーレムが歩いていた。


「火球程度じゃダメージはないみたい」

「じゃあ、サクラの得意な魔法で貫くのは?」

「いけ……ないかもしれない」


 サクラの顔には不安の色が広がっていた。岩石の槍も魔力を通すことで多少の強化は可能だが、元は土や石にすぎない。元が硬い金属の鎧を打ち貫けるのも、鎧自体が薄いからということが挙げられる。

 それに対してゴーレムは最低でも核までは厚さ一メートルは貫く必要がある。そこまでの強力な魔法を放とうとすると、かなり魔力と時間を消費するだろう。

 サクラの否定の判断に、すかさずユーキが魔力を指先へと込める。魔力を最大限に込めれば、対魔力防御に適しているミスリルの城壁すら破ることが可能なのだ。たかがサファイア如きに負けるわけがない。そう思って一発をゴーレムへと放つ。

 青紫色に輝いた魔力が彗星の如く残像の尾を引いてゴーレムへと突き進んだ。ゴーレムは先ほどと同じように悠然と歩み、右足を上げた瞬間、その胸部へとガンドが着弾する。そのまま、右足が宙に浮きあがるのを見て、ほっとユーキは息を吐いた。


 ――――ズシイィィィィン!


 一拍遅れて、大地を揺らしながら大音響がユーキたちの鼓膜に届く。


「なっ……!?」


 言葉にできない驚きの声をフェイが漏らす。その視線の先には、倒れ込むかと思われたゴーレムが思いっきり足を振り下ろして、バランスをとり直したところだった。その足の下には蜘蛛の巣状のヒビが入っている。

 尤も、ダメージが無かったわけではない。ゴーレムの胸もわずかに抉れて、形が崩れているのが見えた。


「あと、何発くらい必要だ?」

「よくて五、六発。悪いと十発以上は同じ所へと当てなきゃいけないかな」


 ユーキの苦笑いと共に零れた疑問へ、フェイが冷静に観察して答える。

 しかし、ゴーレムはそれを嘲笑うかのように両手を胸の前でクロスして、いきなり走り始めた。


「おい、あいつも走れんのかよ。最近のゴーレム界隈は走るのがトレンドなのかぁ!?」

「みんな、身体強化で散開! ユーキは追い付かれそうになった人を魔法でカバー!」

「――――っ、任せろ!」


 ゴーレムとの距離が残り十数メートルになった瞬間全員が散り散りになった。前衛だったユーキとフェイはギリギリまでゴーレムを引き付けると、そのままヘッドスライディングをしてくるゴーレムの両手から寸でのところで避けて離脱する。ユーキはガンドで、フェイは剣で左右それぞれの腕辺りに攻撃を放つ。

 フェイの方は甲高い金属音が響いた。苦虫を噛み潰したような顔で土埃の中から飛び出してくると、返ってきた衝撃に手を震わせている。

 逆にユーキの方は、何かが砕けるような音と共に、空中で青い光が乱反射していた。

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