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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第28巻 愚者の斧と見掛け倒しの斧

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水の女神Ⅳ

 水精霊の目が見開かれると同時に、再び斧を持った腕が動き出す。


『いえ、この状態で精霊石に移るのは難しいです。そちらに移る際に根こそぎ魔力を持って行かれかねません』

「だったら、その精霊石が宿った武器にダメージを与えれば、魔力の奪い合いが一瞬だけ止まるはずです。その武器を何とかするので、場所を教えてください!」

『さっきから見えてるでしょう? この斧です! この斧が私の魔力を――』


 ソフィの質問に苦し気に答える水精霊。その腕は痙攣し、今にも誰かに斧で攻撃を仕掛けようとしているように見える。

 時折、水精霊の肌が波打ち、形を失いそうになりながらも、少しずつ腕が振り上げられていく。


「勇輝。あの動きをちょっとだけ止める。アレ、撃てる?」


 アイリスが杖先に水の球を生み出して、勇輝に問いかけた。その目に迷いはなく、宣言通りに水精霊の動きを止めて見せると語っている。

 勇輝はアイリスのその言葉を信じて、指先に魔力を溜めて頷いた。


「水精霊! 腕を思いっきり振り上げて、そうしたら私たちが、その斧を攻撃して魔力の吸収を止める。そうしたら、こっちの精霊石へ移動して!」

『ぐっ……こうなったら、その手に、賭けるしかない、ですね。――行きますよ!』


 水精霊は腹をくくったようで、両手を思い切り天に向けて振り上げた。

 すると、その両手に手錠をかけるような形で水の輪が取り囲む。いや、正確には水精霊の手首にアイリスの操る水の球がめり込んでいた。それから逃れようと水精霊がもがくが、数十センチほど前後するだけで、全く振りほどける気配がしない。


「その程度のブレなら――外さないっ!」


 魔法耐性のあるミスリルの城壁に穴をあける威力のガンド。死の一撃と呼ばれる魔力の弾丸が、勇輝の人差し指から二連続で放たれる。

 一撃目は銀色の斧に。もう一撃は金色の斧に。前者は水のように弾け飛び、後者は刃の部分が円形に抉り取られ、ガラスのように砕け散った。数秒おいて、水精霊の手から斧の柄が零れ落ちる。


「今です!」


 ソフィの声が響くと同時に、水精霊は形を失って、マリーの持つ精霊石へと吸い込まれるようにして消えて行く。

 淡い水色だった精霊石が、わずかにではあるが濃くなった。勇輝の魔眼には、それが今まで以上の光を放っていることを認識している。それは水精霊が無事に精霊石の中へと移動で来たことを表していた。


「上手く、いった?」

「あぁ、多分、大丈夫だ。その内、あっちから声をかけてくるんじゃないか? それよりも、さっきの武器の方だ。水精霊の抵抗もなくなって、魔力の使い放題。何をしてくるかわからないぞ」


 疑念の声を漏らす桜に、勇輝は警告を飛ばす。

 それを受けて桜は杖を泉の方に向けるものの、すぐに困惑した声を漏らした。


「……でも、武器は持つ人がいないと攻撃できないから、そのまま沈んで行ったんじゃない?」

「それも、そうだな……」


 どんなに優れた武器であろうとも、その担い手がいなければ置物と変わりはない。

 泉の水面で弾ける無数の泡を見る。そこには、かすかに斧が放っていただろう光の残滓があるが、泉の奥の方まで弾き飛ばされたせいで姿を見ることはできない。


「――って、俺の採取ナイフが沈んだままじゃん!?」


 思わず膝に手をついて落ち込む勇輝。いくら安物とはいえ、初めて桜と出会った時に彼女が選んでくれた道具だ。こんなことになるならば、泉の中に突っ込むなど浅はかな真似をするのではなかったと後悔する。

 そのまま落ち込んでいると、いつの間にか近くまで来ていたアイリスが優しく腕を叩いた。


「あんまり、気にしないで。また、買えばいい」

「いいか、アイリス。思い出は消えないし、男って言うのは変なところにこだわりを持っちまう生き物なんだ」

「……よく、わからない」


 頭を傾けたアイリスに、勇輝は苦笑いを浮かべるしかできなかった。

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