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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第5巻 暗黒の淵にて、明星を待つ

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ウンディーネ救出作戦Ⅴ

 ミシリッ、と軋む音を立てて骸骨が吹き飛んだ。

 そのまま壁に叩きつけられるとヒビが入っていた背骨が完全に折れて、くの字になったかと思うとその動きを完全に停止する。


「っと、まぁ、こんな感じでいいかな」

「なるほどね。君の場合はその魔法があるから、骸骨相手だろうが対応には困らないか」


 フェイが剣を下段に下ろすと息をついた。周りを見渡すと何体もの骸骨がバラバラになって石畳の上に転がっている。理科室にあるような骸骨が剣を持って襲ってきたことにも驚くが、本物と思えるような作り込みにユーキは気味が悪くなった。頭蓋骨一つとっても、歯並びや眼孔の位置や形が微妙に違っている。まるで本物の死人をモンスターにしたような、という考えに至っても不思議ではないだろう。


「もしそうだったら、成仏していてくれよ」


 刀を納刀して両手を合わせる。修業を積んだ坊さんではないので気休めにもならないかもしれないが、何かせずにはいられなかった。


「いやー。辛かったぜ。前に来た時はもっと少なかったんだけどな。入ってくる人が減ったせいで増えたのか?」

「誰も、いなーい」

「もうみんな転移でここの階層は通らなくなったんじゃないかな。私たちはユーキさんがいるから転移は使えないけど、他の人は固定パーティでやってるだろうから、あまり意味がないと思うの」


 マリーを先頭に後衛組が近付いてくると、ユーキの中に耳に気になるワードが聞こえた。


「え、転移魔法でショートカットできるの?」

「うん。自分が辿り着いたことがある階層までなら入口で水晶に触れると転移できるし、逆に階層を踏破したら、神殿の中にある水晶から入口に戻ることもできるの」

「あ、その話するの忘れてた」


 マリーが頭を掻きむしりながらあっけらかんとした表情で言い放つ。ユーキは思わず膝をつきそうになった。


「(ここまで来た時間を把握しながら、戻ることも考えていた俺の時間を返してくれ……)」


 もっと他のことを考える余裕があったはずなのに、と過ぎたことを言っても仕方がないので、ユーキは体を起こすともう一度周りを見渡した。


「あれ? 骸骨が減ってる?」


 ユーキの言葉に他の者も周りを見渡す。遺跡を模して造られたフィールドのため、寂れて骸骨が転がっている様に違和感はない。だが、確かに戦闘直後とは様子が変わっていた。


「僕とユーキだけで五、六体は処理したはずだ。マリーたちの魔法で吹き飛ばした分も考えると二桁は最低でもいたはずだ」

「いーや、もっといたはずだ。多分――――」

「――――ユーキたちで八体。私たちの魔法で十四体。全部で二十二体」


 アイリスがマリーを遮って骸骨たちの数を告げる。その言葉にもう一度、周りを見渡すと明らかに骸骨の数が半減している。

 ユーキが魔眼を開いて確かめようとすると奇妙な光を捉えた。近づいていき、それを拾い上げると透明度の高い水晶を太陽に翳したような光を放っている。魔眼を閉じてみると途端に光は失われ、真っ黒な石へと変貌した。


「どうしたんだ?」

「いや、さっき骸骨がいたあたりにこんなものが落ちてたからさ」

「……ただの石じゃないか。いや、微かに魔力は感じるけど、特別何かをってものではなさそうだ」

「いや、とりあえず拾っておくよ。後でウンディーネに確認すればいいし」


 そう言ってユーキは空の革袋へと石を入れた。ダンジョンではあるが、得られる素材はほとんどなく本当に戦闘訓練用ダンジョンといった形で得られるものが未だに見つからない。ため息をついて前へ進もうとすると、悩んだような顔をするマリーが目に入った。


「どうしたんだ?」

「いや、別に気のせいだと思うんだけど。ダンジョンが何かおかしいなって」

「どこがおかしいんだ?」

「いや、ダンジョンの階層って基本的に固定なんだよ。ここでいうなら第一と第二が洞窟、第三とここが遺跡って感じでさ」


 その言葉にサクラとアイリスも気付いたよう表情が変化する。


「いや、最初は草原だっただろ?」

「最初はこういうことも有るかなって、思ったんだけど第三とここが同じだったからさ。まぁ、説明が省けるし、道も迷わなくて済むから楽だから黙ってたんだけど」


 その言葉にユーキは嫌な予感がしたが、ここで引くわけにもいかなかった。


「とりあえず、聞いた話だと次がいわゆる強敵部屋なんだな?」

「そう、通称ボス部屋」

「そこまで行ったら一度、戻らないか? 何かダンジョンで起こってたら嫌だし、確認するだけならすぐに済むだろう。場合によってはそこで探索を中止して、休むことも必要だから」


 ユーキが時計を見ると短針が三時を指していた。道が分かっているサクラたちに従っていけば、第五階層には四時前には着くだろう。


「ボスはゴーレムだからユーキのガンドで一撃だって。第六くらいちょっと覗いてこうぜ」

「冒険中に、冒険をする。危険」


 珍しくアイリスがマリーを止める。それに今まで沈黙を貫いていたフェイが口を挟んだ。


「ダンジョンが普段と違う挙動をする時は、良くないことが起こる前触れだと伯爵に教わったことがある。有名なのは階層外への流入、ダンジョン外へのモンスターの大規模な侵攻。或いはダンジョンの消失。他にも可能性としては強力な固体の出現などが挙げられるけど、どれも僕たちのような人間が手に負えるようなことじゃない。ユーキの言葉っていうところが癪に障るが、言っていることは正しい。一度、撤退して様子を見るべきだろう」

「そうだな。急がば回れ。無理に突っ切ってケガしたら笑えないからな」


 フェイの言葉にムッとしながらも、ユーキはマリーたちへと視線を送る。サクラとアイリスが賛成のようなので、マリーも渋々従うといた様子だった。

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