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緊急調査隊募集Ⅲ

 コルンの背を見送る勇輝たちだったが、アイリスはまだ諦めきれないのか、ぼそりと呟いた。


「別に、そのダンジョンに、入っちゃいけないって、言われてない、よね?」

「アイリス。その辺にしておけって。少なくとも、今日はソフィも来て遊ぶ予定なんだからさ」

「じゃあ、明日なら、いい?」


 いつものアイリスならばあり得ない粘り方に勇輝は一瞬呆けてしまう。

 マリーの影響で変な悪戯をすることが多かったアイリスだが、それを除けば今回の引き際の悪さは、ある意味で年相応の物とも言えなくはない。


「うーん。これ『冒険の最中に冒険する』ことになるんじゃないかな?」


 勇輝は冒険者ギルドの入り口に書かれている言葉を思い出す。

 冒険中に身の程を弁えずに危険へと進む者を戒めるための言葉だ。今のアイリスは確かに実力はあるが、少しばかり気が逸っている部分が大きい。少し冷静になる必要がある。


「結論を出すにも、まずはソフィの意見も聞かないといけないだろ? 行けるようになったら連絡があるんだから、それまでは街を散策して楽しもうぜ」


 マリーはアイリスの背を押しながら、入口へと戻って行く。


「勇輝さん。さっきのアイリス、何かおかしくなかった?」

「あぁ、何かいつもよりも必死というか、普段は見せない執着心みたいなものが感じられたというか」

「オーウェンさんに張り合っているってだけじゃないよね。多分、他にも理由があると思うんだけど……」


 勇輝は最初にギルドで人が運ばれてきた時、アイリスが睨むような視線で見ていたことを覚えている。

 怒りや憎しみに近い感情が乗った視線は、恐らくは怪我をさせた犯人に向けてのものだろう。だが、正体の分からない存在にそこまで憎悪を抱くかと問われれば、家族や仲間に被害が出ない限りは、そう強い感情をもつことはないはずだ。


「少し、アイリスの動きには気を付けた方がいいかもな」

「うん。一人で勝手にダンジョンに行ったりしないと良いんだけど……」


 不安になりながらも桜はマリーに押されるアイリスを見ながら歩き出す。


「もしかして、ここに来なかった方が良かったですか?」


 フランは変な空気を察したようで、勇輝たちとマリーたちの間を何度も視線を行ったり来たりさせる。

 客の言葉に興味本位で来てみた結果、雰囲気が悪くなるのは彼女も想定外だったのだろう。そして、当然ながらそれは望んでいたことではない。


「いや、俺も気になっていたから、最新の情報は知れて良かった。あと、俺やマリーがギルドでどんな認識をされているのかもわかったし」


 名誉であると同時に厄介でもあると勇輝は感じた。

 あのように張り出されるということは、不特定多数の者に、その存在を知られてしまうことを意味している。今までは依頼に関わった極少数の者しか、勇輝の存在を認知していなかっただろう。知られた結果、面倒な厄介ごとに巻き込まれる可能性が増えてしまった。

 そんな人を疑う思考が勇輝の頭の中に過ぎる。


(何を警戒してるんだ? 俺は)


 冷静になれ、と心の中で言い聞かせるが、どこか落ち着かない。何か見落としていることでもあるのか、と勇輝は考え直すが、心当たりはなかった。


(――とはいえ、何かに巻き込まれるって警戒するのは悪いことじゃないか。気を付けていても貰い事故はあるし、天災は防げないからな。最低限、被害を減らせるようにしておかないと)


 変な指名依頼やくだらない輩に絡まれることがないことを祈りながら、勇輝はマリーたちを追いかける。

 その最中、勇輝は明日はそのダンジョンに赴くことになるのではないのかという予感があった。何しろアイリスは魔法に関しては素直かつ真面目に取り組む性格だ。もしもオーウェンに対抗意識をもった結果なのだとしたら、そう簡単には止まらないだろう。

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