団欒Ⅳ
本当に二人と合流できるのか不安に思っていると、背後から誰かの肩が勇輝にぶつかった。思わずつんのめる勇輝だったが、今まで鍛えたおかげか、足を踏み出して転倒をこらえる。
「勇輝さん!?」
「あぁっと、すまない。大丈夫だったかい?」
勇輝が振り返ると、金髪の青年が立っていた。線が細く中性的で、女性ならば思わず見とれてしまうだろうというくらいの整った顔に勇輝もまた呆けてしまう。
「む、聞こえているかな? もしかして、今ので頭が揺れて記憶障害でも?」
「いえ、大丈夫です」
「少し探し物をしていてね。よそ見をしていて申し訳なかった」
白い歯をのぞかせた青年は、片手を差し出した。
勇輝はその手を握り返したのだが、その瞬間に青年の表情が歪んだ。
「どうかしましたか?」
「君から少し家族の気配を感じ取ってね。私の兄弟姉妹のいずれかと出会ったことがあるんじゃないかな、と」
「はぁ、どんな方ですか?」
家族の気配などどうやって感じ取るのか疑問に思いつつ、勇輝は手を離しながら問いかける。
「そうだね。こっちに来ているのは少ないはずだから、そうなると……槍や双剣を使う子は? 髪の色は赤で――――」
「……アリスかな?」
青年の言葉に勇輝は一人だけ思い当たる少女がいた。小柄なのに、大鬼を蹴り飛ばす膂力を持っていた。日ノ本国に不法入国して逸れた父を探しているとのことで、短い間ではあるが、一緒に旅をした仲だ。
そうとは言いながらも勇輝は目の前の青年の髪をまじまじと見る。確か、アリスには姉のエイアがいたはずだ。しかし、彼女の髪は銀髪。そして、アリスは赤。血の繋がり的にどうすれば三色も違う色になるのだろうかと。
「あぁ、もしかして髪の色? 私たちは異母兄弟姉妹だから、あんまり似てないんだ」
「おい、勇輝。そっちの兄さんと何かあったのか?」
いつまでも立ち止まったままであることを不審に思ったのか、マリーとアイリスが戻って来る。桜が会話の邪魔にならないように二人へと説明をする。
「今、この方と衝突したみたいで、それで少し話をしてたの」
「ふーん。それで、ただ謝罪をしているって感じじゃなさそうだけど?」
マリーの視線を受けて青年は笑みを浮かべる。
「失礼、名乗るのが遅れた。私の名はメルク。少しばかり探し物をしていてね。それで彼とぶつかってしまったんだが、どうも私のあ――――姉と彼が知り合いだと知ってね」
「え゛っ!? メルクさんの方が年下!?」
アリスの姿はどう見ても小学校高学年にいくかどうか。どんなに頑張っても中学一年が限界の姿をした幼女だ。
あったことがある勇輝と桜は目を見開く。
「あ、しまった。ごめんごめん。アリスは妹だったよ。家族が非常に多いんでね。よく間違えるんだ。あはははは……」
「へぇ、それで何を探してたんだ? もしかしたら、助けてやれるかもしれないし、言ってみなよ」
マリーの提案にメルクは逡巡した後、ある言葉を発した。
「『生きている銀』を探していてね。生死を問わず、それを捕まえる必要があるんだ」
「それは、ゴーレムみたいなもの?」
「あぁ、そうだよ。放っておいても害はないと思うんだけど、場所によっては魔物化してしまうこともあるからね。念の為、回収しておかないとマズイんだ」
メルクは大きくため息をつく。せっかくの休日に探し物をしなければいけないのは、確かに気が滅入るだろう。
既に冒険者ギルドや魔術師ギルドに依頼を出したとのことだが、手掛かりは今のところ掴めていないのだとか。
「じゃあ、もし見つけたら、届ければいい?」
「あぁ、そうしてくれたら助かるよ。報酬も弾もう。液体のように姿形を変えるから、銀色で動くこと以外は参考にはならない。あまり無理はしないでくれ」
別れの挨拶を告げメルクは去って行ってしまった。
その背中を見送った勇輝たちは顔を見合わせる。
「見つけたら助けるくらいの気持ちで行くか。じゃあ、とりあえず――服とか見に行く?」
「今のうちに、昼ごはんの予約……」
「もう昼ごはんか。まぁ、アイリスらしいな」
マリーやアイリスが歩き始めたので、勇輝もその背中を桜と共に追い始める。
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