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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第27巻 撫子に染まりゆく精霊の休息日

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逃走デートⅫ

 ガンドの残弾は四発。それらをただ放つだけでは多勢に無勢。


「『――――燃え上がり、爆ぜよ。汝、何者も寄せ付けぬ一条の閃光なり』」


 故に爆風で周囲を可能な限り巻き込んで吹き飛ばすことを勇輝は選択した。

 魔眼に映った光の軌跡は、既に勇輝へと向けられ、実際に飛び散った光も勇輝へと加速を始めている。


「(魔力装填を最大――――とりあえず、正面のやつだけでも吹き飛ばして逃げ道を確保しないと!)」


 降り注ぐ黒い弾丸の嵐を紅蓮の砲撃で迎え撃つ。

 勇輝の指先から放たれた火球が闇夜を切り裂いて空中を突き進んでいく。そして、その光景を見た城壁にいた魔法使いたちから、黒い弾丸から勇輝を守るべく詠唱を始める者や無詠唱で魔法を放つ者が現れる。

 空に紅蓮の花が咲き、遅れていくつもの魔法が炸裂。だが、黒い弾丸を全て撃ち落とすことはできず、勇輝は舌打ちした。


「(もう一度詠唱している余裕はない。かといって、アレを全部躱せるなんて無理! 俺の周りにある結界も限界がある。アレ一発の威力がわからない以上、喰らうのは極力避けたいっ!)」


 勇輝は仕方ないとばかりに心刀へ呼びかける。


「(おい、今からお前を投げるから、転移させてくれ!)」

『いいのか? あんな大勢に見られている前で、そんなことを見せれば、後で面倒なことになるぞ。お前、そういうの嫌いだろ?』

「(背に腹は代えられない! 今の俺にアレを刀一本で防ぎきるのは無理だ!)」

『ま、そうだろうな』


 心刀の最後の忠告を承諾と見なした勇輝は、桜たちがいる方向とは逆に投げつける。


「(下の道に人は少ないけど、それでも巻き込む可能性が高い。ここの屋根は頑丈っぽいから、住人には悪いけど、こっちに逃げさせてもらう)」


 黒い弾丸が着弾するまで数秒もない。確実に逃げられる範囲まで心刀が移動するのが先か、それとも勇輝に弾丸が当たるのが先か。


『ほらよ。これで助かったか?』

「(あぁ、ありがとな――――って!?)」


 切り替わった視界に安堵したのも束の間、勇輝は屋根に背中から落ちそうになる。辛うじて、空中で身を翻し、屋根に触れると同時に転がるようにして立ち上がった。


「(今のタイミング、わざとか?)」

『いーや、偶然だ。あれより遅かったら、ああなってたぞ?』


 心刀の言葉に勇輝は己が数秒前までいた屋根を見る。そこには土煙が立ち上り、向こう側にいるはずの桜たちの姿が見えないほどだった。


「勇輝さん、大丈夫!?」

「あぁ、何とか無事だよ。今、そっちに行く」


 桜の心配する声が飛んできたので、勇輝は大声で返事をする。

 すると、次に返って来たのは桜の声ではなく、土煙を突き破って現れた黒い弾丸だった。


「(追尾してきた!?)」


 勇輝をダンジョン外まで追って来たドッペルゲンガーだったが、まさか、自らの体を弾丸にした状態で追って来るとまでは思っていなかった。勇輝はとっさに心刀を抜き放ち、片手で一刀両断にする。

 左右へと分断されていった塊だが、勇輝が肩越しに振り向くと、後方十メートルくらいのところで急停止した。


「まだ、追って来るのか?」


 血の気が引く勇輝だったが、黒い球体の片方がどこかから飛んできた夥しい数の魔法によって爆散する。さらにもう片方は建物の間から飛び出た何者かが振るった剣に突き刺されて消えてしまった。


「おっと、こいつは危なかったな」


 騎士姿に白いマスク。あまりにも怪しい出で立ちに身構えそうになった勇輝だったが、聞き覚えのある声に目を丸くした。


「もしかして、ギルド長――――? じゃあ、さっきの魔法はトニーさん?」


 声からギルド長だと気付いた勇輝は、目の前で起こったことが理解できずに目を丸くする。


「いやぁ、相変わらずいろいろと巻き込まれ体質だな。ま、これで相討ち覚悟の一撃も潰したし、後はこっちで処理をしておく。来年のダンジョンの扱いがどうなるか恐ろしいが、それは国の偉い人に任せよう」

「あ、はい。そうです……ね」


 勇輝はギルド長の話についていけず、呆然とするしかない。そんな中、どこからか大声が聞こえてくる。


「おい! あのバカはどこにいった!? まさかあの年で迷子じゃないだろうな!?」


 声のする方に目を向けると、煙玉特有の白煙が立ち上っており、混乱の声が聞こえてきていた。よくよく耳を澄ますと響いている怒号は、聖女護衛の時に配属された隊長の声に聞こえる。

 勇輝は周囲を見渡すと城壁側にも煙玉が展開されており、ほとんど視界が塞がれていた。


「(もしかして、これもギルド長が?)」


 今のギルド長は白マスクで装備が普段のように身を隠すタイプの物とはほど遠い。正体を隠すためとはいえ、この煙玉の展開は早業過ぎる。状況把握、大胆な行動と精密な動作――――あらゆる点をとっても暗殺者ギルドの長の名は伊達ではないことを理解させられた。

 困惑から尊敬の眼差しに変わり始めた勇輝の前で、ギルド長は騎士たちの鎧が擦れる音が聞こえる方向に向かって叫ぶ。


「たぁいちょおぉぅ! 今すぐ、そっち行くんで、待ってくださぁぁい!」

「――――えっ?」


 どこか聞き覚えのある声と言い方に、勇輝の動きが止まる。そんな勇輝にギルド長は人差し指を口の前に立てた。


「じゃあな。この後も、上手くやれよ?」


 そう告げると、ギルド長は音もなく跳躍して建物の下へと姿を消した。

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