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逃走デートⅪ

 目の前に現れた騎士の目的は勇輝だ。相手をしてやる義理はないが、引導を渡してやるべきだと勇輝は感じていた。


「有罪以外の言葉も話せるようになったんだ。何で俺を狙うのかぐらい言ってみろよ」


 勇輝に向き直った騎士は剣を構える。はっきりと見えない顔だが、くぐもった声が口の辺りから紡がれる。


「――――女と、一緒、妬ましい、だから、有罪ッ!」

「本当にただの嫉妬かよ!?」


 自分の予想が当たっていたことに、勇輝は思わず叫び返す。一時期、魔法学園の男子生徒から嫉妬の視線を受けていたことはあったが、まさか魔物に嫉妬される日が来るとは思わなかった。


「お前たち、人間の、望み」

「俺は人類の敵ってか? そんなのは魔王だけで充分だ。勝手に対象を俺だけに絞るな。恋人や嫁がいて幸せに暮らしている奴もいっぱいいるんだ。そう思ってた人も、いつかはそうなる可能性があるんだよ」


 互いに正眼の構えをで向き合った勇輝と騎士だが、勇輝の言葉を受けて騎士がわずかに全身を震わせる。


「あとな、一部分だけ切り取って勝手に代弁するな! その気持ちは本人だけのものだ! 偽物が借り物の心で偉そうにしてるなよ?」

「有罪ッ!」


 騎士は剣を振りかぶると一気に勇輝へと距離を詰めて来る。対して勇輝は、心刀の切っ先を下げた。


「勇輝さん!?」


 自ら急所である頭部を曝け出す行為に桜が驚きの声を上げる。振り下ろされた漆黒の一閃は、そのまま行けば頭部から股下までを一刀両断するコースを辿っていた。

 それを勇輝は一歩だけ斜めに足を踏み出して、半身になることで避ける。そして、渾身の力で振るわれた一撃が屋根へと激突する瞬間、無防備な騎士の首へと心刀を斬り上げた。


「――――ガッ!?」


 前のめりになっていた騎士の上半身が宙に浮く。


「斬る攻撃が通らないのも考え物だよな。本来通り抜けていく衝撃を逃がすことができないんだから」


 首を仰け反らせ、天を仰ぐ騎士。

 一方、勇輝は心刀を振り切っている。だが、次の攻撃に備え、既に心刀を翻していた。


「その首、もらった――――!」


 騎士の喉から左側面の首に走った赤い線。それを勇輝は魔眼で見逃さなかった。それをなぞる様にして心刀を振るう。

 重心の浮いた騎士に躱す術はなく、心刀の刃が寸分違わずに一撃目と同じ位置に食い込んだ。

 人間ならば鮮血が噴き出ているところだが、相手は魔物で、しかもドッペルゲンガー。既に一度、倒した時にどうなるかを勇輝は知っていた。


「これで終わりだ!」


 振り切ると同時に距離取ると、勇輝はガンドを二連続で撃ち放った。最初からガンドで戦っても良かったが、そこは騎士の姿をとった敵に正々堂々と勝負をしたかったという気持ちがあったというのもある。

 既に決着がついた。勇輝は胸を撫でおろそうとしたが、未だに光の粒子になって霧散しないことに違和感を覚えた。


「(何だ? いったい何が起きて――――!?)」


 次の瞬間、騎士の体が一つの黒い光の球体となって空中に浮きあがった。その光景を見た勇輝の頭の片隅で、何かが警鐘を鳴らしていた。


「(おい、斬った奴のことはわかるんだろ!?)」

『はぁ!? 何でもかんでもわかるわけないだろ!? 俺だって、あんなの知らないわ!』


 心刀に呼びかけてみたものの、返って来たのは逆切れに近い否定の言葉。ただ、勇輝はその光を放っておくわけにもいかず、ガンドで撃ち落とそうと人差し指を向ける。


「なっ!?」


 ガンドを放とうと構えると、黒い光がさらに空高く打ち上がる。そして、城の塔と同じくらいの高さにまで上ったと同時に花火のように弾け飛んだ。

 そのまま輝いて消えるなら良かった。だが、弾けた火花の一つ一つに怪しい光が宿った時、勇輝の心臓が大きく跳ねた。


「(まさか、この光それぞれが魔法――――!?)」


 汎用初級魔法の火球や石礫と同じタイプの射出魔法。そう勇輝は判断した。


「(マズイ! これ全部が俺に向かってくる!?)」


 数を数えるのも億劫なほどの光の破片に、勇輝は頬を引き攣らせる。

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