表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第27巻 撫子に染まりゆく精霊の休息日

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2142/2383

逃走デートⅡ

 振り返ってみると、桜が小走りで勇輝の方に向かってくるところだった。

 火鼠の皮衣と呼ばれる反物から作られた緋色のスカートが翻り、その下からはタイツに包まれた細い足が顔を覗かせる。


「ごめんなさい、寒い中待たせちゃって」

「いや、俺のことは気にしなくていいよ。それよりも、そのスカートをまた着てくれたんだな」

「うん。本当は毎日でも着たいんだけど、特別な時に着るのもいいかなって思って」


 桜はスカートを摘まみ、軽く持ち上げる。右へ左へと何かを確かめるように体を回転させた。


「でも、それ着てると暖かいんだよな? この時期は寒いから、俺としては服自体も似合ってるから毎日でもいいかも」

「本当? だったら、ちょっとこれに合う服を少し買い足そうかな」

「じゃあ、まずは服屋に行こうか。俺も、あんまり持ち合わせの服は多い方じゃないからな」


 そう告げた勇輝は桜へと手を差し出す。

 一瞬、桜は視線を落として逡巡した後、ゆっくりと勇輝の手を握り返した。


「う、うん。じゃあ、今日は一日、いっぱい楽しもうね」

「あぁ、絶対に忘れられない思い出になるよ。きっとな」


 寒い空気など二人の間には無かったかのように、互いの手からの温もりを感じながら歩き出す。

 後ろの方で門番のガーゴイルがからかいの声を投げかけてきているが、二人は気にせずに人混みの中へと飛びこんで行った。


「でも勇輝さんに持ちかけられた依頼が解決してよかった。本当のこと言うと、心配してたんだよ。もっと長い時間がかかるんじゃないかって」

「あー、うん。その可能性があったことは否定しないよ。いろいろと大変だったし」


 勇輝は昨日までのことを振り返ると苦笑いしか出てこない。何せ暗殺者ギルドのメンバーと共に、王都名物の期間限定ダンジョンを攻略していたのだ。きっと桜に言っても、何かを誤魔化しているのだろうと思われるに違いない。


「それは、あんまり話せないこと?」

「うん。とりあえず、ちゃんと調査が終わるまでは公には言えないことかな」


 もし指輪が呪われたアイテムであると確定したのならば、今後は聖夜のダンジョンの入場制限や情報公開などが行われる可能性があるとハリーたちから聞いている。


「だけど大きな問題は解決したから、今日は安心してデートできるってこと」

「で、ででで、デートって、そうだけど――――」


 勇輝がはっきりと口にしたためか、桜の顔がみるみる赤くなっていく。

 思えば、勇輝と桜は夫婦同然の関係にありながら、二人きりで買い物をするような行為を今までにしたことがなかった。ダンジョンや旅の中で自然と育まれていった互いへの想いだが、そこには常に二人以外の誰かがいた。


「これからは、こういう時間も増やしていかないと、な」

「そ、そうだね……」


 顔を小さく縦に振った桜は、気恥ずかしさが抜けないのか勇輝と視線を合わそうとしない。ただ握った手の力は少し強くなり、勇輝の鼓動を強く弾ませる。


「(――――っていうか、俺もこういう経験が少ないから、舞い上がると同時に焦ってるんだけどな!)」


 過去に女性と二人で出かけたことがないわけではないが、それをデートと称するには、勇輝自身、どうかと思う部分があった。その為、実質的な経験値はほぼゼロ。

 こうして桜と手を握って歩いているだけでも、結構、緊張しているのが正直なところだ。


「(昔の俺なら、大人の余裕を――――って、格好つけるんだろうけど、そうじゃない。俺の目的は、桜を楽しませることで、俺も楽しむこと!)」


 この数日間、寂しい思いをさせた桜への贖罪でもあり、これからはそんな思いをさせないという誓いでもある。

 暗殺者ギルドの人たちから貰った情報もある。その中で勇輝は今日をどう過ごすべきかを必死に考え抜いて、ここに立っていた。

【読者の皆様へのお願い】

・この作品が少しでも面白いと思った。

・続きが気になる!

・気に入った

 以上のような感想をもっていただけたら、

 後書きの下側にある〔☆☆☆☆☆〕を押して、評価をしていただけると作者が喜びます。

 また、ブックマークの登録をしていただけると、次回からは既読部分に自動的に栞が挿入されて読み進めやすくなります。

 今後とも、本作品をよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ