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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第5巻 暗黒の淵にて、明星を待つ

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静寂に包まれてⅦ

「俺の聞いた話だと、ランクの高い薬草や希少な金属に宝石。後は魔物の素材などが手に入ったと聞いている。後は、いくつか謎の石碑が見つかったって言っていたな」

「石碑?」

「あぁ、もっとも当時は戦闘職ばかり集めてたせいで、学者肌の人間があまり多くなかったということもあってか、解読することなく先に進んじまったらしい。メモをいくつかはとったらしいが、それも解読されたのかどうかは聞いたことがないな」


 顎に手を当てて、昔の様子を思い出しながら伯爵は天井を見つめる。揺らすことを辞めてしまったマリーは、襟首を掴んだまま離し時を見失ってしまい、何度かアイリスへと視線を送る。残念なことにアイリスは伯爵の話を真剣に聞いているため、マリーへの反応は一切ない。


「俺の友人なんか、魔王の残した碑文だとか、ダンジョンを生み出した偉大な文明の在処だ、なんて言って大騒ぎしていたなぁ。――――そういえば、いつまで掴んでるんだ。まだまだ、親離れができるのは先かな?」


 懐かしむ伯爵の襟をやっと離したマリーは、イラつきを押さえながら一歩距離を取る。


「父さん。フェイのことなんだけど……」

「みなまで言うな。最近、色々なところに首を突っ込んでいるのは知っている。そのおかげでいくつか上手くいっていることも有る。フェイ、休暇をやるから一緒に行動していろ。解決したら戻ってこい」

「い、良いのですか?」

「良いも何も元々、お前の役割はマリーの護衛だったからな。最近はそれなりに実践の場数を踏んできたし、いい機会だろう」


 驚いているフェイに伯爵は明るく笑うと手で追い払うようなしぐさを見せる。


「ほら、やることがあるんだろ? 自分たちの問題は自分で解決するのが一番だ。それが親離れの第一歩だしな」


 まるでこちらのことを見透かしているかのように伯爵は話を切り上げた。今までの勘からか、或いはロジャーのようにどこかからか情報を仕入れているのか。想像だけが広がるばかりで確信には至らない。

 部屋を出たユーキたちは廊下を歩きながら、ダンジョンに向けての準備について話を始めた。


「戦闘方法は、この前、洞窟に潜った時みたいに、俺とフェイが前衛。サクラ、マリー、アイリスが後衛って形でいいかな」

「この前、進んだところまでだったらフェイ一人でも前衛が持ちこたえられたから大丈夫だと思うぜ。前衛が増える分、ちょっと狙いにくいけどな」

「あ、あの……」


 話が進む中、フランがおずおずと声を上げる。しかし、その声は皆の耳に届くことなく、掻き消される。


「あまり足を引っ張るなよ」

「あれー? オーウェンとの戦闘で膝を折ってたの誰だったっけ?」

「お、お前こそ、マリーの救出に手間取ってたじゃないか」

「あ、あのー……」

「「何!?」」


 ユーキとフェイが言い争いを始めかけていた時にフランが申し訳なさそうに間に入る。その視線は左右に揺れて、動揺していた。


「あ、あの、私の名前がさっきから挙がってないのはどうしてなんでしょうか?」

「いや、魔法使って倒れた奴を連れて行ったら危ないし」

「はうっ!?」

「その途中でこの前みたいになられたら助けられないし」

「はわっ!?」


 矢継ぎ早に繰り出される反論に返す言葉がないのか、フランの体がどんどん縮んでいくようだ。涙目になりかけているフランにアイリスが一つ提案をする。


「じゃあ、私たちが一定期間戻らなかったら助けを求めてもらう、とかはできそう。いわゆる保険っていうの」

「な、なるほど。それなら、お役に立てそうです」

「フランさんはアイテムのこととか詳しいから、ダンジョンに行くときにオススメな物を知ってそうだよね」

「もちろんです。商品と情報は早さと質が命ですから。ダンジョン専門の冒険者グッズについても知識は持っています」


 サクラの言葉に気を良くしたのか、フランは待機組になることを受け入れてくれそうな雰囲気になった。マリーたちも当然、フランの居残りには賛成だったので、ほっと胸を撫で下ろす。


「フランはウンディーネ救出本部として、外で待機。事前準備のサポートと作戦実行中の文献漁りがお仕事だな」

「そうなるとフランが一番疲れることになるけどいいのか?」

「そういう細かいところは気にしない、気にしない」


 こうして、マリーの一声によりウンディーネ救出本部が設立されることとなった。

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