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推測Ⅴ

 内臓が持ち上がる感覚に耐えて数秒。勇輝はやっと足が地面に着いている感触に安堵した。

 大空からの急降下や高所からの落下など日ノ本国では何度か経験したが、それでも水晶玉の転移には慣れないと再確認する。


「おう、どうした。そんな疲れ切った顔して」

「この感覚が苦手なんだ。放っておいてくれ」


 後から現れたギルド長が勇輝の顔を覗き込むが、勇輝はそれを片手で追い払う。

 虫のように扱われたギルド長であったが、特に気分を害した様子はない。そうか、と一言呟いて、ハリーとトニーのいる場所に戻って行く。

 戻って来たのはダンジョンの出入口から近くにある突き当り。幸いにもそこには人はおらず、勇輝たちが転移で戻って来たことは誰も目撃していないようだった。


「じゃあ、とりあえず、冒険者ギルドまでは一緒に行って、そこで解散だ。ハリー、例のブツは俺がそのまま教会まで持って行く。そっちのアイテムで何か冒険者ギルドの連中が騒ぎ始めたら、すぐに連絡をくれ」

「わかりました。サインはいつものようにやればいいですね?」

「あぁ、頼むぞ」


 ギルド長はハリーの胸を軽く拳で叩くと、先に出入口へと歩いて行ってしまう。

 その背中を見ながら、勇輝はハリーたちの下へと近づいていく。呼吸も落ち着き、何とか冷静に言葉を交わせるくらいにはなった。


「早速、冒険者ギルドに行きますか?」

「あぁ、俺たちの仲間にわかるようにゆっくりとな。万が一、持っているアイテムにも怪しいところが見つかったら、それも教会送りにする必要がある。冒険者ギルドを信用していないわけじゃないが、それがどっかに紛れ込まないか、見張る要員が必要だからな」

「それは、今までも?」

「もちろんだ。何せ、この時期は毎年、ギルド員が大量動員される大仕事だからな。ちゃんと、俺たち以外にも気を張ってる奴がギルド内にも、ダンジョンの出入口にも待機してくれてるはずだ」


 ハリーは親指で出入口の方を親指で示す。さっさと仕事を終わらせよう、と。

 片手に持った槍を肩に担ぎ、踵を返すハリーの後ろを数歩遅れて勇輝はついていく。


「いや、本当に上手くいくとは思わなかったっすね。しかも、臨時の収入まで貰えるなんて。魔眼使い様様っすよ」

「いえいえ、お二人がいなければ呆気なく倒されていました。ボスだけじゃなく、ミミックやスノーマンも」


 指を組んで神にでも祈るようなポーズをとるトニーに、勇輝は苦笑いしながら首を振る。無詠唱で魔法を連発できる才能といい、槍の扱いも上手いだけでなくゴーレムを作って操る能力といい、二人のおかげで助けられた場面は何度もあった。恐らく、このダンジョンに限って言えば、桜やマリー、アイリスたちと一緒に挑むよりも遥かに難易度は下がっているとだろう。


「そりゃあ、経験の差ってだけだな。少なくとも、決定打は俺たちじゃないことだけは確かだ。胸を張りな。このギルドにいる奴に、それを認めさせるだけの力量があることを」


 ハリーが肩越しに振り返ってニヤリと笑う。

 勇輝はどこか気恥ずかしさと嬉しさが混じった気持ちから、すぐに返事ができなかった。ただ軽く頭を下げるだけに留まった。

 大勢いる広間を抜けて地上へと戻る階段を上ると、夕暮れから紺色へと移り行くグラデーションの空が目に入る。


「なんとか、間に合ったな」


 勇輝は白い息を吐きながら、ダンジョンを無事に出れたことを喜ぶ。冒険者ギルドに行き、手続きを終えたら勇輝はお役御免だ。約束通り、桜と精霊の休息日の前日をゆっくり過ごせることになる。

 だから、明日を迎える前にやっておかなければいけないことが、もう一つあった。最終階層に向かう前に渡された小瓶。それを投げ渡した女性は、確かこう言っていたはずだ。


 ――――明日は何かプレゼントの用意できてるの?


 小瓶の中に入れられた紙を早く見なければならない。そんな衝動が勇輝の中に渦巻いていた。

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