表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2136/2380

推測Ⅱ

 無言で佇むギルド長の横で、勇輝は徐々に乖離した感覚を取り戻しつつあった。


『まったく、いつも無茶するな』

「(悪かったな。余裕が無くて。だけど、お前にも原因はあるからな。さっきの転移が使えるって知ってれば、練習して上手く使いこなせたはずなのに)」


 心刀の批難に勇輝が言い返す。攻撃する手段が一つ増えるだけで戦い方は大きく変わる。それを出し惜しんでいたことに、文句の一つも言ってやりたくなるのは仕方がないことだろう。


『はっ、基礎基本ができていない状態で、人が本来しない動きをしたいだなんて強欲にも程がある。威待流の技をまともにできるようになってから言えってんだ』

「(――――まぁ、それは、一理あるな)」


 事実、空中で放った一撃は充分な威力ではなかった。同じ不完全な体勢であったとしても、心刀の言う基礎基本ができていたのならば、やりようは幾らでもあったはずだ。


「(でもな。お前、俺に能力について、嘘を教えてただろ)」

『……何のことだ?』

「(とぼけても無駄だぞ。お前、前に日ノ本国で呪いに変化したお婆さんと戦った時に、鞘の中へ転移できるようになった、って言ってたけど。西園寺家の洞窟で一回、鞘の中に戻ったことあっただろうが!)」

『何だ、覚えてたのか。いや、思い出したって感じの方が近そうだな。まぁ、どっちだって一緒か。理由はさっき言った通りだ。歪んだ戦い方を覚えられたら、今まで叩き込んだ技術が壊れかねない。矯正するこっちの身にもなってもらいたいね』


 申し訳なさの欠片も感じさせない心刀に、勇輝は若干、イラつきを覚えるが言っていることは間違ってはいない。たかが数回しか使えない転移を頼る戦い方など、いつか命を落とすきっかけになるだろう。


「(一応、知ったからには答えてもらうぞ。どれくらいで使えるようになって、最大何回できる?)」

『お前がいる場所によってだな。最大で二回か三回かくらいだろう。俺が貯えられる魔力もそんな多くない』

「(まだ、色々と隠してそうだな。お前が魔力を貯蔵できるなんて初耳だぞ)」

『初めて言ったからな』


 心刀は悪びれもせずに、堂々と言い放つ。

 勇輝は一度、心刀とじっくり話し合う必要があると強く感じた。いつも夢の中で死ぬほど鍛えてくれているのは感謝しているが、それとこれとは別問題だ。お互いに意思がある以上、変なわだかまりは残しておきたくはない。


『ま、それは良いとして、さっき斬り捨てたドッペルゲンガー。なかなか、厄介な性質を持ってたみたいだな』

「(おい、話をすり替えるなよ。後でいろいろと話してもらうからな。――――で、そんなのわかるのか?)」

『一応、戦った相手を再現する力がある。直接、斬りつけちまえば、何となくだが、わかるってもんだ』

「(で、何が厄介だったんだ? あの堅さか?)」


 勇輝は完全に感覚が戻るまでの間の暇つぶしにと、心刀と思念を交わし続ける。

 今後、先程のドッペルゲンガーに遭遇した時のために、敵の情報を知っておくに越したことはない。「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」である。

 尤も、勇輝の知るドッペルゲンガーは三種類いる。人間の胎児を素体に作られたもの、今回の異様な強さを誇るもの、そして未だに遭遇したことがない通常のものだ。恐らく、今回のものと今後遭遇する可能性は低いとは思うが、理性は不安を拭うために必要だと叫んでいる。


『怨霊yなった婆さんを覚えてるな? 日ノ本国でやり合っただろ?』

「(自分の存在を呪いそのものにして、その姿を他の村人の意識で固定してたんだっけ?)」

『あぁ、そうだ。さっきのドッペルゲンガーも誰かしらの意識が流れ込んでいたか、吸収されていたか。いずれにしても、似たような状態だった。込められていた感情も怨霊に似てるな。恨みとかに似ているが――――そうだな、嫉妬と表現する方が近いかもしれない』


 嫉妬。

 その言葉を聞いて、勇輝の脳裏に一つの下らない考えが浮かび上がった。

【読者の皆様へのお願い】

・この作品が少しでも面白いと思った。

・続きが気になる!

・気に入った

 以上のような感想をもっていただけたら、

 後書きの下側にある〔☆☆☆☆☆〕を押して、評価をしていただけると作者が喜びます。

 また、ブックマークの登録をしていただけると、次回からは既読部分に自動的に栞が挿入されて読み進めやすくなります。

 今後とも、本作品をよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ