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ホワイトアウトⅠ

 ハリーが復活してからの五日間は、地獄であった。

 ひたすら大部屋の中へと突入して中を探り、体が冷えたらダンジョン内を周回して宝箱のチェック。後はそれの繰り返し。

 ギルドでチェックするアイテムも増え、高価な物も見つかるようになるが、勇輝たちの顔は暗くなっていくばかりだった。

 そして、迎えた六日目。三人は最低限の挨拶を交わして、お互いに声をかけることもなく、ダンジョンの中へと潜って行く。


「――――大部屋の赤い光。何なんでしょうね」

「さあな。大きさからして、階層移動の階段だと思いたいが、この数日間、何を調べても全くわからねえ」


 大部屋の前まで来て、やっと勇輝が口を開く。ここに来るまでも宝箱が五つほど見つかったが、それすらも無言の作業と化していたので、出て来た声は思っていた以上に掠れていた。


「ガンドで吹き飛ばしますか?」

「やめておけ、それで取り返しのつかないことになったら目も当てられない。あくまでこのダンジョンが用意した仕掛けを見つけないといけないんだ」


 ハリーは縄をトニーへ括りつけて、万が一の時に彼を紐で回収できるようにしていた。そんな様子をトニーは見下ろしながら、首を傾げる。


「でも兄貴。仕掛けと言っても、ホワイトアウトが時々起こるだけで、レバーやスイッチは勿論、トラップの類も見つからないんすよ? 一体、何を見つけろって話っすよ」

「魔物関連のギミックもあり得るだろ。やれる範囲で虱潰しにしていくしかない」


 暗殺ギルドの集めた資料によれば、ホワイトアウトが起こるのは数時間に一回程度。その中でも、決まって起こるのは深夜零時と正午の二回。

 現在は、その時間を避けて調査をしているが、このままなにもわからない状態が続くならば、ホワイトアウト中の調査も考えられる。


「もう今日も長時間やり続けて、へとへとっすよ。ここらへんが切り上げ時じゃないっすか?」

「――――お前、こいつの前で同じこともう一度言えるか?」

「す、すんません」


 ハリーが鋭い視線をトニーへと向ける。彼の指差す方向には、大部屋の入り口で魔眼を開き続ける勇輝がいた。


「お前と違って、好きな女がいてもデートもせずに、こうやってダンジョンに潜り続けてんだ。長期任務で森や山の中に潜んで、ずっと警戒することもある俺らが、音を上げてるんじゃねえよ。――――まぁ、酒で酔いつぶれた俺が偉そうに言えることじゃないけどな」

「そうっすよねー。あはは――――って、いったぁ!?」


 ハリーは持っていた紐を思いっきり引っ張り、トニーの腹へと食い込ませる。口を開けて天井を見上げたトニーは、締め付けているハリーの腕をタップして、降参の意を示した。

 数秒後に解放されたトニーは、膝に手を着きながら深呼吸を繰り返す。そのままの姿勢で、何度が太腿を擦ると、勇輝の隣に立った。


「まぁ、上手くいかなかったら明日と明後日くらいは彼女とゆっくり過ごしな。俺たちがその間に何とか原因くらいは探しておくって。雪の積もった部屋に何かがあるってことはわかったんだからな」

「多分、そんなことをしたら、俺は心の底から楽しく過ごせない。それは桜にも失礼だし、自分の言ったことを曲げるようで許せない。何としてでも解決して、それぞれが楽しく精霊の休息日を迎えられるようにしましょうよ」

「ほんっと、逃げてもいい場面で逃げないのは、それはそれで損するぜ。前みたく上手くいくなんて事自体が、奇跡だって言うのにさ」


 トニーが二の腕を擦りながら勇輝の前へ出る。その声は軽口を叩く普段の彼のようで、まったく違う人物が話しているように勇輝には聞こえた。


「前みたく……?」

「言葉の綾っす。気にしすぎると警戒が疎かになるから気を付けるんすよ」


 そう告げたトニーは、スノーマンを一体ずつ撃破しながら、目的の場所まで進み出す。

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