スノーマンⅤ
より一層、この問題を早く解決しなければいけないと思った勇輝は、魔眼で部屋の中を覗き見る。スノーマンの数は、部屋が広いせいか多くない。離れたところにポツポツと点在している。
雪は多めに積もっている場所もあって多少の起伏は存在するが、ある程度は見渡すことができる。
そして、部屋の入口寄りの辺りに、またしても赤い正方形の光が輝いている。ただし、その大きさは今までの比ではなく、一辺が三メートル四方ほどあることがわかった。
「あの、ここにも赤い光が見えるんですけど、それも大きな」
「何かの罠か、それとも仕掛けか?」
勇輝は場所を示すために、わずかな魔力でガンドを放つ。すると赤い光の近くの雪が吹き飛び、石畳が露になった。
「うーん、結構遠いっすね。ホワイトアウトが起きたら、何とか戻って来れるかどうか」
「床だけを調べるだけなら、そこまで時間はかからない。行くだけ行って見るか?」
「今日は止めた方が良いっす。やるなら、せめて命綱がないと……」
「それもそうだな。悪い、お前の言葉を疑っているわけではないが、まずは自分たちの命が最優先だ。今日は他を当たり、ここは明日以降にしたい。構わないな?」
ハリーの問いに勇輝は頷く。
「えぇ、むしろ、俺の言葉を信じていただけていることに感謝します。では、他の所に――――」
別の場所へ向かおうとした矢先、目の前の部屋の中から悲鳴が響き渡った。互いに視線を交わすと、どうすると言葉が出るよりも先に、トニーが部屋の中へと飛び込んで行った。
「馬鹿野郎が――――こうなったら、速攻で片付けるぞ。足に自信は?」
「任せてください!」
答えるや否や勇輝もトニーの後を追って、中へと駆ける。身体強化に魔力を多めに回し、トニーを見失わないように追い縋った。
「――――マジか!?」
目の前を走るトニーを見た勇輝は驚きの言葉を口にする。
先程のスノーマンを駆逐した際と同じ二丁拳銃スタイルで左右正面、あらゆる方向のスノーマンの頭を火球で吹き飛ばしていく。だが、いくらまばらにいるとはいえ、奥に進めば進む程、スノーマンの数は多くなる。
撃ち漏らしが発生するのを、勇輝がガンドでフォロー。氷の礫が完全に形成される前に撃破していくと、赤い正方形を越えた先――――スノーマンの残骸の影に二人の冒険者が倒れていた。
「大丈夫か!?」
「こいつが足をやられた。だけど、ここを早く抜けないとやべぇ! ここのスノーマンは何でか知らないけど、中に人がいても、すぐに出現しやがるんだ!」
青年が真っ赤に染まった雪の中から、槍を手繰り寄せて呻いている。もう一人の青年も盾で彼を庇いながら、ポーションを必死でかけているが、なかなか血が止まらない。
駆け付けたトニーに焦りながらも盾持ちが状況を説明する。それを聞いて、勇輝は通って来た道を振り返った。
――――ズボッ! ズボボッ!
音を立てて、地面からスノーマンが生え始める。即座にガンドで迎撃しながらも、トニーへ勇輝は叫んだ。
「後方にスノーマン多数! 岩の槍で壁を!」
「任せろ!」
右手を振り返りざまに薙ぐと、土の中級汎用魔法である岩の槍がハリーが追い付くと共に乱立する。遅れて、岩の槍の向こうで氷が砕け散る音が響いた。
「ひゅーっ! こいつぁヤバいな。ここにいたのが俺たちで良かった」
「そんなこと言ってる場合じゃないっすよ。こんな出現、今までなかったじゃないっすか。おたくら、何か知ってることは? 些細なことで良い。この部屋に入る前に何か無かったっすか?」
トニーが自分のポーションを何も見ずに蓋を開けて、負傷者にかける。その動作と同時に、彼は盾持ちに問いかけた。
「わ、わからねえ。ただ、ホワイトアウトが止んだし、こんだけスノーマンの密度が少なければ行けるだろ、って入ったら、こんなことに――――」
「まさか、ホワイトアウト後はスノーマンの出現が普段と変化する……!?」
特殊条件下で挙動が変わる。そのことを失念していた勇輝はもちろん、暗殺者ギルドの二人も表情を歪めた。
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